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カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

春の創作怪談・色付く布地

2021-05-03 17:25:43 | 名探偵の解答

 自分で図案を描いたはいいが、あまりの難しさに挫折して刺繍枠にセットしたままだった刺繍が何故か日ごとに進んでいる。ただ、最近の私は殆ど外に出ない生活を送っているので、その刺繍が生きている人間の仕業とは思えなかった。それでも気を取り直してよく観察してみると配色は微妙だが針目は丁寧に揃っている。間違いなく熟練者の手蹟だと判断して実家に電話で心当たりを尋ねると、恐らくは若くして亡くなった色覚異常持ちだが刺繍が趣味だった大叔父だろうと言われた。それなら完成が楽しみだ。
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名探偵の解答その63・崩した足場と崩れる足場

2021-05-03 12:35:10 | 名探偵の解答
稀代の名探偵であるたかあきに、謎の紳士から『動かぬ空白』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に残酷のようです。

 若い頃に解決した、私にとっては探偵としての名声を確立した事件について謎の紳士から再依頼が入った。引退して久しい身として身軽さと懐かしさから調査を始めたところ、自害した犯人が最後の最後まで明かさなかった空白の時間に関しての新事実が発覚して、もしそれが本当なら推理が根底から覆ると判った。
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名探偵の解答その62・飛べない翼

2021-05-02 22:22:19 | 名探偵の解答
稀代の名探偵であるたかあきに、父親から『濡れたる殺戮』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に残酷のようです。

 祖母の葬儀が済んだ日の晩、離婚した母についた私が本家に近付くのを嫌がっていた父に呼ばれて信じ難い依頼を受けた。祖母、つまり父の実母が幼い頃に実娘を溺死させた件について調べて欲しいと言うのだ。そして、あの女が本当に父の妹を殺したのなら、父はようやくあの女の呪縛から解放されるのだと。
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名探偵の解答その61・クラリネット壊しちゃった

2021-05-01 22:42:33 | 名探偵の解答
女性に大人気の探偵であるたかあきに、有名な役者から『壊れた楽器』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に肩透かしのようです。

 贔屓にしていた舞台役者から依頼された内容は、盗まれたクラリネットを探して欲しいというものだった。それ自体は古い安物の上に最たる特徴は音が出ない事だというので、故買商に持って行っても金にならないと廃棄される前に何とか見つけ出した。そのクラリネットは彼が父親から譲り受け、父の死と共に壊れて以来、大事な形見の品となっているのだそうだ。




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名探偵の解答その60・林檎殺人事件(ただし未遂)

2021-04-30 21:49:32 | 名探偵の解答
有名な素人探偵であるたかあきに、友人から『歪みし愛憎』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に非凡のようです。

 結婚したばかりで甘い新婚生活を満喫している筈の幼馴染から、どうも妻の様子がおかしいと調査依頼を受けた矢先、幼馴染の妻に刺された。幸い軽傷で済んだが当然警察沙汰になり、その過程で判明した幼馴染と妻と俺との間に発生していた誤解と思い込みを含んだ痴情のもつれに関して頭痛しか感じない。
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名探偵の解答その59・逃げるが勝ちもまた真理

2021-04-30 00:05:29 | 名探偵の解答
事務所を開設したばかりの新米探偵であるたかあきに、叔母から『棘の多い虐殺』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に平凡のようです。

 事件の基本はご近所からという良く分からない理屈で叔母から受けた依頼は所謂ママ友間に発生した少しばかり質の悪いトラブルで、その悪質さから被害者は裁判沙汰も辞さない意思を示したが、最終的には不本意ながらトラブルの元凶となった相手ではなく被害者側のご家庭が引っ越すことになってしまい、相手が悪いと逃げるのも一つの方法なのだと思い知った。
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名探偵の解答その58・恋は砂糖菓子のように

2021-04-28 22:48:09 | 名探偵の解答
女性に大人気の探偵であるたかあきに、先生から『甘き強奪』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に悲恋のようです。

 高校生の教え子を連れて駆け落ちした教師の捜索を家族から依頼された。無理に連れ戻す必要は無いが離婚届や遺産放棄を含む各種書類の署名捺印の回収を行い拒んだら民事と刑事で裁判という案件だったが、割とあっさり見付けた二人は愛があればやって行けると断言したので何とかなるだろう、多分。
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名探偵の解答その57・王様は幻惑されたい

2021-04-27 21:14:39 | 名探偵の解答
男性に大人気の探偵であるたかあきに、王様から『幻惑の楽器』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に平凡のようです。

 城の奥庭から夜な夜な聞こえる楽の音の正体を解き明かせ、あの楽の音を奏でるものなら例え妖であろうと妙なる美女に違いないと国王に言われた時、こいつは王子の頃から全く変わっていないなと妙に安心しつつ、奴にとっては面白くも何ともない単なる自然現象だった音の発生理由を報告すると、お前は昔から実につまらん奴だと絡まれた。
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名探偵の解答その56・それは古典的ギャグですね

2021-04-26 22:20:37 | 名探偵の解答
街ではよく知られた探偵であるたかあきに、祖母から『可愛い詐欺師』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に笑い話のようです。

 祖母が孫である僕の従妹とお店屋さんごっこをしていた。まず従妹が祖母から五十円でお菓子を買い、すぐに、やっぱり大きい方が良いからと五十円のお菓子を返して百円のお菓子を持って行こうとした。腑に落ちない表情の祖母に、さっき渡した五十円と五十円のお菓子で百円分払ったからいいよねと従妹は笑ったが、一体どこで壺算なんか覚えて来たんだこいつは。
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名探偵の解答その55・隣は何をする人ぞ

2021-04-25 20:41:54 | 名探偵の解答
女性に大人気の探偵であるたかあきに、いとこから『音の出ない暗夜』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に笑い話のようです。

 結婚して新居に移った従妹が、引っ越し当初から無暗に騒々しかった隣家が、ここは暫く静かで明かりも点いていない、一家で夜逃げでもしたのだろうか何だか不気味だと言い出した。更に義弟にも不安を打ち明けられ、だから近所付き合いは必要なんだと思いつつ調べたら案の定、単に挨拶なしで長期旅行に行っただけだった。
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