<11日の月曜日の朝、ヒゲクマはね、2日間のお祭りの疲れでボーっとしてたんだけど、上毛新聞の一面見て、背筋を伸ばして、「みんながくたぶれ果てたとこ狙って書いたのかな、汚いよな…」とつぶやいてたんだ。「論壇ぐんま 前橋赤十字病院の移転」という無署名の論説のせいだと思うんだ…>
そうなんです、この前橋赤十字病院の移転に関する論説、ものすごくたくさんの問題を含んでいます。それなので、今日から何回かに分けて、この論説の検証をします。
第一回は、前橋赤十字病院の歴史と現状についてです。
>前橋赤十字病院は1913年に開設。県内に8カ所ある「地域医療支援病院」の一つで、前橋市を中心に年間20万人を超える外来患者を受け入れている。高度救命救急センターとしても年間1万8千件の救急搬送に対応、2009年2月からはドクターヘリの運航も始めた。
青字は上毛新聞の論説からの引用です。この前橋日赤の歴史を書いた文章、分かるようでわかりません。
まずは、「地域医療支援病院」って分かりますか。これはね、1997年の医療法の改正で制度化された医療機関の機能区分のひとつなんです。1913年からいきなり84年話が飛んでいるのです。
簡単に言うとね、「地域医療支援病院」は患者さんの80%以上が、他の診療所からの紹介患者でなくてはいけない病院なんです。だから、ヒゲクマが紹介なしで自分の意思で前橋日赤に診療に行くと、通常の診療費のほかに、3150円余分に払わなければなりません。10月4日の記事におゆきさんがコメントしてくれた通りなんです。診療報酬制度とリンクした医療機関の機能区分なんです。
ですから、今ヒゲクマと一緒に暮らしている二代目吉駒は結構高齢ですが、消化器系は荒口町の飯塚医院、整形外科は問屋町のとくまクリニック、歯科は千代田町のフクロ歯科医院、眼は高崎の高山眼科、そして、循環器とよく分からない症状のときは城東町の生方医院のお世話になっています。前橋赤十字病院のすぐ近くにいても、前橋日赤は利用していません。
そして、これらのかかりつけの診療所が、いざというときに紹介する病院は必ずしも前橋日赤ではありません。前橋では、前橋日赤のほかに済生会病院と県立心臓血管センターが「地域医療支援病院」ですが、群馬大学附属病院、中央病院、協立病院は指定を受けていません。かかりつけ診療所は疾患の治療ができるかどうかで病院を選びますから、必ずしも「地域医療支援病院」を紹介するわけではないのです。
あのね、前橋日赤が「地域医療支援病院」であるということは、近くに住んでいても前橋日赤が使いやすい病院ではないということを意味しているだけなんです。かかりつけの医療機関や病気を最初に診てもらった診療機関の紹介がないと受診できない病院なんです。
でもね、上毛の論壇の筆者は「地域医療支援病院」という医療機関区分をちゃんと理解していないようです。単に「立派」な「重要」な病院のイメージ形成として使っています。ジャーナリストは、こういう用語の使い方をしてはいけないはずなのですが…
次は、高度救命救急センターです。「年間1万8千件の救急搬送に対応」って、すごいんだなと思わせるように書かれています。でも違うんだな…
救急医療ってのはね、初期救急(休日夜間診療センター 休日当番医等)⇒二次救急(365日24時間対応 入院設備完備 傷病に応じた適切な救急医療)⇒三次救急(365日24時間対応 入院設備のほか集中治療室等完備 救急搬送の受け入れ 救命救急センター機能保有)という三段階の受け入れ態勢でできているんです。
高度救急救命センターというのは、救命救急センターの中で特に症状が重い患者を収容する機能を有している病院のことです。つまり、死にそうな人を受け入れる救命センターなんです。
群馬県の救急搬送の実績は、平成20年度で68,668人でした。このうち、死亡が1,171人、重症が8,567人、中等症26、252人、軽症32、879人でした。つまり、救急搬送といっても、重症者は11%しかいないのです。前橋日赤の受け入れている1万8千件のうち何件が重傷者だったのでしょうか。これは、救急搬送のあり方の方に問題があることを示しています。
簡単に言うと、救急搬送の半分以上が不要不急の利用で占められているのです。このデータは、群馬県の保健福祉部が公開した資料から引用していますが、この資料の中でも、救急搬送の利用状況が適切な利用状態でないことを県は認めています。
つまり、高度救命救急センターである前橋日赤に、年間1万8千件も救急搬送があること事態が異常なことなのです。
前橋日赤の救命救急センターは救命救急病床16床を含めて30床です。これは東京都の施設等と比較しても決して少ない数ではありません。本当に重篤な重傷者への対応であれば足りるはずの数です。
前橋日赤が受け入れている救急搬送1万8千件は、誇りうる数ではなく、恥ずべき数なのです。上毛新聞の論壇の筆者はこのことをご存知なのでしょうか。
短い記述を取り上げても、こんなにも問題点があります。
前橋日赤のある地域住民は、前橋日赤が「地域医療支援病院」になったときも、反対なんかはしませんでした。
他の地域の皆さんと同じように、新しい医療機関の機能区分を受け入れ、かかりつけのお医者さんのお世話になっているんです。私も、私の家族も…
ドクターヘリの導入だって、近所にいれば騒音が増えるだけで、利用可能性はゼロです、でも反対なんかしませんでした。
救急のときに必ずしも前橋日赤に運んではもらえないのは当たり前と理解しているからです。私が在宅介護していた両親も、一度も前橋日赤に搬送してもらったことはありません。死の数日前の搬送のときも…、それは、当然のことで、救急医療機関の都合に合わせなくてはいけないからです。
病院というものは、そういう施設だということは、近くにいればいるほどよく知っています。
今日は第一回目、ここまで、少し長くなるかもしれませんが、ていねいに検証をしてゆきます。
上毛新聞論壇「前橋赤十字病院の移転」検証
前橋赤十字病院についての最近の記事は次の二つです。
10月3日 群馬県議会での前橋赤十字病院の建て替え問題が議論された…
9月26日 あまりに唐突な大沢知事の説明、前橋赤十字病院の移転理由は理解できません…
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次回の「ヒゲおじさん厨房に入る」(朝日新聞群馬県版)は、10月16日掲載予定です