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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

家具屋にて

2018-05-04 18:02:50 | 憧れのお店屋さん
 店先に並べられた様々なデザインの椅子に惹かれて、家具屋に入ってみることにした。

 テーブルや箪笥、食器棚などなど、様々なサイズの家具はどれも職人の手作りで、一度自宅に迎え入れれば一生どころか孫の代まで十分に使えそうな風格に満ちている。また、天井からいくつも吊り下げられているランプも実用的なものからクラシカルな装飾品まで揃っている。そして最も目を惹くのは、同一コンセプトの家具で構成されたモデルスペースで、丸いカーペットが敷かれた一角に引き出し付きの机と椅子、小さめの箪笥、丸椅子付きドレッサー、クローゼットが趣味良く並べられている。まさに女の子にとっては夢の部屋だろうが、残念ながら衣装箪笥を開けてもナルニアには繋がっていなかった。
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四十冊目・『揺るぎない古の誘拐』

2018-05-04 17:38:54 | サスペンスはお好きですか?
たかあきは『揺るぎない古の誘拐』事件を解説してください。

 僕が十四歳になったあの日、いきなり本当の両親だと名乗る男女が現れた。産まれてすぐに産院から連れ去られたのを、今までずっと探していたのだという。僕を連れ去ったのは今まで育ててくれた母さんだと言われた僕は、母さんのやったことを警察沙汰にしない条件に両親の元に戻ることになった。
 それからすく僕は、何故母さんが産まれたばかりの僕を連れて、両親を名乗る男女の元から逃げなければならなかったかを嫌でも知ることになった。
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画材屋にて

2018-05-03 19:02:58 | 憧れのお店屋さん
 画材屋という存在は、どうにも心を浮き立たせる要素が多い気がする。

 色とりどりの絵の具やインク、様々な形状の筆、昔ながらの羽箒。何も描かれていないスケッチブックやクロッキー帳、イーゼルに架かった書き換えの絵。どれをとっても足を止めるのは十分すぎるディスプレイだ。

 さらに店内に入るとポーズ人形や石膏像が置かれた中、様々なポストカードが回転スタンドを飾り、棚には限定品らしい特別あつらえの色鉛筆や画材セットの入ったカバンが並んでいる。試し書きのできるスペースにあったクロッキー帳には、常連さんと思しき達者なタッチのカットが描き込まれていた。中でも個人的に目が離せなかったのはガラスペンで、どうしても諦められなかった青い軸のガラスペンを深海色のインク瓶とともに購入する。

 なお、一部で評判らしい「どんな絵でも入れて飾れば名画に見える不思議な額縁」は、とても手が出せる値段ではなかった。
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三十九冊目・『甘き裏切りの正義』

2018-05-03 18:57:45 | サスペンスはお好きですか?
たかあきは『甘き裏切りの正義』事件を解説してください。

 姉と結婚の約束をしておきながら上司の紹介を断り切れなかった男は、妊娠が判明したばかりの姉に浮気だと言いがかりをつけてさんざん責め立ててた挙句に流産させ、上司の娘と結婚した。だから私は自殺した姉の代わりに男に近づき、不幸な結婚生活を送っていた男を慰め、関係を持った辺りで男の奥さんにすべてを明かしてから街を離れた。
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時計屋にて

2018-05-02 19:59:50 | 憧れのお店屋さん
 街の高台を繋ぐ陸橋のたもとにある時計屋は、巨大な絡繰り時計と古風な回転ドアが目印だ。

 人形付き置時計、古風なベル型目覚まし時計、時間ごとにメロディーの流れる壁掛け時計、そして腕時計に懐中時計などなど、所狭しと並んだ時計は何故か一つとして同じ時間を指していない。もちろん購入時にはきちんとした時間に合わせてくれるのだが、一体どうして最初から合わせていないのかと尋ねると、この時間は時計自身の時間なんだよという良く解らない答えが返ってきた。更に詳しく聞いてみると、時計が刻んでいる時間は、その時計が完成して動き出した時間であり、時計にとっては自分の過ごしてきた歳月そのものなのだそうだ。

「お客さんが買う時計は自分自身の時間を刻むのを止めて、お客さんの為の時間を刻むようになるんだ。ずっと大事にしてほしいね」
 眼鏡をかけた小太りの店長は、そう言って微笑んだ。
 
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三十八冊目・『古なる密室の悲哀』

2018-05-02 18:47:45 | サスペンスはお好きですか?
たかあきは『古なる密室の悲哀』事件を解説してください。

 彼女は物心ついた頃から、その穴倉のような空間で暮らしていた。頭上近くから僅かに差し込んでくる光と周囲に生えた苔、そして何処から流れて来て何処に流れ去るのかも判らぬ水の流れ、さらにそこに住む生き物が糧となって彼女を生かしてきたのだ。広い空も大地も、自分以外の人間も、外の世界を一切知らずに育った彼女は、やがて偶然付近を通りかかった村人に発見され、人間の世界に保護され、そこから地獄が始まった。
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靴屋にて

2018-05-01 21:05:02 | 憧れのお店屋さん
 真の洒落物には言うもでもないことだが、どんなに衣装をこらしても靴が決まっていなければ台無しだ。
 しかし、この街には仕立て屋だけでなく腕のいい靴職人の店もある。

 店内に並ぶ一つ一つ手作りされた様々なサイズの靴も見事だが、本気で時間とお金をかけるつもりがあるなら、熟練の技術を持つ親方が足型から作るフルオーダーも依頼できるそうだ。無論、相応の値段はするのだが、日々を街歩きで費やす職業の人間にとって、歩きやすい靴がどれほど重要なものであるかは言うまでもあるまい。

 いずれは自分も靴を仕立てられる身分になりたいものだと思いながら、店を後にした。


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三十七冊目・『孤独なる札束の殺戮』

2018-05-01 21:02:42 | サスペンスはお好きですか?
たかあきは『孤独なる札束の殺戮』事件を解説してください。

 老人は莫大な財産を有していたが、引き換えに自分以外の誰一人として信じることのできない孤独の只中にあった。彼が文字通り死体の山を築きながら蓄えてきた財貨は、それをはぎ取った相手から染み出した血肉と腐臭にまみれていて、それ故に老人は生きながらにして地獄で暮らさねばならなかったのだ。
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