…ブラックな1冊。
静かな町に大きな屋敷。
そこへ1人の男がやって来る。
たくさんの紹介状を携えたその痩躯長身の男は料理人。
屋敷の料理人として雇われるためにやってきた。
不気味な雰囲気を漂わせる男。
だが、彼が作る料理は間違いなく一級品。
美味なるだけでなく、健康への気配りも怠りない。
不健康だった屋敷の住人たちは次第に健康を取り戻していく。
周囲の人々、猫すらも虜にしていくその男の手管は、あくまでも自然。
だが、読んでいると、自然であればあるほど不自然さ、不気味さが迫ってくる。
この男は何者なのか。
何が目的なのか。
超級の料理人であり、同時に超級の美食家である彼。
状況は彼の思うがままに進んでいく。
その果てにあるものは…。
緊張しながら最後まで読んだ。
男のひたひたと迫るような怖さに、自然と体温が下がっていくような気さえした。
支配するということを思う。
支配されるということを思う。
幸せということも。
実話だったら怖いと思いながら読んだ。
極端ではあるけれど、この心の動きはありうると思う。
表紙もなかなか不気味。
白地に痩せたコック帽を頭に乗せた男の立ち姿。
表情のない黒い目。
密かにお薦めの1冊。
いえ、別に密かじゃなくてもいいんですけど。
今は、復刻、新装丁版が出ています。
料理人
著者:ハリー・グレッシング
訳者:一ノ瀬 直二
発行:早川書房
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いつか読むような気がしつつ、いつも横目で睨んでいる本です。
>密かにお薦めの1冊だ。
そっか、きしさんのお薦め・・・。
こうして頭の中のリストが、増えていくのですねぇ。
ワタクシのオススメっていうと、本のアヤシさが増すような…?営業妨害って言われたらどうしましょ。