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北朝鮮空爆は 金正恩はどう動くか

2017-04-12 08:33:16 | 政治


トランプ大統領は、わざわざ習近平主席に見せつけるために、米中首脳会談の期間中にシリアを空爆した。すなわち、中国が北朝鮮に圧力をかけないなら、同様に北朝鮮を空爆するぞと中国を脅したのだ

この見方は、二つの点で誤っている。第一に、百歩譲ってトランプ大統領が、わざわざ米中首脳会談の期間中にシリアを空爆したとするなら、それは やはりアメリカにとって敵はロシアだった。

中国はアメリカの味方だ ということを、目の前の習近平主席に示すためだったとしか思えない。さらに言うなら、遠方のクレムリンのプーチン大統領にも、シリア攻撃と米中蜜月をセットにして見せつけるためだ。

トランプ大統領にとって最大の目標は、アメリカに雇用を増やし、アメリカの富を増やすことである。この点、中国はアメリカにとって年間6,630億ドル(2015年)という最大の貿易相手国だが、ロシアとの貿易は微少で、ベストテンにも入っていない。

中国がこの先、年間3,470億ドル(2016年)という、アメリカの全貿易赤字額の47%を占める巨額の対中貿易赤字をある程度、緩和してくれるのなら、ロシアよりも中国と組んだ方がよいに決まっている。

重ねて言うが、トランプ大統領が目指しているのは、「理念外交」ではなく「実利外交」なのである。

第二の誤解は、アメリカがシリアを空爆したということは、同様に、近未来に北朝鮮を叩くことを示したというものだ。私はむしろ、アメリカがシリアを空爆したということは、当分の間は北朝鮮空爆を行わないと決断したということだと捉えている。

トランプ政権には、シリアを叩くか、北朝鮮を叩くかという選択肢があった。シリアを叩けば、後見国のロシアを敵に回すことになる。また北朝鮮を叩けば、後見国の中国を敵に回すことになる。

もちろん、どちらも叩かないという選択肢もあった。だがそれは、「オバマ政権と違う、実行する政権」を標榜しているトランプ大統領の意思に反する。それに何より、トランプ大統領は、支持率低迷を打開する強烈な国民向けのアピールを求めていた。

それならいっそ、シリアを叩いて、その勢いで北朝鮮も叩くのでは、と思うかもしれないが、それは違う。なぜなら、アメリカがいまよりも格段に強大だった15年前のブッシュJr.政権の時でさえ、中東への対応で手一杯だったのだ。

ましてや相対的に国力が落ちた現在、シリアを叩いてロシアを敵に回し、今度は北朝鮮を叩いて中国を敵に回すなどという暴挙は、極めて非現実的だ。

そもそもトランプ政権の体制が、まったく整っていない。ブッシュJr.政権は、チェイニー副大統領やラムズフェルト国防長官など、ネオコンと呼ばれた強硬派の面々が、一致団結して戦争を遂行した。

外交を司る国務省も、パウエル国務長官はいまのティラーソン国務長官より何倍も統率力があったし、国務省内の結束も完璧だった。

それに対してトランプ政権では、戦争を遂行する準備ができていない。今回シリアを空爆したのは、「戦争はしない」と宣言したオバマ政権8年間で、国防総省に溜まっていたフラストレーションが、爆発したようなものだ。

外交を司る国務省は、いまだ国務副長官、国務次官、国務次官補さえ決まっていない。国務省の体制を整えるのに数ヵ月、その後はシリアにかかりきりとなるだろうから、北朝鮮空爆など吹っ飛んでしまったに等しいのだ。

ただし、トランプ政権は、そう正直には言わない。例えばティラーソン国務長官は、4月9日にABCテレビのインタビューで、「シリアへのミサイル攻撃は、北朝鮮に対する警告の意味合いもあった」と述べた。

問題は、北朝鮮がこのメッセージを真に受けてしまう危険性である。金正恩委員長が、「次は自分に襲ってくる」と危機感を抱いて、ますます核ミサイル開発を加速し、暴発しかねない状況を生むということだ。そこは注意していかねばならない

現代ビジネス からの引用記事

 



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