「そろそろ結婚してもいいころだ」
いきなりである。しかも主人公のコリーは13歳。
インドってそうなのか。
家なき鳥
著者:グロリア・ウィーラン
訳者:代田亜香子
発行:白水社
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年齢にぎょっとするのは読んでいる私だけで、その社会に身を置くコリー自身は驚いていない。
家族から離れるさびしさ、見知らぬ人たちとの生活への不安などは感じていても、結婚すること自体には抵抗はなく、女の子らしい夢もみている。
まだ顔も見たこともないけれど、花婿は花嫁である自分を待っていてくれて、その家族があたたかく迎え入れてくれるという夢。
コリーは、今までの思い出を縫いこめたキルトとともに、いよいよ嫁ぐことになった。
タイトルからして「家なき鳥」である。
女は三界に家なし、などという言葉さえ連想させるが、タイトルはインドの有名な詩人タゴールの作品からとられたものだとか。
渡りの鳥もやがては安らぎの場所にたどり着く。
やがては、である。
それまでは、やはり「三界に家なし」の展開が待っていた。
その事実のあらかたを当たり前として飲み込んでいるコリーの視点で素朴に語られてしまうと、彼女のおおらかさ、つらい時でも自分より立場の弱いもののことを思いやれる自然な優しさのほうに感じ入ってしまうけれど、これがいつ書かれた作品なのかを確認したくなるような状況がちりばめられている。
うーむ。厳しいな、インド。
厳しいと、そして、物語に登場する他の女性たちを思うとなおさら、コリーのとった行動のひとつひとつが、とても豊かなものに思える。
たとえば、心をこめた針の仕事の美しいこと。
銀のイヤリングよりも、義父の詩集を守ることも。
彼女は、義母との辛く貧しい生活から逃れるすべを失うとしても、文字を教えてくれた義父の思い出を大切にすることと書物のもたらす喜びを選ぶのだ。
やがて、コリーの捨てなかったものが彼女に幸運を運ぶ。
コリーは17歳になったところだ。
この先、彼女はいくつのキルトを縫い上げるだろう。
それが嬉しい思い出で埋め尽くされたものになればいいと、明るい物語の終わりに満足していながら、もっともっとと願ってしまった。
たぶん、コリーはそんなふうに思わないだろうけれど。
参加しています。地味に…。
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