スペインサラマンカ・あるばの日々

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ねずみとおうさま~ペレスねずみを探して(2)

2016-09-22 02:03:58 | スペインがお題のコラム

前回からの続きになりますが…

この童話「ねずみとおうさま」の主人公、ペレスねずみと共に
王宮を抜け出したブビ1世が、当時の実際のスペイン国王、
アルフォンソ13世(在位:1886-1931年)であったことは述べた。

父親、アルフォンソ12世は1874年軍事クーデターにより
第一共和制がたった2年で終わり、王政復古で亡命先から戻ってきて国王となった人。

新憲法の制定や労働条件、福祉制度の改善など具体的な政策に取組み、
国民にも人気の高い国王だったけど、27歳で早くも亡くなってしまった。

その後継者として唯一の男子の誕生。
時の首相がその報せにむせび泣いた、と言うほどに待たれたのがブビ君だったのだ。
http://3.bp.blogspot.com/-4qNIIH96Bz0/TkJepMbNyrI/AAAAAAAABhY/9U1LEBIG8MI/s1600/alfosoxiii.jpg

わがまま一杯、好き放題に育てられた小さなおうさまに、
父君のように自らを律し、国民に慈悲深く思いやりのある君主に…という
願いは重すぎたのか。

その後のブビ君なる、アルフォンソ13世の伝記を読んでると…なんというか…その印象が

「享楽人生をし尽くした、めちゃめちゃ女好きのぼんぼん」↓
http://hoycinema.abc.es/archivos/201112/alfonsoxiii-filmoteca-1.jpg
というフレーズ一択となる。もうキッパリ。

このちいさなおうさまが16歳にして親政を始めた頃の1902年より、1931年に亡命にいたるまで、
この国は大混乱の時代だった。遅れてやってきた社会近代化が進み、労働者階級の膨張、
既存の階級社会への不満が爆発…ゼネスト、無政府主義者のテロ行為、政府高官の暗殺が相次ぎ、
クーデター後に軍事政権樹立、その崩壊…いわゆる“おうさまの治める国”、王政自体が崩れていった時代だったのだ。

その享楽人生はしばしば国民の批判の対象となり、政治家としての腕力も評価されず、
「バカ殿」として最終的に国を追われ、10年もの亡命生活で晩年を過ごす事になった人。
http://3.bp.blogspot.com/-rmhIbg0DkWk/UZPGwyyzksI/AAAAAAAAIRU/elHX2MKCeuQ/s1600/3714239257_950411eee3_o.jpg

宗派、身分とも違う嬢と無理を重ねて結婚したものの、
その遺伝で7人もうけた子息は皆病気に苦しむ。

ブルボン家の女好きは伝統芸と言われたが、宮廷におうさまのお手つき
でない女官はいないと言われたほど。

愛人の数は数知れず、認知子の数もしれず。
(かつて全国にその名が知れたここサラマンカのBarrio Chino(売春地区)にも
ご本人がお忍びで通ってたという話あり)

趣味はドライブ、狩猟、ポルノ映画鑑賞。

小食偏食、晩年はウィスキー、煙草、セックスに中毒を極め、随分体を痛めて
最期は狭心症で亡くなった。享年52歳。

ずっと後、このおうさまの孫フアン・カルロスが再びスペイン国王となる↓
http://www.hola.com/imagenes/tag/rey-juan-carlos-abdica.jpg

ここまでアルフォンソ13世ダメダメ王みたいに書いちゃいましたがw
ある意味時代の寵児でもあり、憎めない存在だったのかとも思う。

オンナたらしのおうさまながら、子供らには愉快で優しいお父様だったと子らの談話あり、

国王としてスペイン観光業促進に注目、
あのパラドール(国営ホテル)チェーンの設立に尽力し、
ロンドンとかパリにひけをとらないホテルを我が国に!とホテル・リッツ、ザ・ウェスティンパレスを建立、
セビージャに博覧会開催とあれば、その建築デザインにまで口を出し、高級ホテル「アルフォンソ13世」オープン。

サッカー好きだったので、チームにはRealの冠名(英語で言えばローヤル)をつけたげた。
(レアル・マドリッド、レアル・ソシエダとか)

ついでにスペイン名物、「タパス」の命名もこのおうさまとの説あり。

なんでもスペイン南、カディスを王が訪問中、料理屋のテラスでシェリー酒を楽しまれることに。
この港町の強い海風で、グラスにホコリが入らぬようにと気を遣った店の者が、
生ハムを1枚グラスの上に乗せて供した。
「これは何かね?」
「え…タパ(蓋の意)でございます…」
http://1.bp.blogspot.com/-Uph7PXTNtVQ/VO31WgowliI/AAAAAAAAAyA/MF7pTdxuklc/s1600/tapas.jpg
それ以来、王はことあるたびに「タパ付きを所望す!ほほ…」ということになり、
現在のタパスになったという話。

あ、ついでに「アルフォンソ13世」と名のついたカクテルが2つある。
http://www.estudiahosteleria.com/blog/wp-content/uploads/2016/04/Sin-t%C3%ADtulo.pnghttp://st-listas.20minutos.es/images/2012-10/346038/3757044_640px.jpg?1356134462

一つはデュポネというリキュールベースの食前酒。亡命先のホテルにて愛飲されたとか。
もう一つはクレーム・ド・カカオに生クリームのデザート酒。女の子をくどくのにぴったりな一品。
そういえばブランデーの有名ブランドもあったよ~どんだけ酒造界に愛されてるんだ!

なんかこのおうさま、「娯楽レジャー部門」ではやたら活躍してるんだけどww

さて…話は長くなっちゃいましたが。

改めてペレスねずみだ。
私が最初にねずみとおうさまに会ってから、随分長い時が経ってしまった。

あの話の最後によると、このおうさまは大変立派な王様となり、子供達におもちゃ工場を
建て、猫はねずみを捕ってはいけないという法律を作ったはずだが…

その後のちいさなおうさまの成り行きを、ペレスねずみはどう見ていたことだか。
そして、私のこともどう見てるんだろう?

「では、どうして僕だけ王様になってるの?
なぜ僕はほしいものは何でも買えるのに、あの子どもたちは何にも持っていないの?」

「それはね、あなたがあの子どもたちの一番上のお兄様だということです。
だから、あなたはみんなを、幸せにしてあげなければいけないのですよ。」

「ああ、そうか。
僕は今までそういうことを少しも知らなかった。
僕は夕べのうちにたくさんのことを覚えた。」

石井桃子氏の訳は原本を超えた名訳だったと、改めて思う。

自分と、ねずみとおうさまの再会は、ちょっとほろ苦かったけど
なかなかしみじみと楽しかったんだ。



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2 コメント

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ペレスねずみ?ネズミの名前ですか? (横浜フラワー)
2018-05-27 10:40:42
ペレスという人を知っています。スペインに多い名前ですか?
割と一般的 (Michiko)
2018-05-28 18:04:01
な苗字と思います。佐藤さん、見たいな感じ?

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