不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Ripulitura della Torre Pendente

2007-08-28 07:09:08 | アート・文化

1173年8月9日に着工されたときにはもちろん垂直で
実際はもっと高い鐘楼となるはずだったピサの斜塔。
建設途中で既に傾斜が認められ
結局高さ55メートルの現在の形での建設終了。
しかしその後も傾斜は続き、
地下水汲み上げなどにより状況は悪化。
それを受けて1964年に
イタリア政府が崩壊回避のための行動に移り
世界の技術者や企業に対して支援を依頼。
1990年には安全上の問題で一般公開を休止して
地盤の強化も含め様々な対策が練られた結果
10年の作業を終えて2001年には傾斜是正に成功し
とりあえず現在は崩壊の危機から解放されています。
錘を載せたり
地盤の強固化を図るための薬剤注入なども提案されましたが
最終的には2本のワイヤーで支えながら
2年の歳月をかけて少しずつ
北側の土(42立方メートル)を掘り出して
地盤の均衡を図ることで問題を解決しています。
これにより1817年の時点で計測された
「最良の状態」に戻すことに成功。
崩壊の危機は免れたものの
それでも今後どのような状況の変化が
起きるか予測できないこともあり
現在も入念な調査が続けられています。

そんなピサの斜塔も他の歴史的モニュメントと同じように
スモッグによる汚れが付着して薄汚れた感じになっています。
この再洗浄作業が現在続けられています。
総洗浄面積は約7000平方メートルで、
終了は2009年半ばの見込み。

2007年夏季シーズン中は初めての夜間開館も実施され
8月中は23:00まで
9月30日までは20:30まで斜塔に登ることができます。
そのため8月中の斜塔の洗浄作業は23時から開始されます。
朝7時までの夜間修復作業。

この洗浄作業を進めるためにモニュメントには
保護壁を取り付ける必要がありましたが
もちろん余計な負荷をかけて傾斜増幅を起こしてはならないため
非常に軽い素材の保護壁が利用されています。
周りの地盤に足場を架けることができないため
それぞれの階に環状の薄い金属壁を取り付けています。
使われているのは
競技用自転車に使われるのと同じ軽量アルミ合金。
これにより軽量でモニュメントに負荷をかけず、
また見学者の視覚を邪魔することのない保護壁が実現しています。

傾斜しているために傾きの下側に当たる部分は雨が入り込まず
滅多に雨水で濡れることがないため、
スモッグによる汚れは一切洗い流されることがありません。
これによって非常に厚いスモッグの黒い膜が大理石に付着し
更にそれが太陽熱で温められることによって
汚れの膜が剥離していきます。
汚れ膜の下で起こる化学反応により
炭酸カルシウムが重炭酸塩となり
水に溶けやすくなってしまっているため
洗浄作業はきわめて難しくなっています。
まずはそうした水溶性の高くなっている部分を固めて
レーザー洗浄を繰り返しているのだとか。
一方傾斜の上側になる部分は雨水に晒されるため
カルシウム分が付着して層を成しています。
この頑固なカルシウム層の除去作業も必要になります。

今回の大掛かりな洗浄作業に際して
すべての装飾品のリスト化も実現しており
24500に及ぶ石のパーツの一点一点がチェックされています。
こうした資料が後の時代に有用になるのでしょうね。

気の遠くなるような緻密な作業によって
こうした歴史的モニュメントは保護・保管されていきます。

こういう部分でのイタリアの努力には本当に頭が下がります。

logo_albero4 banner_01