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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

「屋敷」「苺」「役に立たない枝」ジャンル「ホラー」より・立ち枯れの家

2015-02-11 19:11:38 | 三題噺
 ブルーベリーの実は、前の年に育まれた新しい枝に生える花芽からしか実らない。

「アナタには才能がないから」
「時間を無駄にしたわ」
「本当に、何をやっても駄目な子ね」 

 そして、母親が実に念入りに『枝の剪定』を行った彼女もまた花や実を付けることなく、自分が産まれた屋敷で母親を道連れに一生を終えることになった。
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「通信遮断」より・妹のナイショ話

2015-02-11 00:01:01 | だからオレは途方に暮れる
 うちには小さな家庭菜園があって、そこでは爺さんがちまちまとトマトやキュウリなどの野菜を育てている。
 そんなある休日の朝、収穫したばかりの野菜をビニール袋に突っ込んだ爺さんが、あいつの家にコレを持って行けとオレに渡してきた。
「勉強を見て貰って、おやつも出してくれたんだろう。一応の礼はしないとな」
 言われてみれば確かにそうなので、オレは黙って袋を受け取ってあいつの家に向かう。
 インターホンで声をかけると、対応してくれたのはあいつの妹だった。
『あ、ごめんなさい、今、おじいちゃんもお兄ちゃんもいないのよ』
「遊びに来たんじゃない、うちのじーちゃんからの届けものだ」
 ビニール袋に入った野菜を示すと、あいつの妹は『わあ!新鮮なお野菜』と喜んでドアを開け、ついでにオレを室内に引っ張り込んだ。抵抗する間もなくソファに座らされたオレは、お茶の用意を始めるあいつの妹を呆然と見詰める羽目に陥る。
 成る程、この問答無用のマイペースぶりは確かにあいつの妹だ。などと妙な感心をしていると、すぐに茶と茶菓子を持って現れたあいつの妹は、実にさりげなくオレの正面の椅子に座ってオレに菓子を勧めてきた。
「コレは自信作なの、良かったら食べて」
 言われるままに食った菓子は確かに旨かったので、ごく普通に『旨い』と口に出すと更に喜ぶあいつの妹。
「良かった!おじいちゃんもお兄ちゃんも何も言ってくれないんだもの」
「そう言えば、こんな朝っぱらからドコ行ってるんだ二人とも」
「あ、ちょっと病院に」
「ケガでもしたのか?」
「ううん、実はお兄ちゃん、小さい頃に大きな病気で手術したことがあって、今は元気なんだけど一応定期的に検診を受けているの」
「あいつが?」
 大きな病気とやらも手術という言葉も、普段から無駄に元気で明るいあいつのイメージからは全く想像出来ずオレはちょっと驚く。が、そう言えばこの前の体育で水泳があったとき、あいつは水着にも着替えず見学していたなと思い出した。
「ところでこの話、内緒にしてね。お兄ちゃんの友達には知っておいて欲しいから話したけど、たぶんお兄ちゃんが嫌がるから」
「……ああ」

 考えてみれば、あいつのことをオレは殆ど何も知らない。今まではそれで不自由はなかったし多分コレからも別に不自由はあるまい、ないはずだ。
 あいつの妹から『自信作のケーキ』を貰って家に帰る途中の道で、オレはそんなことを考えていた。
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