昨日,小宮山厚労相が,閣議後会見でBSE対策(国内)の見直しに言及した.アメリカ産牛肉の輸入規制も見直されそうな気配.
これらの動きに,TPP交渉への下地作りという側面があるとしたら,急速な展開もありえるように思う.
どちらも見直すこと自体はかまわないと思うのだが,タイミングは嫌な感じ.
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日本農業新聞は,農業分野以外へのTPPの影響を宣伝し始めた.農業サイド(JA)の戦略として,これは正しい.
TPPは農業以外の産業にも大きく影響を与えるから,反対したい業界や団体はたくさんあるはずだ.でも,「抵抗勢力」のレッテルを貼られることや,規制に守られている産業だと思われてしまうことを避けるために,口をつぐんでいるのだと思う.
彼らにとっては,「農業が悪者になってTPPがつぶれる」ことがもっとも都合が良いのだろう.でも,野田内閣は完全に財界と財務省(とアメリカ?)の方を向いているようだ.黙っていてはまずいでしょう・・・.
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僕はTPPにはもちろん反対です.
ただし,理由は関税撤廃よりも「ルールの統一」が怖いから.これは日本をアメリカのような国にしたいか,って話だと思う(まあ,だいぶそうなっちゃってきてはいるのだけれど・・・堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)を読んでみよう).
特に日本は,租税システムが所得の不平等をほとんど改善しないという異常な国(ゼミでは飯田泰之さんの本に出てきたでしょ).ヨーロッパ諸国との比較はもとより,「あの」アメリカよりも改善度合が低いというのだから驚く.
名大の生源寺教授が昨日の日本農業新聞で,カルドア・ヒックスの補償基準を持ち出して冷静な議論を呼びかけていたけど,政策のプラスの効果とマイナスの効果は,ひとりでに相殺されたりはしないわけで,TPPで一部のセクターが多少潤っても,マイナス効果のかなりの部分は社会で負担することになる.
日本は税の再配分効果がアメリカよりも弱いうえに,労働の流動性も低い.つまり,競争で負けてしまった場合のフォローのメカニズムが弱い.さらに,かなり長いこと,教育への公的投資も低い水準に抑えてしまっている(韓国と競争するっていうなら,まずは教育じゃないかな.お互いいろいろ問題を抱えているようではあるが).
ということで,この国にこれ以上アメリカンスタンダードを導入するのは自殺行為だと思います.判断している人たちは死なないから,他殺行為というべきかもしれない.
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ところで,昨日yahoo!に「フランスの有機食品,350兆円規模――学校や病院でも有機食広がる」という記事が出てました.
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111018-00000306-alterna-int
そんなバカな.フランス人がどれだけ有機食品が好きでも,国民一人あたり5万ユーロ(500万円以上!)も買わないって(笑).