スペインサラマンカ・あるばの日々

スペイン語留学の街、サラマンカより、地元情報とスペイン文化、歴史に関する笑えてためになるコラムをお届けしています。

どこか懐かしい、小さな冬の味方

2017-12-18 23:46:44 | ゆるゆる・あやしいモノや場所たち

これ、何にみえますか?

手のひらに乗る程の小さな箱。

大抵の人が「…旅行用石鹸…?」と答える。

…実はこれ、この国でおばあちゃん世代から愛用されている、「ハンドクリーム」なのですよ。
その名はNEUSC。(ネウスと読むらしい)

「いやいや、一回もスーパーとかで見た事ないし!」→そう、店頭販売は薬局でのみ。もしくは
ネット販売

使い方は至って簡単。上記のようにスライド式に中身を取り出し、
直接手にヌリヌリするのみ。
触感はまあ…ロウソク塗ってる感。
そしてその香りが…なんなんだろう…「すごく懐かしいのに思い出せない、優しい香り」。
考えた挙句、小さい頃に遊んだ“紙せっけんの香り”と勝手に断定w いや恐らくそう。

お値段、4ユーロ前後。
すごく安くもなし、高くもなし。ただ形状としてすごーく長持ちはする。
塗った後の感じは意外やさらっとしてて、ベタ感は一切なし。

そして効能→期待以上に実力派かも。毎日のお手入れ用というより、やばい感じに荒れて、
ひび割れまでできちゃった重傷手にたっぷり、がお勧め。寝る前やっとくと翌日ザラ肌を落ち着かせて
効いた~感あり。

ネット口コミ、販売で蘇ったレトロコスメ

確か日本でもレトロコスメなるもののジャンルあり。
一時爆発的人気となったニベアの青缶なんかもむかーしからのブランド、他に椿油、
資生堂のドルックスシリーズ、ロゼットパスタ洗顔などなど復活した商品、大勢。

これらの再人気を盛り上げたのは、まさにネットに広がるコスメ大好きな人達の口コミワールド、
そして強力なネット販売網だろう。

現在はネウス社としてネット販売ページあり。

スティック状のものもあり、様々なタイプを販売。
日本でいう“アットコスメ”みたいなページでもかなりの星がついてる。
なんでも
「足のかかとのひび割れに最強!」だの
「スキーとかいった時にはリップクリームとして」、
「小さな切り傷にも安心して使える」…などとまさにネウス礼賛の声の数々がw

世界を席巻するファッション誌、「ヴォーグ・スペイン版」2017年11月号にも
レトロコスメ、冬の万能クリームとして紹介していた。

実はこれを読んでそういえば!と思い出して薬局に走ったら、なんと最初の店で売り切れ。
これはヴォーグ効果なのか、まあ寒い冬効果なのか…

鯨の精液?!!

私がネウスを知ったのは随分昔。たまたま友達が使っていた時に出くわして、
“な…なんで手に石鹸塗ってんの?!”とびっくりして訊いたことから始まり。

そして今度は自分が使っているのを見て「うわー!懐かしい!!」と感動されることがあった。
なんでもお婆ちゃんの家の洗面所には、髭剃りや古臭いコロンに混じって、必ずや置いてある
ものだった由。この匂いをかいで懐かしむ人もいた。

そう聞いて調べてみたけど、ネウス社自体は創業25年と新しい。恐らく他社もしくはパテントの買取に
より名が残ったものと思われ。

…しかし…ネットで見つけてしまった。

ネットのアンティークコレクションのページに出されていた

「恐らく40-50年代のネウス、ほぼ未使用。当時10ペセタ」が25ユーロにて。
これで“おばあちゃんの世代から…”という話が証明されたわけだが、
このページの写真にあった「原材料」の部分にラノリン、ワセリン、などに加え、
「鯨の精液」
とふっつーに書いてあったのに密かにたまげる。

いやいや時代とはいえ、ないでしょうそれは…と思って(実は未だ信じていた人が結構いた。
曰く「ネウスは鯨の精液が入ってるから効果抜群」なんだとか)調べてみましたが…

ようは当時鯨油が工業用などに限らず、このように化粧用としても随分広まっていたらしい。
(この便利な鯨油搾取が、種の絶滅危機スタート原因なんだけど)

「精液うんぬん」はその形状由来のいわゆる俗称で、それを信じた人も多かったでしょうが、
日本でも長く漁師らの間で特効薬として使われていたとのこと。もちろん現在は原材料名からはずされている。

鯨と人との繋がりは深いな。
なんか日本だけみたいに思われてるけど、実はこんな遠くスペイン内地にて、
「昔の貧乏時代は鯨は海の牛肉、みたいにだまされて食べた」なんて証言を意外にも何件も拾ってる。
バスクは捕鯨が盛んだった時代があった歴史があったというけど…

ま、ここで鯨の話に行き着くとは思いませんでしたが
カスティージャの寒い冬、このレトロコスメをぬりぬりして寒さ対策万全で過ごしていこうと思っとります。