スペインサラマンカ・あるばの日々

スペイン語留学の街、サラマンカより、地元情報とスペイン文化、歴史に関する笑えてためになるコラムをお届けしています。

謎の揚げ玉ピンチョが美味しい件

2019-03-20 11:12:19 | サラマンカのタベモノ・バル情報


「揚げ玉」などと勝手に名前をつけてしまいましたがw

今回はここ、サラマンカの美味しいピンチョを1つ2つご紹介。

(まあ…一生行かないトコのグルメ情報を聞いても…と
思う方もおられるでしょうが、そこは笑ってお納め下さいw)

スペインのバルというもの、何軒か行くと、どこも大体
定番の、万人受けするピンチョが並んでいるのが常…と知る。

そのうち、なるべくちょっと変わったものを…と物色
し始め、あちこちに訊き回り、
「あそこの○○が絶品」
「あの店のコロッケは先代からのレシピで…」
などの情報をゲットしようとする自分の情熱、炎の如し(爆)。

…ということで前出の「揚げ玉」
なぜ謎なのかというと…
「どっちもレシピを絶対教えてくれない」
から!
以下にご紹介。

(※注-私はどこのマワシモノでもありませんので…w)


● “プルガ”という名の謎の揚げ玉

場所は「ラ・カサ・デ・ラス プルガス」

サラマンカの中心となるマヨール広場から徒歩数分。
いくつかのレストランが並ぶあたりにある、
クラシックなレストランバル。



入り口すぐがバル部、になっており、まずは
ここカウンター当たりに座って位置確保をする。

目の前にきらめく出来立てのピンチョに目もくれず、

「プルガを下さい」

と静かに注文して待つ。

その間に“プルガって何て意味だっけ”と辞書で調べて
独りで怯えないこと。

ここでの意味は、“蚤(のみ)”じゃありません。
“ほんの小さな一口の”の意味合いで、他の地方では
プルガというと一口サイズのミニサンドが出てきたりしますが。

で、間もなくモノが出てくる。


揚げたて、アッツアツのものをしばしさまし、

中を開けて見ると、なんかパテ状の…なんだろう?

一口…美味しい。

まろやかでクセがなく、旨みが結構ある。
で…何でできているのか…

(ツナみたいな食感があるような…ないような)
(肉肉しくはないよな…)
結局分析しているうちにあっという間に終わる。

そしてこれの作り方も、原材料何かも教えてくれない。
“いや、決して怪しいもんじゃないですよ”というだけで、

「サラマンカ南部にある○というバルの奥さんのオリジナルレシピ」
「知り合いが1ヶ月タダ働きするから教えてくれと請うても首を
縦に振らなかった」

と聞いた話にも益々神秘性が加わるというか…
まあそんな大げさなもんでもないけどw

お店の屋号にもなってるこの揚げ玉ピンチョ、誰か謎を解いてくだされ!


●ピミエントという謎の揚げ玉

もう一軒はやはりマヨール広場のすぐ隣にある老舗、
「プルス・ウルトラ」

サラマンカに残る、数少ない老舗中の老舗。
このネーミングといい(スペイン歴史好きの方ならはっ?!となるだろう)
古めかしい店内といい、いかにも昔のスペインバルだ。

 アニス酒のレトロ広告がなかなかいい。



数々美しく並べられた冷製ピンチョらも魅力的なのだけれど、
ここでもそれには目もくれず。

「ピミエントください」。

と常連のごときふりをして注文する。

客のほとんどが注文するゆえ、あつあつのそれが常に盛られた
銀皿から、2つほどを爪楊枝に刺してさっと出してくれる。

ここでも「ピミエントってピーマンじゃないの?」
とか思ってる暇はない。


開いて冷めるのをしばし待つ。

何かオレンジ色のクリームパテが入っている。

こちらは塩が効いててピリから。
ピーマンの味など一ミリもしないが、美味しい。
この滑らかさは、じゃがいもでもなし…ラードでもなし

何なんだろう…とやはり分析してるうちに食べ終わってしまう。

そしてやっぱりレシピは謎。
う~んどうしてもしっぽがつかめない。

誰か教えて~!

●そしておまけ、これは珍味揚げ玉

ついでにもう一つ、ピミエントと共に人気なのが
やはりこの揚げ玉。


これは謎ではなく、珍味
中身は豚の脳みそ

下拵えに非常に手間がかかり、最近では
なかなか家庭で作ることも少なくなったと聞くが、
レストランではしばしば見かける。

隣国フランスでも結構食されていると聞いてたけど、
実は私、今更ながら初挑戦で食べてみる…

…お…これは…

魚の白子?にすごく近い!

薄い塩味、たんぱくながらもクリーミーな舌溶け。
臭みはまったく無い。美味しい!

例えてみれば、待ち合わせにわんぱく男子が来ると思って構えていたら、
やってきたのは儚げで可憐なお嬢さん、みたいな(謎の例えw)

この突然のエレガントな味に満足し、
揚げ玉ツアーはクチビルをピカピカにして終了。

嬉しいのはどれも注文してから揚げてくれる、もしくは
揚げたてほやほやを出してくれること。

カリッとしてて、ほくほくで、味は謎。

機会があったらぜひお試しを~!


メリエンダ~懐かしのスペインダメおやつ達

2019-03-07 15:18:24 | スペインだめメシ部

「あ~お腹空いた!」
と心の底から叫びたいほどの空腹感。

子供の頃、遊び尽くし、走り回った後の
健康的な渇き。

…そんな感覚を最後に感じたのはいつだろう?

そしてそんな空腹で食べたものは、
実に美味しくて、夢中になって食べた。

食後はなんともいえぬ満ちたりた
幸せな気分になったものだった。



それがオトナになってからこの方、
周りを見渡せば小腹を満たせるものに溢れ、
街は飲食店に溢れかえる。

仕事が忙しくて…などのつまらん理由で
食事がとれない時の空腹も、コンビニ菓子や
インスタント食品でごまかしてうやむやにしてしまう。

結局、あの“健康的な空腹感”は子供の頃
の遠い時代に置いてきてしまったのか…
と感じたのは、先日「子供の頃食べたオヤツ」の話が出たときだった。

●メリエンダというおやつ

スペインでの昼食は、大体14~15時あたりに摂る。
1日のメインの食事(日本でいうところの夕食)となり、その後
の夕食は21~22時頃。これは昼より軽めの食事。

この昼食と夕食の結構あく間のつなぎに摂るのが「メリエンダ」

大体午後18時あたりに何かをつまんだり、軽食をとる習慣がある。
カフェテラスなどでは、この時間お茶とお菓子をとる年配の奥様方
で溢れかえる。

大人はともかく子供のメリエンダは栄養的に
重きを置かれ、家で、学校で供される。


そのメニューも最近ではなるべく砂糖、添加物を避け、
果物、乳製品、たんぱく質重視のヘルシー志向にあり。

「あんなヘルシーなもんはでなかったな」
「今考えたら恐ろしいもん食ってたな~」
「でも美味しかったね。今でもやるもん」

…と大人たちの語る、“昔食べたメリエンダ”の
メニューがなかなか私には衝撃だった…のでここに記すw

● 砂糖万歳!脂質万歳!

パンに塗る。挟む。

これで完成。

なんとも原始的でお手軽なサンドイッチが昔も今も人気だ。

スペインらしく、チョリソやチーズなどを挟んだボカディージョなど、
今ではフツーにみかけるが、それさえ贅沢だった時代が長かった。

固いパンで挟んだサンド=「ボカディージョ」

「肉じゃないよ、うちは豚ラードを塗っただけだったな」
という年配者も多い。そう、豚ラードは一番安価な脂質だった。
(貧乏チョリソの記事参照)

「チョリソを挟んだボカディージョを持って外に出たとたん、
目の前で盗まれたのはショックだったな」と語る80代。

「実家がパン屋でな、パンだけはあった。それに親戚同士で豚飼ってたんだよ。」
飢えて道に行き倒れのようになった人もみたことがあったと話す。
貧富の差がくっきりと明確になった市民戦争の戦後期、
メリエンダを摂ることさえゼイタクだった子供も多かったろう。

「粉ミルクの溶かしたのを学校で飲まされた」と顔をしかめる60代。
50年代の話だが、恐らく当時米国が推進した“マーシャル計画”の供給品かと。
(スペインは第二次世界大戦不参加、孤立していたため、計画対象国には
ならなかったものの、それでもおこぼれ的な物資提供はあった模様。)

ばあちゃんが作ってくれた「バターを塗ったパンに砂糖を振り掛けたもの」
がうまかった!と目を細める50代後半。


この“砂糖パン”はあちこちで活躍した超ファーストフードだった由。
昔は甘いもの=砂糖一択だったお家も、田舎では結構あった。

「砂糖や脂は体を暖め、良きエネルギーとなる!」
という信仰はかなーり長く続いた。

時代は流れ、物資も年々豊かになっていく。

「マリービスケットにバターを挟んで食べる」
というのを未だにやる方も多い。世代を超えて愛されてるの?


「板チョコをパンに挟む」
という荒業も、
当時“なんと素晴らしい発明だと思った”などと懐かしむ諸氏多し。
「練乳をかける」「ココア砂糖を」という意見もあり。


オイオイ!とつっこみたくなるレシピだが、
一瞬「いけるかも」と思った自分がいやだw

60年代後半あたりから「缶詰入りのお手軽パテ」
や、店売りの安価な工場製品であるハムソーセージ
というのがでてくる。これらが一挙に“しょっぱい系”
メリエンダの主役となった。


信頼の黒フタでおなじみ、パテ「ラ・ピアラ」。
どこか黒帽子を被った闘牛士のごときデザイン。
安い、栄養価が高いとお母さんらにも人気だった。

ハム部門ではなぜかちょい昔「オリーブの実いり寄せハム」
というのが妙に流行った。彩りがあって小じゃれてるから?
こればっかり出されて味がトラウマになってる大人多いかも(←自分w)

と、上記2品を想いだし、久しぶりにメリエンダとして
トーストを作って食べてみる。(貧乏学生のオヤツでもあった)


しょっぱ~!(泣)
しまった、具の三倍以上パンが必要なの忘れてた。
これじゃあ海苔佃煮を海のようにかけたご飯状態。

そうなのよ、結局こういうものって“メシに漬物”
と同じく、“パンを大量摂取するための”アイテム。

美味しいかって?うーん恐らく昔は好きだった
味かも。今じゃ減塩脱脂フードに慣れきった体、
どうも私にはパンチが強すぎましたw

●そして…アルコール万歳?!

“昔食べてたメリエンダ”の話を集めていた中、
ちょっと衝撃だったレシピが

「赤ワインに浸したパンに砂糖をかけたもの」
だった。



えええ~~!!??
いいの???
いや本当なんです。

全国区、伝統的なメリエンダのひとつ。
スペインが誇るミシュラン三ツ星シェフ、
東京にもレストランを持つ、カルメ・ルスカイェーダ氏が
作り方ご披露してくれてます。↓
Pan con vino y azúcar con Carme Ruscalleda

 これをね、ふっつーに子供に与えていた時代があった。
恐らく70年代位までか…
今では考えられないことだが、子供対象でも、
“適量のアルコールは食欲増進、体を元気にする”と思われていた。
(まあハイにはなるでしょうが…)

例えば…

甘味の強いワイン「キーナ/サン・クレメンテ」。
アルコール13度の立派なアルコール飲料だが、
含まれるキニーネの作用で食欲増進に役立つ食前酒とのこと。


可愛いキニート君の漫画キャラで、お子様の成長を助けるとして
販売されていた。以下CM

家族みんなでキーナ!子供はメリエンダのお供に…


また、ビールメーカー「クルスカンポ」は
お子様向けの“清涼飲料水”としてビールを勧める広告を。
“ママはいっもクルスカンポを買ってきてくれる”
“どんな他の飲み物より食卓を楽しく、消化も良くする
クルスカンポ”

やはり他のビールメーカー「ダム」の広告。
“ダムを飲んでケネディ宇宙基地への旅を当てよう!”
“お子様と共に楽しむダム・ビール”

特にビールに関しては最近までソフトドリンク扱いされていたと思う。
(飲み会に遅れてきた友人が“ごめん!今日車で来ちゃったんで…”
といいながらビールを頼む、というのは昔ふつーの光景だった…)

もちろん現在では18歳未満の未成年の飲酒は
厳しく法律によって禁止されている。

●そして添加物、人工うんちゃら万歳!

 80年代後半から90年代になると、
“砂糖ぐっちゃり、子供にっこり”的な駄菓子パンが
大いに人気となる。


チョコクリームが入った菓子パン「ボジィカオ」は
まさにその代表。これを握り締めて公園で遊ぶ子らをよく見かけた。
80年代のCM


また以下のごとくチョココーティングのミニケーキ
も流行った。部活帰りのおやつにぴったりw





個人的な告白をすれば、この毒々しいピンクの奴が好きだった。
これとミルクの組み合わせは神。
近年体調を崩して入院生活だった時も、見舞いに来た友人に
“下の売店で買ってきて…”と財布を渡してた位だ(爆)。

上記駄菓子パンは添加物が多い(そういえばめったなことがなきゃ
腐らなかったw)と顔をしかめる親も多かったと思う。

これらの買い食いを禁止する厳格な家でも、なぜか!
常備されていたのがこの↓チョコスプレッドクリーム

2大メーカーが争ってます。

 今でこそ糖分過多だ、パーム油含有だと叩かれているが、
食が細い子供を持つ親のための、最後の救世主。
寝た子も起こす(?)強力な中毒性があるのは皆知っている。

 引き続き根強い人気を誇るこの製品。
この国の40代以下の体の基礎は、
恐らくこのクリームで形成されているかと。

そして彼らが現在、親の世代となって引き継がれている模様…
2018年ヌテラのCM~朝ごはんにもぴったり!


…と、まあ結局「スペイン・メリエンダ近代史」になっちゃいましたが
(参照:スペイン・アイスキャンディー史

親が子供にとにかく食べさせ、成長を祈る想いは
時代を超えて、変わらずですな。

それが一片のラードを塗ったパンであれ、
豪華なサンドイッチであれ、
いやたまに買ってきた駄菓子パンであったにせよ、

渡されたメリエンダ-おやつ-の向こうに
「お腹一杯食べて元気にいて欲しい」と
いう想い、子供らは言わずとも感じ取って大きくなるもんですもの。

 参考資料
las 33 burradas que hacíamos en las merendolas la generación EGB