緑のカーテンとゴルわんこ

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「田舎司祭の日記」をオンライン試写会で見ました

2021年06月04日 | 映画

フランスのロベール・ブレッソン監督の映画「田舎司祭の日記」を、クリスチャン映画を成功させる会のオンライン試写会で見させていただきました。映画製作から70年を経てのやっとの劇場初公開だそうです。有名な映画なので、日本公開されていると思い込んでいましたが、映画館での公開上映はされていなかったようです。やっと公開がかなったのに、まだコロナウイルス感染拡大が続いていて、緊急事態宣言下での公開です。映画関係者や劇場関係者の方々のご苦労がしのばれます。

一切の無駄をそぎ落とした端正で厳格な映画です。まさにブレッソン映画の真骨頂ともいえる、モノクロ画面の静謐な美しさに打たれました。若い司祭が、持病を抱えながら初めての教区に赴任したところから始まり、日々の出来事や思いを日記に書き込んでいきます。頑迷な村人たちの無礼とも思える若い司祭への接し方、教区の子供たちに聖書の講義をする場面でも子供たちからのからかいにあい心を痛めたり、見ている私まで切なく苦しくなるような描写が続きます。

昔、私が岩波ホールのエキプドシネマの仕事を手伝っていた頃に、ブレッソン監督の「少女ムシェット」の公開に携わりました。「田舎司祭の日記」と同じ原作者ベルナノスの小説を映画化した「少女ムシェット」も、救いのない過酷な運命にさらされる少女の話でした。

それにしてもブレッソン映画の主人公たちはなんという瞳の力をもっていることでしょう。悲しみをたたえ心の奥深くまで届く訴えかける視線の力、一度見ると記憶に刻みこまれるような美しい眼差しです。「少女ムシェット」のラストシーンの瞳、田舎司祭の病苦に耐える若者の瞳、理不尽なことがあっても、どんな困難や苦しみがあっても、その瞳の力を削ぐことはできないようです。

どんなことがあっても、辛い悲しいことにであっても、それは神様からの恩寵だという映画の主題は敬虔なクリスチャンには胸にすとんと落ちる内容なのでしょうが、まだまだ躓き多い信者である私は、主人公の若者がただ一度その若さを匂わせる、オートバイの後ろに乗せてもらうシーンがあまりにも美しくて、微笑ましくて可愛らしくて涙ぐみそうになってしまいました。

この映画は6月4日から新宿のシネマカリテ他で公開上映されます。ブレッソン映像に酔いたい方はぜひご覧ください。モノクロ、スタンダードサイズ映画ってなんて完成度の高い芸術美なんでしょう。

 


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