昨日、久々にMっつが出張ついでに顔を出してくれて、いっしょにFくんも来た。
この二人が来ると必ず、面白い本はないかという話になるわけで、ポール・コリアー『エクソダス 移民は世界をどう変えつつあるか』(みすず書房)、アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』(岩波書店)、高木徹『ドキュメント戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』(講談社文庫)、渡辺努『物価とは何か』(講談社選書メチエ)、外山恒一『政治活動入門』(百万年書房)、レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)などの話をしました。ついでに、検定と効果量についてのプチ講義(笑)をしたり。
こういう話ができる卒業生が何人もいるのだから、うちのレベルは捨てたものではないと心底思う。
以下は、本が手元になくて見せられなかった、レジー『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』(集英社新書)の第1章の冒頭部分。
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現代の「教養あるビジネスパーソン」像
まずは、夏目漱石、司馬遼太郎、村上春樹、三島由紀夫。このあたりを全部読まなくてもいいのですが、一冊も読んだことがないとなると「さすがにどうなの?」と思われます。好きか嫌いかはどうでもいい。むしろ、嫌いでもいい。まずは、読んでみる。 ただそれだけなので今からでもできます。そういうある種の一般教養のほうが、小手先のスキルよりも大切なのです。パソコンでいうと「OS」みたいな部分だからです。(田端信太郎『これからの会社員の教科書』)
いくらかの挑発的なトーンを含んだこの一節は、リクルート、LINE、ZOZOなどで要職を務めてきた田端信太郎が「これからの時代に会社員がどう生きていくべきかをまとめた」書籍『これからの会社員の教科書』(二〇一九年)からの引用である。該当部分は同書の「『社交スキル』は一生モノの武器になる」という章に記されており、その手前には音楽ユニットのフリッパーズ・ギターについて知っていた大学生に面接で高評価を与える描写がある。
小山田圭吾と小沢健二の二人からなるフリッパーズ・ギターは「渋谷系」と称される九〇年代の音楽のムーブメントに大きな影響を与えたユニットで、一九八七年から一九九一年にかけて活動していた。このエピソードは「5年くらい前」の話とのことなので、二〇一四年ごろの大学生が彼らのことを知っていたとしたら「古いものをよく知っている」 部類に入るだろう。学業や専門的なスキルではなく過去のポップカルチャーにたまたま明るかったことを採用の決め手にする意思決定について、田端は以下のように解説している。
これを「一般教養」というのか「人間力」というのかわかりませんが、ビジネスの場面では案外そういうものがものを言います。(同前)
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少しわかりにくいかもしれないけれど、『ファスト教養』のなかで『これからの会社員の教科書』(こちらは未読。というか、読むことはないでしょう)が引用されている部分です。
これはね…ほんとに世界がひっくり返るような衝撃でした。自分がどれだけ歳をとったのか、わかっていなかったんだなあと。
「司馬遼を読んでおくと就活で有利なんだってさ」とか言いながら、ゼミ室に『坂の上の雲』を揃えたりしたこともあったけど、なんだ渋谷系の話でよかったのか!
来年度の教養ゼミは「東京物語」や「七人の侍」ではなく、「テスタメント」と「THE BAND OF 20TH CENTURY」で決まりだな。
(念のため書いておくけれど、ふざけてますよ)