裏「ケルベロスの肖像」ともいうべき作品。
輝天炎上
著者:海堂 尊
発行:KADOKAWA/角川書店
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「ケルベロスの肖像」は東城大学病院をめぐる攻防を病院側、田口先生側から描いたもの。
今回の「輝天炎上」は反対側、田口先生には知りえなかった水面下での動きを追いながら、AIセンター開設の当日までを描いていきます。
読む順番は「ケルベロスの肖像」を先のほうが種明かし感たっぷりで楽しめると思いますが、できるなら「螺鈿迷宮」を読み返しておくとなお一層よし、といったところでしょうか。
これは「螺鈿迷宮」に始まる物語の終わりであり、「ブラックペアン1988」「ブレイズメス1990」「スリジエセンター1991」という一連の流れの決着篇。
…まあ、どれも読みなおしたりはしませんでしたけれども。
「ケルベロスの肖像」と「輝天炎上」、どうせならほんとに表・裏で出せばよかったのにと思いますが、出版社が違うんですねぇ。
「ケルベロスの肖像」は「チームバチスタの栄光」の流れで、「輝天炎上」は「螺鈿迷宮」の流れ。
タイトルだけでもそうですねぇ。ちょっと時代物のタイトルみたい。
ざっくざっくと読み進め、あっという間に読み終えてしまいました。
ミステリとして読むなら後半部分が肝なのでしょうけれど、本として読むなら前半の天馬くんたちの研究のほうがおもしろい…というか、そちらのほうに力は入っているのだろうなぁ、と。
新作が出るたびに、ああ、読みたいなぁと思うわりに、読み終えると、ああ、また読んじゃったなぁと思うのは、ちょっと癪だからかもしれません。
自分の言いたいことを世間に広く伝えるにはどうしたらよいか。
お堅い本を書いたっていくらも読まれやしない。それならば…。
という策ににまんまとノせられてしまった気分を毎回味わうことになるから。
もちろん、広く知られ、意識されるべき問題であるには違いないし、結局は読んじゃうんだから、好きには違いないのでしょうけれど、半分は惰性だなと思います。
…ああ、そうか。権ちゃんがちょっとしか出ないから、テンションが上がらないのか。
だから、書くのにも時間がかかっちゃったのね。
なーんだ。そうかー、と、自分の権ちゃん好きを再確認した1冊でした。
「か」のところに「海堂」の多いこと…。
でもきっと、次作も読んでしまうのよね!