どうでもいいような理由で死のうと決心して、公園でフリーフォールの練習をしていたバスケ少年の連続シュート回数で死に方を決めようとしたのに全く入る気配がない。頭に来たので少年からボールを奪ってシュートを決めたら尊敬のまなざしと共に指導を乞われ、仕方なく教えているうちに本来の目的を忘れた気がするけどまあいいか。
子供の頃に轢き逃げされ、捕まった犯人の家庭が崩壊したトラウマからどうしても免許を取れず、結局移動手段は公共の電車やバスが主となった僕も、社会人になると必要に迫られてタクシーを使う事が増えた。そんなある日、貴方が私の運転するタクシーに乗るのをずっと待っていましたと笑顔で振り向いたのは、あの日の轢き逃げ犯人だった。
ご主人は僕と散歩する時によく大きな駅伝で走りたいと言っていた。でも、今は選手に選ばれる程の実力が無いから地道なトレーニングを重ねるのだと。やがて大学を卒業するまでマラソン選手としての芽が出なかったご主人は、大学生最最後の春休みに僕を連れて、誰にも気付かれないまま降りしきる桜吹雪の中を駆け抜け、駅伝のコースを完走した。