プロジェクト○川

学生に本を読んでもらおうという,ただそれだけのはずでした

フェイクすれすれ?+

2017年11月30日 | つぶやき
こんなニュースが流れている。

「来年度の税収が58兆円を超える見通しとなった。これは27年ぶりの高水準で、バブル期に並ぶことになる」(日テレNEWS24)http://www.news24.jp/articles/2017/11/29/06379184.html

バブル期以来の?
ちょっと待った。だって、あまり大きく報道されなかったけれど、去年の税収は下がったのだ。

「財務省が5日発表した2016年度の国の決算によると、税収は前年度比で8千億円減り55兆4686億円となった。7年ぶりのマイナスで、当初見込んでいた税収からは2.1兆円下振れした」(日経、2017年7月5日)https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS05H35_V00C17A7EE8000/

で、上の日テレNEWSの記事には「今年度(2017年度のこと)の税収は57兆7120億円と見込まれていて」と出てくるんだけど、その2017年度の税収は、こんなふうに「見通されて」いた。

「国の税収が2017年度に62.6兆円と過去最大に上る見通しであることが20日、わかった。財務省が、年率3%の高成長を実現した場合の試算として、16年度予算審議にあわせ国会に提出する」(ロイター、2016年1月20日)
https://jp.reuters.com/article/tax-17-idJPKCN0UY069

2年前の財務省の見通しと比較すると、実際の税収は5兆円ほど少ない。予定(?)ではバブル期なんかとっくに超えているはずだった。

これを一通り見たあとで、政府の「見通し」があてになると考える人はあまりいないのではなかろうか。

「来年度の税収がバブル期に並ぶ…」というニュースを見た人のなかには、「おお、経済はうまくいっているな」と思う人も多いだろう。

ミスリーディングを誘うという意味で、このニュースはフェイクすれすれだと、僕には思える。

—————
(追記)
29日の日経にも「税収、来年度バブル期並み」という見出しで載ってました。ただ、記事を最後まで読むと、2016年は見通しが外れて下方修正になったことがきちんと書かれている。

このあたりは日経の「ずるい」ところで、景気にマイナスになるニュースは控えめに報道するんだよね、日経って。まあ、立ち位置も含めて、適切なのかもしれないけれど…、。

株価の話なんかでも、やけに景気のいい話がまず続いて、おやおやと思いながら読んでいくと、最後に「官製相場だってことはわかってますよ」とアリバイ的な記述があったりして(なので、日経の記事だけは最後まで読むことを強くお勧めします)。


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話が違うこと

2017年11月29日 | つぶやき
今日は日馬富士の引退で話が持ちきりだろか。

そりゃあ誰だって、「ビール瓶で殴った」という最初の報道が出たときは、進退がどうこうではなく警察が扱うべき話だと思ったでしょう。

でもあとから「あれは誤報だったのか」と思わせるような情報が流れだし、貴乃花親方は怪しいという「空気」を作ろうとしているメディアもあるように見えた。

結局こうなったということは、シンプルな結論が出たということなのかね。

ただ、相撲の話は(失礼ながら)ファン以外にはどうでもいいでしょう。こっちの「話が違う」の方がずっと大事。

https://mainichi.jp/articles/20171129/mog/00m/040/002000c

「子どもを連れて議場に」というニュースの続報(毎日新聞)。

このご本人のインタビューを読むと、最初の報じられ方とはだいぶ話が違う。
僕が見た当初の記事には、議員側から事前の相談はなかったと書いてあった(と記憶している)。

--子供を連れて本会議に出席できないと分かっていましたか。

事前に会議規則を読み込み、できないルールがないと調べていた。

--傍聴人規則には「傍聴人は会議中いかなる理由があっても議場に入ることはできない」とあります。

傍聴人が誰とは書いていない。事務局が乳児を傍聴人とみなしただけ。誰を傍聴人とするかははっきり書かれていない。


これを屁理屈だと言う人もいるだろう。

でも、同じ人が普段「グローバル」とか「国際化」とか言っていたり、「ガラパゴス」がどうこうと否定的な文脈で話していたりするなら、それは(控えめに言っても)ダブルスタンダードってことになるんじゃないかな。

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何事もそのまま鵜呑みにせずに、感情的な反応をいったん止めて、最低限の疑いは留保しながら受け止める。

フェイクニュースがどうこうという以前の問題として、僕らの側にそのくらいの資質が求められるということか。ハードル高いなあ…。
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講演会

2017年11月20日 | つぶやき
お知らせをいただいたので貼っておきます。

10月23日収録「挑戦―前文科省事務次官・前川喜平が語る教育」
<配信日時>
2017年11月21日(火)19:00~21:27
<視聴URL>
IWJ北海道チャンネル
http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=hokkaido1

『財界さっぽろ』で「"言いたい放題70分"」と報じられている講演ですね。

僕は聞きにいってました。すごく面白いですよ。
「前川って人は嘘つきなんだろう」とか思っている人こそ、ぜひ。

後日、アーカイブでも見られるようになるそうです。
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獣医師の年収+

2017年11月10日 | つぶやき
加計学園が留学生枠を設けていて、韓国で学生募集活動を行なっているという朝日の記事のなかで、「ソウルの民間教育機関のブログ」が、以下のように説明しているとある。

ブログでは「我が国と比べて日本のペット市場は10倍以上。30代の獣医師の平均年収は7千万ウォン(約700万円)に迫る大変な高収入」「韓国と主要先進国の国家試験受験や免許取得が可能」などと説明。


30代の獣医師の平均収入が700万円に近いって、本当だろうか。少し前までは、獣医は学費の割に稼ぎは…って言われていたはずだ。

いまさらこのくらいのことでは、誰も驚かないのかな。

ところで、加計の授業料はいくら(の予定)なんだろう。教員の給料はやけに高いという噂は聞くけれど。

(以下、加筆)
『財界さっぽろ』12月号の「北海道の給料エトセトラ」という特集をみたら、獣医師の平均年収は600万円を少し超える程度の数字になっていました。(調査対象の)平均年齢は30代半ば。北海道の所得水準を考えると、「700万円に迫る」はおかしな数字ではないのかも。
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チャーチル

2017年11月10日 | 本の話
以下はチャーチル『第二次世界大戦4』(佐藤亮一訳、河出文庫)より。

ヒトラーが取った道は、私が案じていたよりは、われわれにとってはるかに好都合なものだった。戦争の最後の二、三か月のいかなる時点においてであれ、ヒトラーは自らイギリスに飛んで来て降伏し、「私はどう処置してもいいが、私が誤って導いた国民は救ってほしい」ということができたのだった。彼がニュールンベルグの犯罪者たちと同じ運命をたどるであろうことに、私はなんら疑いを持っていなかった。現代文明の倫理の原則は、戦争に敗れた国家の指導者は、戦勝者によって死刑に処せられるべきであると規定しているようである。これによって彼らが将来何らかの戦争において徹底的に戦うという気持になるのは確実であり、いかに多くの不必要な犠牲が出ようと、彼らにとってはなんでもなくなってしまうのだ。余分の犠牲を払うのは、戦争をはじめるにも終えるにも、ほとんどなんの発言もできない国民大衆である。ローマ人は反対の原則に従った。彼らの制服はその勇敢な行為と同様、その寛大さに負うものであった。

序文(第1巻)には、このあまりにも有名な一節がある。

ある日、ルーズベルト大統領は私に対して、こんどの戦争をなんと呼ぶべきかについて、一般の意見を求めていると言った。私は即座に「無益の戦争」と答えた。全大戦の戦火を免れて、世界の残されていたものを破壊しつくしたこんどの戦争ほど、防止することが容易だった戦争はかつてなかったのだ。(中略)私は、過去に深い考慮を払うことが、来るべき日の手引きとなり、新しい世代をして過去の過りを幾らかでも是正せしめ、こうすることによって人間の必要と栄光に従い、未来の恐るべき光景の展開を抑制できることを、私は心から願っている。

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ただ、僕らにとってチャーチル(第二次世界大戦時の英首相)の教訓は、簡単に受け入れられるものばかりではない。

これは、アメリカから原爆の完成(1945年7月17日)の連絡を受けたときの記述。

このときまで、われわれは激烈な空襲と大舞台の進行とによって日本本土を攻撃すという考えを固めていた。まっとうな戦闘においてのみならず、あらゆる穴や防空壕においても、サムライの捨身精神で死ぬまで戦う日本軍の無謀な抵抗のことを、われわれは考えていた。私の心には沖縄の情景が浮かんでいた。そこでは数千名の日本人が、指揮官たちがハラキリの儀式を荘重に行った後、降伏を選ばずに一列になって手榴弾で自爆する光景であった。日本軍の抵抗を一人ずつ押え、その国土を一歩ずつ征服するには、百万のアメリカ兵の命とその半数のイギリス兵の生命を犠牲にする必要があるかもしれなかった。もしイギリス兵を日本に上陸させることができても、イギリスの犠牲はもっと多くなるかもしれなかった。なぜなら、われわれは苦悩をともにする覚悟でいたのである。いまはこの悪魔のような情景はすっかり消えてしまった。それに代わって、一、二回の激烈な衝撃のうちに全戦争が終結する光景が浮かんだ。それは実際、快く輝かしいものに思われた。私が瞬間に思い浮かべたのは、私が常にその勇気に感嘆してきた日本人が、このほとんど超自然的な兵器の出現のなかに彼らの名誉を救う口実を見出し、最後の一人まで戦って戦死するという義務から免れるだろうということだった。

(中略)

一、二度の爆発の犠牲によって圧倒的な力を顕示し、それによってぼう大な無制限の殺戮を回避し、戦争を終わらせ、世界に平和をもたらし、苦悩する人民に治療の手を与えるということは、われわれがあらゆる労苦と危険を経験してきた後では、奇跡的な救いのように思われた。


チャーチルはこの『第二次世界大戦回顧録』(河出文庫の『第二次世界大戦』はこれを再編集して短くしたもの。それでも厚めの文庫本4冊)を中心とする著作活動で、1953年にノーベル文学賞を受賞している。

まずは思考を止めないこと、かな。難しいけれど。
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あなた方は2番手

2017年11月09日 | つぶやき
Yahoo!ニュースに載ってたビジネスインサイダーの記事から。

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安倍首相との関係は、「稀なもの」ではあっても、「最高」ではない。 安倍首相がいくら努力しても、合同記者会見での日本経済に関するトランプ氏の発言は、一瞬にして両者の「上下」関係を浮き立たせた。

「日本人は、健全だ。都市は繁栄している。そして、世界でも最も強靭な経済の一つとなるものを築いた。しかし、(安倍首相の方を向いて)日本経済は、米経済ほどではない。そうではないと自分は思う。そうだろ(OK)? そして、アメリカはその状態を保つことに努力する。あなた方は、2番手であり続ける」

オーストラリアのABCニュースは、この場面について、「トランプ氏は、いじめっ子のようにみえた。安倍氏は、微笑んでごまかすしかなかった」と書いた。
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Bloomberg には同じ場面がこう出ている。
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After complimenting the strength of Japan’s economy, Trump went on to say, "I don’t know if it’s as good as ours. I think not. OK? We’re going to try to keep it that way. And you’ll be second."

Abe grinned slightly, but it was an awkward moment after a trip in which the two men went out of their way to call each other friends and stress the bonds between the two allies, which both men said were the strongest ever.
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少なくとも、トランプ発言の翻訳は適切だとわかる。

属国の地位を固めるのが国益だと…これでいいのかね。

どうして右寄りの人が彼を支持するのか、訳がわからん(いや、まあわかるんだけど)。
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新しくて明確な動機

2017年11月07日 | 本の話
読みかけの本から。

近隣社会への襲撃は、より広い領地を求めること、もしくはより多くのメスを求めることが当初の目的だったが、一度闘争がはじまると、当初の目的は薄れ、永遠につづく戦いが展開される。闘争がはじまってしまえば、近隣の民を殺すための新しくて明確な動機が生まれる。殺される前に殺せ、だ。
(ジュディス・リッチ・ハリス『子育ての大誤解(上)』、ハヤカワノンフィクション文庫、p.220)

チンパンジーの話です。
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良い規制

2017年11月06日 | つぶやき
2日の朝日新聞に載っていた話。

人名用漢字の改定作業に携わった笹原・早大教授が調べたところによると、役所に「名前に使いたい」と問い合わせがあった漢字の中に「胱」と「腥」があったそうだ。

月に光、星だけれど、「胱」は膀胱(ぼうこう)にくらいしか使わないし、「腥」の訓読みは「腥(なまぐさ)い」。

幸い、どちらも名前に使うことは認められていない。必要な規制もあるわけです。
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真理

2017年11月01日 | 本の話
ああいうことの後なので、なんかそれっぽいことを書いておこう。

真であるということは、すべての人によって偽と見なされることとは何ら矛盾しない。(フレーゲ)

(追記)
出典はマリオ・リヴィオ『神は数学者か』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)です。

どうして物理学が数学で組み立てられるのか、社会を数理モデルなんかで説明できるのか、といった「数学の不条理な有効性」を追求するという、とてもスリリングな本です。

で、結局結論はというと…自分で読む方が楽しいよ。
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