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枯渇しつつある「首領の財布」闇市場の「住民経済」が拡大

2017-05-09 09:55:51 | 政治


今の北朝鮮では、電力や運送、炭鉱、鉱山、農場などはほとんどが稼動を停止した状態だ。石炭や原油などは、中国などと闇ルートの貿易があったが、中国の措置もあって最近は取引が減ってきているようだ。

ただ大多数の住民は首領経済の恩恵をもともと全く受けてていない。そこで自然発生的に起こったのが地方の闇市場、すなわち、「住民経済」である。
90年代半ばに入り北朝鮮は、配給制度を廃止せざるをえない状況に追い込まれた。

社会主義国家の崩壊で旧ソ連などからの支援が途絶えたうえ、、国際社会の経済制裁が厳しくなる中、首領は住民の面倒を見る余裕がなくなったからだ。
 
大規模な洪水が重なったこともあり、90年代後半には200万以上の餓死者が出たといわれる。当局に食糧はもとより、生活に必要なすべてのものを依存していた住民らは、生き延びるだめに国を脱出、国境沿いで密貿易をはじめる。

それができない住民は国中を彷徨しながら生計の口を探し回り、物々交換をするなどして生きる術を身に付けた。
 
こうした住民らの自発的な経済活動によってできたのが闇市場、すなわち住民経済である。90年代後半に形成が始まった闇市場は、現在では大小規模をあわせて500ヵ所近くあるといわれ、完全に一つの経済圏を形成している。首領経済や軍需工場などの生産が停滞していることもあって、いまや住民経済は北朝鮮経済全体の約8割を担っているという評価もある。
 
皮肉にも北朝鮮経済にここ数年改善の兆しが見えたのは、首領経済とはまったく別途に生成し、発展した地方の闇経済のおかげだ。
 
いま、北朝鮮で起こっている大きな変化は、首領経済と住民経済の乖離が進み、この二重構造によって住民の生活は限定的ではあるが改善の兆しが見え、一方で首領経済、すなわち金正恩の「財布」は段々と枯渇しているという現象だ。国際社会の経済制裁は、いまや首領経済に的を絞っているからである。
 
正恩時代になって、首領経済の主要な収入源になっていた武器取引やたばこの密輸、偽ドル、麻薬の取引に対する国際社会の監視は年々、厳しくなった。
 
13年7月、パナマ共和国は麻薬などの運搬にかかわった前歴のある北朝鮮の貨物船を拿捕、船内から防空ミサイルの部品や戦闘機のエンジンなどを押収した。国連の北朝鮮委員会がまとめた年次報告書(14年3月)によれば、「2006年以降、北朝鮮による最大の武器取引」の摘発だった。
 
また外交官が外交特権を利用してする密輸への監視も強化され、16年8月に、バングラデシュ政府は、電化製品や10万本以上のタバコの密輸をしようとして逮捕された北朝鮮外交官を国外追放した。
 
最近でも、正恩体制の統治資金源になっているとして、国際社会は出稼ぎ労働者の受け入れにも待ったをかけようとしている。

北朝鮮当局は、17ヵ国に派遣された約5万人の労働者から、上納金などで年間計12億ドルから23億ドルの収入を得ていたと、国連は指摘している(北朝鮮人権状況に関する報告書、2015年10月)。

こうした国際社会の制裁や監視で、首領経済の収入源は断たれ始めており、取り組みが続けば、金正恩委員長の「財布」は、減ることはあっても増えることはないのではないか。
 
金正恩は、高層ビルをつくるなどしているが、苦しい台所事情を隠すため、見栄を張っているようにしか見えない。

週刊ダイヤモンドからの引用記事
 


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