Horse Racing Cafe

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最後まで主役であるということ

2006-12-31 21:27:56 | 競馬雑感

  2006年も今日で終わり。2006年の競馬界も色々あったわけですが、思うに今年の競馬界を語る上で不可欠なのは〝ディープインパクト〟と〝海外遠征〟(まあ、ありきたりですが)。そのことは競馬月刊誌・優駿の表紙をディープインパクトと海外遠征関係が8ヶ月も占めたことからも分かるかと(2月号はまだ出ていませんがどうせディープだろうと思われるw)。ディープインパクトという馬に関しては今更私がアレコレ言っても既に語りつくされたことしか言えないのでここではあまり語らない・・・つもりだったが思いのほか長くなってしまいましたな。
 
 
 今年でディープインパクトは引退するわけなのだが来年の古馬戦線を見てみるとどうであろう。主役になる馬(候補)は当たり前であるがディープインパクトの相手にならなかった馬なのである。どれだけメイショウサムソンやドリームパスポートが活躍したところでディープインパクトという大きすぎる影は付いて回るのだ。結局、ディープインパクトは次世代に主役バトンを渡すことを拒否した。こんな後輩にバトンを渡すくらいなら自分で物語を完結してしまおうと考えたのであろうか。そこが晩年には次の世代のことも思いやったこれまでの名馬と異なるところ。テイエムオペラオーは5歳時に本人の意思とは関係無しに秋3戦でバトンを次世代に渡した形となり、そのオペラオー自身4歳時の宝塚記念でグラスワンダーの骨折というアクシデントがありながら98年世代からバトンを渡されている。同じ三冠馬にしてもナリタブライアンはサクラローレルにバトンを渡し、ミスターシービーはシンボリルドルフに渡した。シンボリルドルフはディープインパクト同様に渡すことを拒否したとも言えるか(シンボリクリスエスも当てはまるか)。いや、ルドルフは日本最強馬という看板を引っさげて欧米遠征するという確かな〝目標〟が存在したためにバトンを渡すわけにはいかなかった。路線を変えてみても短距離ではタイキシャトルがマイネルラヴの前に倒れ、ダート界ではアドマイヤドンもひっそりと引退した。バトンを渡すことを拒否した馬ではノースフライトとサクラバクシンオーだったり、牝馬戦線ではメジロドーベルといった先例があるものの、古馬中長距離で最後まで主役の座を譲らなかった例は非常に珍しい。

 ルドルフの相手にならなかったミホシンザンや須田鷹たちは翌年の古馬中長距離路線では故障などもあり主役を張ることができなかった。クリスエスに千切られた各馬は翌秋になりゼンノロブロイが格好をつけたものの春競馬では主役になれなかった。今回はどうなのであろう、有馬記念出走メンバーに翌春の主役を望むことができるのであろうか?願わくはディープインパクトには来年も現役を続行してほしかったことは多くの競馬ファンの共通の思いでもあると思うが、それはディープインパクトの唯一成し遂げることのできなかった凱旋門賞へのリベンジという思いであると共に、ディープインパクトが過去の名馬の例に漏れず次世代に繋げる競馬を見て見たかったという思いもあるのではないかと思う。

 結局、ディープインパクトは「中山不安」とか「前走の反動有り」とか何とかいう外野の声もどこ吹く風で有馬記念を圧勝した。最後まで我々はこの名馬に全力を出させる舞台を用意することもできず、この馬固有の人気を他の馬にまで波及させることができなかったように思える。一頭の馬が圧倒的に強い競馬も面白いが、高レベルの馬数頭で織り成す競馬のほうが後々語りやすい。オグリキャップが未だに語られ続けるのはオグリの持つドラマ性、狂気とも言われた使い方もさることながら、タマモクロス、スーパークリークといった欠くことのなかったライバルに依拠する部分も多いだろう(まあ、そのライバルもオグリの持つドラマ性の一部分とも言えるのだが)。オグリキャップのレースと聞けば89年のマイルチャンピオンシップやJC、ラストランの有馬記念などすぐに思い浮かぶ。では、ディープインパクトと聞いてどのレースが思い浮かぶか?ディープインパクトには名勝負が無い…というかライバルがいない。日本人の大好きなライバル物語や挫折からの復活といった話も無いのに(凱旋門賞後のゴタゴタはそうとも言えなくも無いか)あれほどの人気を博したのは非常に珍しい出来事。逆にこういった今までの競馬の枠組みに嵌っているスターとは違った型破り的な名馬だからこそ〝ディープインパクトブーム〟なるものが起きたのではないかとも思ってしまう。

 さて、泣いても喚いてもディープインパクトは引退してしまった。来年から、我々は何を感じ取ればいいのか。いや、古参の競馬ファンからしてみたら父ステイゴールド×母父メジロマックイーンといった(*´Д`)ハァハァな存在のドリームジャーニーが最優秀2歳牡馬(たぶん)で父ジャングルポケットのフサイチホウオーがクラシック最有力候補というクラシックは(*´Д`)ハァハァものだろう。では、ディープインパクトで競馬を始めたファンは?彼らが競馬を今後も見続けたとして、それがディープに類する馬を探すためであるならば悲しいことかもしれないし、それは理解することもできる。それだけディープインパクトと言う存在はここ2年間にわたって圧倒的なものである。B.ブレヒトは「英雄のいない時代も不幸だが、英雄を必要とする時代はもっと不幸だ」と述べた。では、我々は英雄を求めずに競馬を見続けていくことができるのであろうか?少なくとも春競馬では英雄の影を感じずにはいられないのではないか。残された馬たちにはディープ去り後の王座を争うという大事な仕事と共に、ディープインパクトという影を払拭するというシンドイ仕事も待っている。これは引退後にどうしても神格化されることが否めないという時点でディープインパクトを現実に負かすよりも厄介な仕事であり、そんな重い仕事を最後の最後に後輩に対して用意したディープはイヤらしい名馬なんだな~とどうしても思ってしまう(笑)

 
 
 2006年の海外遠征は正月かな。それでは皆さん、よいお年を~。