ゆっくりと世界が沈む水辺で

きしの字間漫遊記。読んでも読んでも、まだ読みたい。

貫井 徳郎 【慟哭】

2006-05-10 | 東京創元社
 
私は推理小説を、推理するための小説として読むことに向いていないと、つくづく思い知った1作。

【慟哭】clickでAmazonへ。
 慟哭

 著者:貫井 徳郎
 発行:東京創元社
 Amazonで書評を読む


連続する幼女誘拐事件。
捜査する警察側と、犯人と思しき人物の両方から描写される。

捜査側は、若手エリート課長を軸に描かれる。
内部での軋轢、家庭での不和。

他方では、犯罪に至る過程が描かれる。
新興宗教の内部、少しずつ壊れていく精神。

硬質な文体と重い題材がもたらす閉塞感。
息苦しいような気持ちで読み進めていった。

かなり重い読後感だった。
私はさほど想像力豊かな方ではないが、痛みを感じる思いで読み、最後でむむむむむ、と唸っていた。

これでデビュー作か。
この後はどんな路線で書くのか。
こういう重さが続くようなら、読み続けるのはツライな。
旅行先に持ってくるにはちょっと重すぎたかも。
でも、普通の時に読んだらもっと重いな。
とか、そんなたあいもないことを思っていた。

ちょうどその時は、旅行中で、一緒だった先生に、コレを渡した。
当時の帯には、確か、「驚愕の結末」だったか、「衝撃の結末」だったか、そういう言葉があったと思う。

読み終えた先生は一言。
「犯人の正体、出だしでわかったよ。」

…この言葉にこそ驚愕。
私は、著者がそれを明かすつもりで語り始めてからでなければ、わからなかった。

ツワモノの推理小説読みの先生には、赤子の手をひねるも同然だったらしい。
根拠を聞いてなるほど。
読んでいるようで、読んでないものだとガックリ。

以来、というかそれ以前もだが、推理小説を推理するために読むことはなくなった。
論理的な思考とはどうやら無縁らしい。
種明かしをワクワクしながら読むお気楽な者に徹することにした。

そういうことなので、もし、ここに推理小説が出てきても、謎解きの巧拙などにはとても言及できそうもない。




書評ブログポータルへ。
【ほんぶろ】~本ブログのリンク集
にほんブログ村 本ブログへ


 
 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« P.G.ウッドハウス選集Ⅱ 【エ... | トップ | 角川映画復活第2弾 蒼き狼~... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ああ・・・ (りなっこ)
2006-05-12 22:41:53
一年に一・二度程度の、苦~い本読みになった一冊として、印象深いです。 

兎に角・・・、色々な意味で気持ち悪かったです。 確か。

帯の推薦文が好きな作家によるものだったので、人間不信になりそうでしたが、きっと好きな人も多いのでしょうね・・・。
返信する
確かに (きし)
2006-05-13 01:00:15
りなっこさんがそうおっしゃるのもわかります。とても。

私にとっても「この作品、好き」という類の作品ではないですね。結構、再読するタチの私ですが、一度も開いたこと、ありません。そういえば。
返信する

コメントを投稿

東京創元社」カテゴリの最新記事