文豪怪談傑作選。
川端康成集の面白さにつられ、シリーズを読み進めている。
泉鏡花集、そして、今度が森鴎外集である。
文豪・森鴎外の作品にまともに触れる最初が怪談集であるというのは、ほめられた話ではないだろう。まして、それが読んだ最後となるかもしれないとなれば、なおさらか。

鼠坂/文豪怪談傑作選 森鴎外集
著者:森 鴎外
編者:東 雅夫
発行:筑摩書房
Amazonで書評を読む
最初はあまりぱっとしないと思ったが、読み終わってみると、感じが出ていると思える表紙。
解説を含めて400頁ほどに、翻訳物、創作物が十数篇集められている。
短歌も25首。
あからさまな怪談というよりは、翻訳のものは奇談、創作物であれば、実際の生活の中に入り込んでくる、理屈だけで説明のつかない境の領域に対する不安や疑いを描いたものが多い。
単純ながら、創作物に現れる「先生」たちに著者のイメージを重ねて読んだ。
迷信は信じない、けれども、迷信が人々に与える影響は無視できないことを感じている。作品の中で、その影響は「先生」たち自身にもうっすらと、あるいははっきりと及んでいる。
たとえば、「魔睡」で取り上げられる催眠術のじわじわと侵食してくるような不安と、妻に催眠術を施したかもしれない医師への嫉妬にも似た不愉快さ。
翻訳物のほうが、はででわかりやすく読みやすい。
オペラの脚本のような感じの「負けたる人」から、悪魔と思しき存在が出てくる「刺絡」まで。
「正体」は巻頭におかれるだけあって、ぐいっぐいっと糸で手繰られるよう。文語体なので雰囲気も増し、最初から「ああ、文豪…。」と思わされてしまった。
編者の思う壺かもしれない。
「破落戸の昇天」は賭博が原因で死んだ乱暴者が、死後、少しだけ時間をもらって、地上の妻と子のもとを訪れるという話。死んでも生来のかっとなりやすい性質はのこり、わが娘の手をたたいてしまい、ろくに話せもせず、地獄へ戻ることになるが、その出来事を娘は、たたかれたのにまるでなでられたようだったと、母に話す。母は何かを思い出したように、わかる、と答えるのである。
なんとなく、映画や舞台になっている「回転木馬」を思い出した。
読み始め、翻訳物かと思っていたら、創作だったのが「影」という作品。
無理心中した後の男女の影、幽霊というか霊魂というような存在が、ふわふわと会話を交わす短い戯曲。
生まれ変わってみようかしら、という軽さが妙に可笑しい。
創作には時代物も1篇あって、家康などが出てくると、何となく不思議な気分になった。
鴎外と家康。
想像したこともなかった取り合わせだった。
さて、次はシリーズの残り1巻は吉屋信子集。
少女小説のイメージが強いが、またびっくりできそうで今から楽しみ。

生霊/文豪怪談傑作選 吉屋信子集
著者:吉屋 信子
編者:東 雅夫
発行:筑摩書房
Amazonで書評を読む
著者:森 鴎外(化けそうな気がして使いたくないけれど、本当の字はこちら 鷗外)
編者:東 雅夫
発行所:株式会社筑摩書房
川端康成集の面白さにつられ、シリーズを読み進めている。
泉鏡花集、そして、今度が森鴎外集である。
文豪・森鴎外の作品にまともに触れる最初が怪談集であるというのは、ほめられた話ではないだろう。まして、それが読んだ最後となるかもしれないとなれば、なおさらか。

鼠坂/文豪怪談傑作選 森鴎外集
著者:森 鴎外
編者:東 雅夫
発行:筑摩書房
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最初はあまりぱっとしないと思ったが、読み終わってみると、感じが出ていると思える表紙。
解説を含めて400頁ほどに、翻訳物、創作物が十数篇集められている。
短歌も25首。
あからさまな怪談というよりは、翻訳のものは奇談、創作物であれば、実際の生活の中に入り込んでくる、理屈だけで説明のつかない境の領域に対する不安や疑いを描いたものが多い。
単純ながら、創作物に現れる「先生」たちに著者のイメージを重ねて読んだ。
迷信は信じない、けれども、迷信が人々に与える影響は無視できないことを感じている。作品の中で、その影響は「先生」たち自身にもうっすらと、あるいははっきりと及んでいる。
たとえば、「魔睡」で取り上げられる催眠術のじわじわと侵食してくるような不安と、妻に催眠術を施したかもしれない医師への嫉妬にも似た不愉快さ。
翻訳物のほうが、はででわかりやすく読みやすい。
オペラの脚本のような感じの「負けたる人」から、悪魔と思しき存在が出てくる「刺絡」まで。
「正体」は巻頭におかれるだけあって、ぐいっぐいっと糸で手繰られるよう。文語体なので雰囲気も増し、最初から「ああ、文豪…。」と思わされてしまった。
編者の思う壺かもしれない。
「破落戸の昇天」は賭博が原因で死んだ乱暴者が、死後、少しだけ時間をもらって、地上の妻と子のもとを訪れるという話。死んでも生来のかっとなりやすい性質はのこり、わが娘の手をたたいてしまい、ろくに話せもせず、地獄へ戻ることになるが、その出来事を娘は、たたかれたのにまるでなでられたようだったと、母に話す。母は何かを思い出したように、わかる、と答えるのである。
なんとなく、映画や舞台になっている「回転木馬」を思い出した。
読み始め、翻訳物かと思っていたら、創作だったのが「影」という作品。
無理心中した後の男女の影、幽霊というか霊魂というような存在が、ふわふわと会話を交わす短い戯曲。
生まれ変わってみようかしら、という軽さが妙に可笑しい。
創作には時代物も1篇あって、家康などが出てくると、何となく不思議な気分になった。
鴎外と家康。
想像したこともなかった取り合わせだった。
さて、次はシリーズの残り1巻は吉屋信子集。
少女小説のイメージが強いが、またびっくりできそうで今から楽しみ。

生霊/文豪怪談傑作選 吉屋信子集
著者:吉屋 信子
編者:東 雅夫
発行:筑摩書房
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著者:森 鴎外(化けそうな気がして使いたくないけれど、本当の字はこちら 鷗外)
編者:東 雅夫
発行所:株式会社筑摩書房
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