スペインサラマンカ・あるばの日々

スペイン語留学の街、サラマンカより、地元情報とスペイン文化、歴史に関する笑えてためになるコラムをお届けしています。

慎ましくも、美味しい聖週間(セマナ・サンタ)

2017-03-28 14:11:27 | スペインのタベモノ

禁、肉食。

禁、バカ騒ぎ。

禁、肉欲行為(爆)。

…セマナ・サンタといわれる聖週間、このキリスト教大国が、最大のリスペクトを持って祝う宗教祭。
月暦による移動祝日だが、毎年3~4月頃にあたる。
そして上記三カ条がこの期間、信者によって守られる(はずの)、「大事なお約束事」。

「牛追い祭」だの「トマト祭」だの、“いいね~ラテンの国はバカ祭りが多くて~”
と言われるスペインにおいて、厳粛、荘厳、そして静粛さをたっぷり含んだこの聖週間。
まさに“光と影の国”と言われる所以、ここにあり。

で、セマナ・サンタ聖週間の意義を無理にワンフレーズで言うならば、

「キリスト様のご受難-処刑から復活をシュミレーション体験期間」であり、
その苦難、悲しみを分かち合い、良き信者としての内省を行う日々。。



「棕櫚の主日」というキリスト様のエルサレム入りをされたとされる日から、
最後の晩餐の「聖木曜日」、処刑された「聖金曜日」を経て、最後の「復活日」までの1週間。
気分的に“黙祷!”てな感じで過ごさねばならない(ことになってる)。



↑こんな不気味な行列が、おどろおどろした音楽に合わせて街中を練り歩くのをみて、
外国人観光客は思いっきり引く。“KKKやん?!”と。(この国の名誉のために言えば、これは
中世から続く衣装で、真似たのはあの団体)



マリア様も煌びやかに衣装をほどこされ、しずしずと運ばれる。途中“グアパァ~!”(べっぴんさんの意)
との呼びかけが次々にかかる。これもすごいなと思う。もし日本で観音像に向かって同じことを
したら、寺の坊主にしょっぴかれること必至だ。

街中に満ちる教会線香の香り、楽団による古臭い音楽、毎夜聖像を担いで練り歩く集団…
何ともウツウツとした祭の期間ながら、正に「キリスト教大国の骨髄」を象徴する重要な行事なのだ。

…とは今では実は言い難いけど。

もう随分前から、このセマナサンタ時期はすなわちゴールデンウィークと化しており、
「今年どうすんの?セマナサンタ?」という現地OL同士の会話は、すなわち
「どこバケーションで行くの?」であり、「どのミサに参加すんの?」ではない。

すなわち、冒頭に上げた三箇条も、実は過去の遺物となりつつある。
(もちろんお年寄りを中心とした信者の方は続けているだろうが…フランコ時代の“全国民を揚げて”の時代は遠し)

しかしながら、このセマナサンタの時期=禁肉食の時期に、
基本肉食の国民が、なんとか工夫を凝らして過ごした伝統メニューというのが
いくつかある。それも結構人気w 以下ちょっと紹介~

●お肉じゃなければ魚を食べれば…

という話になりますが。
冷食も冷蔵庫も、クール宅急便もないし、昔。

なので安価で、持ち運びしやすい魚→塩漬もしくは酢漬、となったんですな。

そのうちの塩漬部門といえば、バカラオ=タラ。その塩漬け、塩鱈。
この時期になると、スーパーで見かける陳列がこれです。


大ぶりに切ったものから、一口サイズ、細かいフレーク状のものまで、実に豊富。
もちろん1年を通してあるものだが、この時期の「季節主力商品」。

これを使い、ひよこ豆、ほうれん草、ゆで卵などと共に煮込んだ「ポタヘ」が最もポピュラー。

http://www.leguminosas.es/wp-content/uploads/2013/03/garbanzos-con-bacalao_fq1rl.jpg

元来“ポタヘ”なるものとは、豆類(種類問わず)と野菜、他の具材
と合わせたツユダク煮込みのことを指す。

味は素朴そのもの。
豆のほっくり感、干ダラの塩味、ほうれんそうの、卵のとろ感が
熱々のスープに混じり合っていて、旨い。まだまだ寒い日々のオカズに重宝する。

このバカラオは使い回しのできる重宝食材、を使って様々なレシピあり。特にこの時期、
バカラオのコロッケやトルティージャ、トマト煮など、あれこれが食された模様。


あと魚の酢漬け。
これを聞くと「小魚の南蛮漬」なんてのを想い出す。
どうやらその昔、テンプラなどと同じく、日本に来た宣教師らの調理法が伝わった云々…の話を
聞いたんだけど…こっちであんま美味しい酢漬食べたことない…(スッパ過ぎるねん!!)
なんか市場とか、八百屋でこんな感じで↓バラで売ってるんだけど…

 うーん微妙。
そう、日本人は妙に魚に関して厳しかったりするのだ。ゼータクにも“小鯛のささ漬”などで育った
自分としては、どうも動かされない。。まあ昔は貴重な保存食品だったろう、とは思うが。

● 余るパン問題から出た、お宝。

なんだかんだいって、肉食の国。
金持ちは、教会から“免罪符”を買ってご禁制のモノをこっそり食し、
貧乏人は、吊るしたチョリソを見て泣く子供をなだめるばかりだったとか。

しかし…パンはあった。
というか、肉食べないので妙にパンが余った、この時期。
これを利用しない手はない。
(それに、日本でお米粒を残すと怒られるのと同様、パンを無駄に捨てると怒るばあちゃんもいる)

その中で、代表的なものといえば「にんにくのスープ」。



もはやスペイン国民、心の味スープの一つ。
古パン、にんにく、ピメントン(香辛料のパプリカ)、オリーブオイルといたってシンプル、
なのにしみじみ染みる一品。

セマナサンタの祭事で有名な街、サモーラはまたにんにくの名産地でもあり、
この時期の夜間祭事が終わると、皆バルに駆け込んでこのスープで体を暖めるのがお決まり。
こんな感じの土壷、木のおさじが定番スタイルで出てくる。

そして…もはやセマナサンタのスター的タベモノといえば、
この古パンで作ったこれ、トリーハ。



いわゆるフレンチトーストなるものですかね。


ミルクと卵に浸したものを静かに油に落として焼いた後、砂糖、シロップ、またシナモンなどを
かけて頂く。バターは使わないのがスペイン風かな。
上手く作ったのは、中がプリン状になっててなかなか美味しい。
こんな簡単なものはない、いつでもできるモノなのに、なぜかこの季節にすごーく売れる。

最近じゃチョコバージョン、カスタードバージョンなどもあり↓


塩タラ、酢漬サカナ、古パン…こうやってみてくと、なんか質素きわまりなさを感じる。
(これはこの聖週間のみに限らず、スペイン料理の根本にそれを感じるものなんだが。)

ああ清貧なるスペインキリスト教徒、新大陸発見ブームも遙か遠く、

その数多くが寒風吹き荒れる荒野にしがみついて生き延びてきました…という印象が残る。

まあそれで溜めたエネルギーが原動力ととなって、普通と違うポップな方向性を
持って弾ける…てのがスペインカルチャーの特性かも…というのはちょっとこじつけですかね?


スペインを代表する歌はどれなんだ?

2017-03-09 20:46:59 | スペインがお題のコラム

「日本の代表的な歌を唄ってくれ!」
とリクエストされたことはないですか?(それもアカペラで)

いろんな国、地方の方々が集まっている場にて。

国際交流パーティーの盛り上がり最中とか、
留学先の語学学校のグループ会話レッスンの時とか。

(←こんな感じのプレッシャーの中ww)

“お酒の席で必ず皆で唄う歌”だの、
その国産まれの世界的ヒット曲など、
それぞれの国の方がノリノリで唄って盛り上がる中、

きっとあなたは
「…何歌えばいいのぉぉぉ~!(涙)」と途方にくれる。

なぜか。

日本の代表曲→短調、スローテンポ、しみじみ曲が多いから。
「花」、「上を向いて歩こう」、「さくらさくら」…日本情緒タップリの歌ほどしみじみ感が多く
“このノリノリの雰囲気をクールダウンさせてしまう予感充分”なのだ。



カラオケ発祥の国から出てきてこの有様。
“何でもいいから~国歌でもいいし!”と言われ、ならばと君が代を斉唱して
場を黙祷状態に凍らしてしまった経験もあり

だから意外と難しいのだ…ご当地ソング歌唱は!

では…スペインを代表する歌といえば?


●世界的ヒットだったフラメンコ・ポップの「マカレナ」と「アセレヘ」

まず最初にでてくるのは90年代に大ヒット、カンナムスタイル並に
そのダンスが世界中で踊りまくられたロス・デルリオの「マカレナ」。

そしてやっぱりダンス付で02年大ヒット、ザ・ケチャップの「アセレヘ」

世界ヒットなどなかなか生産しないこの国では、かなりの衝撃的だった。
日本でも流行ったので、聞いたことあるはず。
年々古くなりつつありつつも、未だにスペイン代表曲と思われているふしあり。

ただし、「こんなの代表曲とか思わんでくれ」的なことをよく言われる。
確かに前者はアンダルシア色の濃い歌、後者はほぼ意味なし歌詞の、夏のアホ歌。
国外ヒットしちゃったから、スペイン代表になっちゃいました~感が高し。

●スペイン代表歌=パソドブレとコプラ(フラメンコじゃないんだ)

 一方でスペインと言えば、イメージ曲としてこの曲が必ずでてくる。
「エスパーニャ・カニ」


この“オイチ、ニ!オイチ、ニ!”の元気なツーステップリズムがパソドブレ
もともとは軍隊での歩兵行進の時に使われていたマーチ、これが闘牛の際の士気高揚の
音楽ともなり、簡単なステップで村祭などで皆が踊れるダンスとしてポピュラーになった。
(ビデオは社交ダンスの華麗なステップ。ラテンダンスの一種として昇華したもの)

この元気なマーチ風音楽は人気が高く、1920年代付近に量産されたらしい。
「パキート・エル・チョコラテロ」
パーティーでは必ずやかかるパソドブレ。これに合わせてグループで、ジェンカみたいに踊り狂うのが定番。


いっぽうコプラという、スペイン心の歌ジャンル。言ってみれば“スペイン演歌”が
40年代位から爆発的に広まる。情緒的な歌詞を独自のこぶし、歌唱法で歌い上げるコプラ
の人気は根強く、今日に至る。

このコプラ界の重鎮、マノロ・エスコバル氏がパソドブレのリズム歌った73年のヒット曲、
「イ・ビバ・エスパーニャ」をほぼスペイン第二の国歌という人は多い。


我が祖国、エスパーニャ賛歌そのもの。ヒット当時はヨーロッパ他国に
出稼ぎに出たスペイン人が多く、この曲を聴いて自らを励まし、時には
望郷の念にかられてむせび泣いた…という話をご老人から聞いた。

今でもサビの“ビーバーエスパーニャー!”の部分は、若い世代でさえ
サッカー応援などの際にがなりたてる。

やっぱりこの曲がスペイン代表歌かな~

●多彩なご当地ソング、多すぎ

各地のご当地ソングを調べてみると、やはり先程のパソドブレの
古臭い曲が圧倒的に多い。これは60年代後半以降、政府の奨励もあって
次々に生まれたものとおぼしいが、全部同じに聞こえるw

ちなみにここサラマンカのご当地ソングは地元出身ラファエル・ファリーナ氏の歌う
名曲「我がサラマンカ」。ご本人銅像も市内にそびえる。


それでも次世代、別ジャンルのご当地ソングも多い。
バルセロナの場合、ペレ氏の「バルセロナ・エチセラ」がご当地ソング。
“カタルーニャ風ルンバ”というスパニッシュルンバの軽さがいい。


マドリッドは地元の生んだスペイン版ボブ・ディラン、ホアキン・サビーナ氏のフォークソング。

北のアストゥリアス地方は伝統の、のどかな“国歌”がある。

南に行ってマラガのはなんとラップ!ゴルド・マスターの「マラガシティ」

…もっとあるけどページが重くなりすぎたからやめますw

地元愛、自分の村一番!意識が強く、まとまりのつかない国、スペイン。
それだけに、実は“スペインを代表する歌”を限定するのが難しい。
ていうか、すごく揉めるお題。(さっきのビバエスパーニャだって嫌う人も多い)

でもいいんじゃないかね。自然で。
全国統一!国民皆同じ!みたいなキナくさい考えより。