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65オヤジのスタイルブック

65才茶々丸のスタイルブック。様々なカルチャーにふれて養ったライフスタイルを紹介

映画 ウーマン・トーキング 私たちの選択

2023年06月07日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューはサラ・ポーリー監督、ルーニー・マーラはじめ若手、中堅の実力派女優陣が繰り広げる会話劇「ウーマン・トーキング 私たちの選択」です。

今回の作品は南米ボリビアで起こった集団レイプ事件をモデルに架空の村での設定でヒットした小説を原作として制作されています。映画化を持ち込んだのがスリービルボードやノマドランドのオスカー女優フランシス・マクドーマンドで、ビラッド・ピッドの映画制作会社プランBにより実現しました。このストーリを知っただけでも僕にとっては興味津々でした。

舞台は2010年のニューヨーク郊外のキリスト教一派の村で集団レイプ事件が発覚、識字教育さえ受けていない女性たちは村の男たちから悪魔の仕業と思いこまされていました。ある日そのことが村の男の犯行としった女たちは、男たちが村にいない二日間で三つの選択を話し合います。その選択は「このまま」「闘う」「脱出」彼女たちの代表により決着の話し合いが行われます。

物語の大半は三者三様の女性たちの会話劇で進むのですが、女たちのレイプにより一変する人生組み込まれ、それぞれの選択に真実味が強調され静かに力強さを感じる映画です。日本ではカルト宗教的な一面で語られそうですが、強者が弱者に向ける威圧を正当化する不条理ととられた方がこの作品を正しく見る要素だと思います。彼女たちの選択は平和的かつ彼女たちの持つ強さゆえの選択だと感じるでしょう。

アカデミー賞の脚色賞でオスカーを獲得しているにも関わらず上映館の少なさに失望しましたが、こうした真正面から女性に生き方をとらえた作品がもっと広がらないと日本の現状なんて進まないなと痛感する作品です。性別を超えて弱者に向けられる愛を感じてほしい映画です。


映画 AIR/エア

2023年06月03日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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今回の映画レビューは、ベン・アフレック監督、マット・デイモン主演のナイキの復活劇となるエアージョーダン誕生までを描いた「AIR/エア」です。

今回の作品は、Amazonオリジナルとあって劇場以外でもプライム作品で視聴可能でしたので、こちらで鑑賞しました。しかし最近のアマゾンプライム、近作映画のラインナップが群を抜いてます。

アメリカ現代史を描くことで監督としての地位を築いていったベン・アフレックがマット・デイモンとコンビを組んだのが今回の作品。アメリカプロスポーツ史に輝くマイケル・ジョーダンを誕生から陰で支えナイキの代名詞となったエアジョーダン製作までの社員の奮闘を描いた内容となっています。

アメリカ人気プロスポーツのNBL。コンバースやアディダス、リーボーックなどのシューズメーカーの中で後れを取っていたナイキが、新人選手であるマイケル・ジョーダンとのスポンサー契約に乗り出し前代未聞の選手の名前を冠したシューズ製作に挑み伝説の歴史を作り上げたマット・デイモン演じる営業マンは地味な内容ですが、ナイキファンやスポーツファンなら興味深い作品となっています。ちなみにCEO役をベン・アフレックが演じてますが、二人とも市井の人を演じた感じで、風貌はかっこよくないです。

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映画 劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~

2023年05月27日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューはドラマからの映画化となった救命医療ドラマ「劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~」です。

日本では数々の医療系ドラマがヒットし、映画化されるケースが多く映画も一様にヒットしています。印象的なのは映画でもシリーズ化されヒットしたコードブルーですが、こちらも完結を迎え満を持した形で劇場版TOKYO MERが公開されました。医療系ドラマが好きな僕にとって、特に救急救命作品は劇場で鑑賞が必須ですので今回のレビューとなります。

物語は都知事直轄の走る救急室TOKYOMERの成功により、全国に設置すべくかつての同僚、賀来賢人演じる音羽を中心に文部大臣直轄の横浜MERが設置された直後に、横浜ランドマークタワーで大規模の爆発事故が発生、最上階に193名が取り残される事態にTOKYOMERとYOKOHAMAMERが協力して救出する中で悲喜こもごものドラマが展開されます。

ドラマの中核となる爆破事故とは別に冒頭からCGによる迫力ある事故現場での救出劇でスタート、妹を亡くした失意からかつての妻、仲里依紗演じる千晶との再婚と妊娠で復活した鈴木亮平演じるチーフドクター喜多見がビルに取り残された千晶と菜々緒演じる夏梅と共に救出に向かうメンバーの奮闘はリアリティにあふれています。ドラマからのMERキャストの加え、喜多見を慕う新メンバーにジェシーが横浜のチーフドクターには杏が加わって映画らしい大胆な演出がおもしろいです。

医療系ドラマは、原作や脚本に恵まれて外れがないのですが、今回の作品はチームとしての役割が明確でスタッフ個々のキャラクターが生きています。特に鈴木亮平の人間味あふれる演技と徹底的に作り込んだ医療に向ける知識と演技が光ります。出演者が彼を変態と言うのもその部分にあるのですが、変幻自在の役柄に加えて、彼の象徴的なキャラクターとしてシリーズ化を期待しています。


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映画 TAR/ター

2023年05月22日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、アカデミー賞でオスカー本命と叫ばれながら無冠に終わったケイト・ブランシェット主演の「TAR/ター」です。

ケイト・ブランシェットが女性指揮者を演じ話題となった映画TAR/ター。5月12日にようやく日本公開となり楽しみしてましたがレイトショーもなくタイミングも逃しながらようやく鑑賞できました。

ベルリンフィルの女性指揮者でコンサートマスターの女性と同性婚で養女を迎え生活を共にするリディア・ター。7年間首席指揮者を務めエミー、グラミー、アカデミー、トニー賞の4冠を受賞する天才は自伝出版も控え順風満帆の日々を送っていましたが、ある事件をきっかけに彼女の人生の歯車が狂い始め転落していく人生ドラマです。

先ずは傲慢でありながら理知的なカリスマ独裁指揮者を演じたケイト・ブランシェットの演技に終始魅了されますが、権力者の持つ孤独と不安を転落までの過程で見事に演じています。

映画会社は監督のトッド・フィールドに依頼したのは現在のミーツー運動に代表される権力者が陥いるパワハラやセクハラ行為を男性指揮者を主人公でしたが、トッド・フィールドはケイト・ブランシェットを主演として脚本を作っているところがLGBTQをテーマに進めているところが、この作品のキモです。

また、エンドロールを最初に持っていきラストシーンを彼女の再生のスタートとしている手法も面白く、2時間38分の長編でありながらもう一度疑問点を探り出したい衝動に駆られます。

昨今の映画事情は、エンターテーメント性の高い作品と難解な作品のベクトル軸はっきりしていて映画の好みが二極化する傾向にありますが、TAR/ターに限ってはクラシック音楽の崇高さの中にあるエンターテーメント性と強烈な個性を持つ主人公のカリスマ性、LGBTQの持つ社会問題を物語の中に多彩に組み込んだテーマ性が三位一体となっています。

長編作品ですが、クラシック音楽ファンにも映画ファンにも2023年の映画を語る上で欠かせない作品ですのでぜひ鑑賞してみてください。

※なお、町山&藤谷アメTubeの前後半の映画評を参考にしてみると謎の部分が解けます。


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映画 せかいのおきく

2023年05月13日 | 【映画・ドラマ・演劇】

こちらの作品、江戸時代の人糞を集める下肥売りの青年たちと長屋住まいの訳あり武家娘が主人公です。

全編糞まみれのシーンの連続で苦手な方は心して観てください。苦手な僕も吐き気をこらえながら鑑賞しましたが、 モノクロシーンの美しい映像に救われて若手からベテラン、素晴らしい役者たちの名演に感動しました。

物語は江戸時代後期、下肥買いの矢亮と紙くず拾いの忠次、寺子屋で読み書きを教える長屋住まいの武家娘おきくが厠の雨宿りの中で出会います。銭の高い肥集めの矢亮の仕事を忠次が一緒にすることとなり、おきくも父親の事件に巻き込まれ声を失う中で、つらい人生を歩む三人の姿を淡々と描いています。

武家の娘きくを黒木華、矢亮を池松壮亮、忠次を寛一郎、きくの父を寛一郎の父佐藤浩市、長屋の住人に石橋蓮司、寺子屋の住職を眞木蔵人が演じています。つらい仕事を噺家好きの矢亮が笑い飛ばしながら続ける姿や兄のように慕う真面目な忠次、貧しくとも凛として気の強い娘をそれぞれ見事に演じていて好感が持てました。

また、声を失って絶望を味わいながらも周りの支えで徐々に元気を取り戻して黒木華の生まれ変わる演技は流石です。糞尿にまみれながらのシーンの連続をモノクロの世界に替えたのも、映画の持つ水墨画の世界と重なって先入観を持たせないことに成功しています。これは、江戸時代に作られた循環社会が言葉だけが先行するSDGs。とは違う一面を見事に表現していてよく出来た内容です。

江戸末期にある社会の矛盾や絶望を感じながら懸命に生きる市井の人々の人生を映画は「せかい」の言葉にある最果てにある希望を力強くも美しく描いています。また新たな日本が伝え残す時代劇の名作を生まれました。


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映画 丘の上の本屋さん

2023年04月24日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、黒柳徹子さんのナレーションCMでも話題のイタリア映画「丘の上の本屋さん」です。

今回の映画は、イタリアの最も美しい村を舞台に、古書店を営む老店主とアフリカ系移民の少年の本を通して心の交流を描いたドラマです。本が好きだけど買うことができない少年に店主は読書感想を条件に本を貸し出していきます。最初は店の前に置かれた漫画に始まり、会話の中で店主から彼が興味を抱く本を進めていきます。物語は書店を訪れたお客の本にまつわるサイドストーリー加わっていますが主題は二人の交流です。

最後に少年に渡される本でなるほどそう言う意味だったかと、誰もがわかる優等生的映画でしたが、本や映画の素晴らしをシンプルに伝えるには最適な映画といえます。この作品ユニセフが推薦、文部科学省特別選定となっていますので、本好きの人には少し物足りないかもしれません。本が好きで素直に映画が観れる人にはおすすめの映画です。


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映画 ザ・ホエール

2023年04月17日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューはブレンダン・フレイザーがアカデミー賞主演男優賞に輝いた「ザ・ホエール」です。

ハムナプトラで有名なブレンダン・ジョンソンがカムバックして挑んだ映画が今回の作品、特殊メイクにより体重272キロの孤独な男を演じ、オスカーに輝きました。ちなみにメイクアップ・ヘアメイク部門でもオスカーを獲得しています。監督はダーレン・アロノフスキー、レスラーやブラックスワン、マザーなどの映画で知られています。この監督、とにかく主人公をいたぶることが多いです。今回の作品も精神的にも肉体的にかなりやられてます。ただ、今回は少し希望がもてるものでした。

物語は大学講師の引きこもりの男チャーリー。重度の肥満を抱える彼は自らの姿を隠しながらリモートで教えています。余命僅かであることを悟った彼は、長年会うことが出来なかったひとり娘への絆を取り戻そうとすします。

映画はチャーリーが生活の中心となる居間と寝室だけで進んでいきます。登場する人物も介護をする親友の女性リズ、娘エリーに妻、ある宗教団体の宣教師のトーマスとごくごく少ない人々と進んでいくのですが、登場人物が伏線となってチャーリーが現在のような生活となった事実と真実が明らかになっていきます。

現在の進んだ技術によって作られたチャーリーの肉体ですが、作られたものとは思えない造形とブレンダン・ジョンソンの生身のような演技が輝きを放ってます。また、介護士の女性を演じたホン・チャウの演技も個人的にはオスカーに値するものでした。また、根底に流れる思想的な背景と文学的な要素を取り入れた演出もとても素晴らしいです。

余談になりますが、今回のアカデミー賞、エブエブの独壇場的な結果でしたが、今回のブレンダン・ジョンソンの主演男優賞は納得できアジア旋風の中での獲得に納得できる結果でした。また、後には主演女優賞にノミネートされているケイト・ブランシェット主演のターが控えていますのでこちらの方も楽しみにしています。

ぜひ、エブエブとは違う骨太の舞台劇ともいえる「ザ・ホエール」観てない人はぜひ鑑賞ください。


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映画 グッドバイ、バッドマガジンズ

2023年03月28日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、1週間限定の単館上映から口コミで拡大上映となった「グッドバイ、バッドマガジンズ」です。

舞台はある出版社、出版業界の第三極に位置する成人雑誌の編集局に中途採用された女性と編集者やライター、営業マンたち。ネットメディアの台頭による出版不況と東京オリンピック開催で起こった大手コンビニの成人雑誌撤去やコロナ感染拡大など、編集局に押しよせる苦難を描いてます。

出版業界の憧れを抱きながらも配属された未知の世界、理想と現実中でもがき続ける編集者や時代の波に取り残されたエロ業界の実態などかなりシビアに描きながらもエロを笑いで包み込んだ展開は飽きさせることなく小気味の良さがあります。振り返れば知らぬ間に消えていたコンビニの成人雑誌コーナー、その存在の有無に関しては関係者にも賛否両論があるようで、ビニ本発祥店でエロスの聖地といわれる「芳賀書店」や全裸監督で知られる村西とおる監督も出版業界の怠慢の結果だと述べていましたが、この点もちゃんとこの作品で示していてエロの本質も掴んでるなと思いました。ちょっと難しいこと言いましたが、エンターテーメント作品として最高の映画です。

今回の作品はスタッフ、キャストについて僕自身もおそらく観た人もほぼ知らないと思います。ちなみに社長役にはたけし軍団のグレート義太夫さんが出てます。またその過程から「カメラをとめるな!」のヒットを予測する人も多いですが内容としては実録ドキュメント的な作品なんで好みも分かれるかなと思いますが、テンポの良さと随所にささるセリフなど、シリアスとコミカルが同居する楽しい作品でした。機会があれば、ぜひ鑑賞してほしい映画です。

※こちらの動画は鑑賞後に楽しんでもらえると良いかな。


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映画 ケイコ 目を澄ませて

2023年03月26日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、三宅監督、岸井ゆきの主演の実在を女子プロボクサーがモデルのヒューマンドラマ「ケイコ 目を澄ませて」です。

数々の映画祭で絶賛、本年度キネマ旬報で1位に輝き、主演女優賞に輝いた本作、ろう者の女性プロボクサー小笠原恵子さんの「負けないで」を原案に気鋭の映画監督三宅唱と脚本家、酒井雅秋による完成した作品は、ボクシングジムでのトレーニングやろう者としてのハンデキャップをリアルに描いています。

主演の岸井ゆきのは、当然のことながらほぼ言葉のない演技と過去の作品とはまったく異なるプロボクサーの日常と試合などを生身の自分をさらけ出すように演じています。脇を固めるジムの会長には三浦友和、会長の妻に仙道敦子が、ジムのトレナーや家族役などに実力者の俳優陣が脇を固めています。

また撮影には16ミリカメラが用いられたことで、下町の古びたジムやマイナーな女子プロボクシングの世界やケイコの日常の目線などが観る者に親近感を与え身近にいながら、交わることのない生活の一片を感じ取れます。

決して派手さはなく、確かなエンディングは存在しないもののジワリジワリと心にしみわたり、寄せくくる漣を感じられる素晴らしい映画です。

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映画 フェイブルマンズ

2023年03月24日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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今回の映画レビューは、スピルバーグ監督の自伝的作品「フェイブルマンズ」です。

スピルバーグ作品の魅力はエンターテーメントから歴史ものに社会派ドラマまで多種彩々の作品を生み出すところにあると思ってます。今回の作品は、スピルバーグが生み出す映画への思いを自らの生い立ちに乗せた青春グラフィティ作品と言えます。

物語は映画の触れるきっかけとなった少年時代から始まり、ボーイスカウトやハイスクール時代の映画製作にいたる原点や映画の道が開かれるまでの姿が家族や友人たちとの交流を通じて描かれています。そんな中で映画人としてのスピルバーグを育んだ母親の存在が大きくクローズアップされています。

そんな母親を演じたミシェル・ウイルアムズと主人公のサミー・フェイブルマンを演じたガブリエル・ラベルは、まさに本物の親子のような演技で特にミシェル・ウイリアムズは自由奔放に自らの思いをストレートに伝える母親を見事に演じていました。予告編では仲の良い家族の姿がクローズアップされていますが、家族が抱える影の部分も隠さず描かれています。

スピルバーグ作品の中では傑出した作品と言えないかもしれませんが、スピルバーグが映画の原点となっていてスピルバーグを知るうえで大切な作品と言えます。


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映画 エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

2023年03月22日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、アカデミー賞7冠受賞の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」です。

正直7冠も取っちゃうのと疑問を抱きつつアカデミー賞受賞後の鑑賞です。物語はみなさんご存知の通り、中華系の夫婦が営むコインランドリーを舞台に突如旦那が別の宇宙の夫なり妻に宇宙を支配する悪を倒すのは君だと世界の命運を託され、メタバース(仮想空間)で戦うカンフーアクションです。主演のエブリンを演じたのは、ジャッキー・チェンの作品でもおなじみのミシェル・ヨー。夫のウェイモンドを演じるのはインディージョーンズのかつての子役キー・ホイ・クァン。二人はアジア人初の主演女優と助演男優でオスカーを獲得しました。

内容は家族愛をテーマにしてますが、メタバースの世界を動き回るエブリンのドタバタ劇に振り回されるヒューマンコメディーって感じです。こういう作品は賛否がわかれるところですが一様に日本では一様に受け入れれた感じがします。エンターテーメントしての要素が十二分に感じられる作品ですが、個人的には作品賞に監督賞、主演女優の主要3部門を含めて男女助演に脚本賞、編集賞の7部門も取っちゃうのって感じです。まだ日本未公開の作品が数本あるので僕は少しこの結果を受け入れ難い気持ちでいます。

かつてはホワイトアカデミー賞と揶揄され、その反動からか黒人受賞が増えた昨今ですが、昨年に続きアジアの風は吹いているように感じます。僕はこの傾向を素直に喜べないでいます。ただし、ミシェル・ヨーの演技とキー・ホイ・クァン、助演女優のジェイミー・リー・カーティスの演技は最高でした。


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映画 ソウルメイト/七月と安生

2023年03月07日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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映画館で観れなかった作品をDVDで観る今回のレビューはデレク・ツァン監督のデビュー作「ソウルメイト/七月と安生」です。

今回の作品は、2020年から2021年の話題作や隠された名作が多数配信されているアマゾンプライムで視聴しました。デレク・ツァン監督は過去に紹介した「少年の君」で注目を集める気鋭の新人監督で香港アカデミー賞で12部門にのノミネートされています。主演は少年の君でヒロインを演じたチョウ・ドンユイが主演を務めています。

物語は二人のネットで話題の自伝的青春小説「七月と安生」。映画化のためにモデルとなった二人の女性のうち原作者の行方がわからず、もう一人のモデルとなった女性、チョウ・ドンユイ演じる安生のもとに映画会社から連絡が入ります。安生は原作者のことは知らないと嘘を付くが、七月と安生は幼き頃からの親友(ソウルメイト)だった。

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少女時代から始まる七月と安生、二人の好対照な性格と生活環境、恋人の出現など出会いと別れを繰り返し二人の人生が交錯しながら進んでいきます。また二人の背中合わせのような性格と境遇、ソウルメイトとしての運命的な別れと出会いに安生を演じたチョウ・ドンユイと七月を演じたマー・スーチュンの陰と陽の演技が見事で心打ちます。さらに安生の現在を組み込みながら、徐々に真相が巧みに明かされるサスペンス仕立ての展開も濃密で飽きさせません。そして迎えるクライマックスがまさにソウルメイトです。

少年と君では境遇の違う少年少女の美しくも儚い人生をストレートに描いた力作でしたが、今回の映画はデビュー作にして完璧な名作で、映画ファンなら文句なしに高評価する作品だと感じます。


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映画 エンパイア・オブ・ライト

2023年03月03日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、オリビア・コールマン主演、サム・メンデス監督によるヒューマンドラマ「エンパイア・オブ・ライト」です。

現在アカデミー賞の話題で持ちきりの映画界ですが、撮影賞のみのノミネートで今回の作品は賞レースには外れた作品かもしれません。しかしながら、オリビア・コールマンをはじめ出演者の好演が光作品です。

舞台は1980年代初頭のイギリス。海岸線に佇む寂れた映画館のオリビエ演じるヒラリーはわけありの過去を持つ独身中年女性、ある日劇場のスタッフに黒人青年スティーブンが加わります。スティーブンの明るさと優しさに惹かれるヒラリーですが、やがて不況下の政治状況の中で、二人は思いもしない出来事に巻き込まれていきます。

静から動へ、オリビア・コールマンの演技は誰もが心に突き刺さり、自らの境遇の中で苦悩しながらも明るく気丈に生きる青年スティーブンを演じた新人俳優マイケル・ウォードの演技がうまく絡み合い人間の弱さと優しさ、差別や社会への憤りなど様々な人間ドラマが展開され静かな感動を誘います。他にも支配人役にコリン・ファース、映写技師役でドビー・ジョーンズなどイギリス映画界の名優が脇を固め随所に輝きを放っていました。

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サム・メンデス監督は映画への愛を庶民の娯楽の場である映画館を中心に添え美しい情景で謳い続けます。アカデミー賞撮影賞でのオスカーを期待する演出でした。バイロンでは華やかな映画界の栄光と没落を通じて映画愛を表現していましたが、今回の作品は観る人への愛が深く感じられる映画でした。


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映画 バビロン

2023年02月25日 | 【映画・ドラマ・演劇】

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本日の映画レビューは、ディミアン・チャゼル監督、ブラッド・ピッド、マーゴット・ロビー共演の「バビロン」です。

 

最近一億総評論家傾向で、話題作に対して辛口レビューが多い昨今ですが僕の場合は多少の批判はあっても映画への愛に満ちた淀川長春さんをリスペクトしてるので基本良いとこを見つけようとするので辛口批評家の方々はご理解を。

さて今回のバビロン、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビーの好きな俳優が共演してるのでそれだけも十分満足です。監督はセッションやラ・ラ・ランドなどのヒットで知られるディミアン・チャゼルですから期待値が高まるのも当然でしょう。

舞台は1920年代のハリウッド。無声映画からトーキーへと移る映画人たちの人間模様が描かれ監督の映画へのオマージュに満ち溢れた豪華絢爛な作品です。ハリウッドの人気俳優ジャックをブラピが野心を持つ新人女優ネリーをマーゴットを映画製作を志すメキシコ青年マニーや黒人トランペッターのシドニーや字幕編集のミステリアスな中国人レディが主な登場人物でそれぞれが関わりながら物語が進んでいき出演陣の熱量を感じます。ちなみにスパイダーマンのドビー・マグワイアが意外な役柄で登場します。

初っ端から、酒池肉林の絢爛豪華なパーティーで主要な人物が総出演、随所にド派手な演出が肝です。ハリウッドの黎明期を描いているので、制作時間やロケーションなど現在のCGやVSXの時代と違い相当な時間とお金を費やす反面、スター誕生のスピードも速く、無声映画からトーキーの分岐点で起こる栄光と没落のギャップも多きい。そんな時代を生きた主人公たちを同時進行で描くことで3時間強にも及ぶ長編映画となっており賛否両論の評価ですが、個人的には飽きることなく鑑賞できました。

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ラストで監督の映画へのオマージュが描かれて、何か好き勝手に作った映画だからとやかく言わず楽しんでねってメッセージを受け取った感じがしました。


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第11回円空大賞展 岐阜県美術館

2023年02月08日 | 【映画・ドラマ・演劇】
本日の美術展レビューは、岐阜県美術館で開催中の第11回円空大賞展です。
円空大賞展は、美濃で生まれた江戸時代の修行僧で全国を行脚しながら神仏像を彫り続けた円空にちなみ2年に一度土着の伝統に根ざした独創的な芸術家を「円空大賞」として顕彰する展覧会です。
 
本年が11回目のた展覧会となる本展ですが、今回は10回目の節目から新たな息吹を感じる五人の芸術家による展覧会となっています。館内のエントランスの上空には今回大賞を受賞したテキスタイルデザイナー・須藤玲子による「こいのぼりなう!」のタイトルのカラフルで独創的な鯉のぼりが舞っています。また会場内には「布の迷路」と題したオーロラを連想さえる乳白色の布が降り注いでいます。

 
会場入り口に入ると現代陶芸家・中島晴美の藍と白のコントラスト印象的な水玉のオブジェが配置され、その数は32個にも及び摩訶不思議な空間が広がっています。

会場中央には、イギリス人彫刻家・デヴィッド・ナッシュの木造のオブジェが鎮座し、自然の森を想像する空間があり、相反するように現代芸術家・三島喜美代による白い紙に刷られた赤い文字の陶の破片に散りばめられ、海に捨てられたゴミのような浮遊感を持ちます。環境問題をテーマに活躍する作家の真骨頂ともいえる表現です。

会場出口へと誘うように僕が愛する作家のひとり現代彫刻家・船越桂の6体並び、その作品は1990年代から現在に至る幻想的でうつろな眼差しの半身像が観る人を心地よくさせてくれます。
今回の円空大賞展は作家の持つ思想的な表現が色濃く反映された展覧会ではないかと思います。また、会場の各所に展示された6体の円空仏もタイトルの「共鳴ー継承と創造ー」にふさわしい演出でした。


20年の歴史を刻む「円空大賞展」さらなる歴史を刻みながら、どのような変化を遂げていくか楽しみな展覧会です。会期は3月5日まで流浪の旅の中で刻み続けた円空の慈愛の世界と共に共鳴する芸術家たちの独創的な世界をぜひ楽しんでみてください。


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