弁当日記

ADACHIの行動記録です。 
青年海外協力隊で2006年4月からバングラデシュに2年間住んでました。

バングラデシュのニュース(2010/11/10) その2

2010年11月10日 | バングラデシュのニュース
■「途上国」=「支援対象国」なのか?援助から協働へ。ビジネスで貧困問題を解決する
 ―バングラデシュ発 現地レポート【前編】
 http://diamond.jp/articles/-/10006
 (ダイアモンド・オンライン ?2010年11月9日?)

名古屋で開催されていた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、生
態系保全目標を定めた「愛知ターゲット」と、生物資源の利用による利益
配分の枠組みを定めた「名古屋議定書」を採択し、閉幕しました。昨年、
コペンハーゲン(デンマーク)で開催された、気候変動枠組み締約国会議
(COP15)が、大きな期待を集めながらも、国際的な合意が得られなかった
ことを考えれば、この結果は前向きに評価してもよいと思います。

しかし、前回も書いた通り、国際的な環境問題の議論が、ビジネスに代表さ
れる経済問題を背景にした「先進国」vs「途上国、新興国」という図式であ
る以上、今後も利害の対立が続くことは否めません。今回のCOP10で日本政
府は、難航する協議の行き詰まり打開策として、開発途上国の生物多様性保
全に対する新たな資金支援を示すなど、「援助」という方法で対応しようと
しています。

しかし、途上国の問題は「援助」だけで解決することはできないのです。

10月29日から11月2日の5日間、私はバングラデシュを訪問してきました。バ
ングラデシュ訪問は、今年の3月に続き2度目でしたが、前回は、立教大学の
プロジェクトで提携関係にあるグラミン銀行や世界最大のNGOと言われるBRAC
など「非営利セクターとの面談」が主目的だったのに対し、今回は「ビジネ
スセクターとの面談」が目的でした。

バングラデシュと聞くと、「アジア最大の貧困国」という枕詞や、2006年に
貧困層向けに無担保、少額の融資(マイクロクレジット)を行ない、ノーベ
ル平和賞を受賞した「グラミン銀行」「ムハマド・ユヌス総裁」などを思い
浮かべる人が多いのではないでしょうか。このようなイメージから、われわ
れはとかく「バングラデシュ=途上国=支援対象国」として捉えがちです。

しかし、バングラデシュは過去5年間(2004年から2008年)平均6.2%の経済
成長を遂げており、2008年の実質経済成長率5.64%は、インドの5.68%に次
ぎ世界21位にランクされるものです。また、ゴールドマン・サックス社が、
BRICsに続く、新興経済国「ネクスト11」の1つにあげるなど、バングラデシュ
は今後も経済的成長が見込まれている国なのです。


◇現地の企業人たちが 本当は何を求めているのか?

こうした点から、今回のバングラデシュ訪問の目的は、ビジネスセクターの
人々が、「自分たちの国をどのように捉え」「ビジネスの力で何ができると
考えているのか」を調査することにありました。

バングラデシュにおける社会問題解決の取り組みについては、ビジネスセク
ターよりも、非営利セクターのほうが先行しています。その代表的な存在で
あるグラミン銀行は、これまで行なっていたマイクロクレジットの仕組みに
加え、農村部の貧困層自立のため、先進国の企業とともに、雇用創出型の
「ソーシャルビジネス」を提唱しています。

世界的には、フランスの食品メーカーであるダノンが、ヨーグルトを製造販
売するグラミン・ダノンを設立し、貧困層の栄養改善や、農村部においてヨー
グルトの販売員という雇用を創出していることが知られています。

また、日本企業においても、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、
バングラデシュで製造した衣料をグラミン銀行のマイクロクレジットの借り
手である農村部の貧困層の女性を通じて販売する「グラミン・ユニクロ」の
設立を今年の7月に発表しています。

こうした先進国企業との取り組みは、短期間に技術やノウハウを吸収するう
えで、確かに有効な手法であると思います。しかし、これらのプロジェクト
は決して内発的なものではなく、先進国企業の経営動向や経済状況に左右さ
れることは、どうしても否めません。

今回、私がビジネスセクターとの面談にこだわったのは、「これだけの経済
成長を遂げているのであれば、バングラデシュの国内企業(ビジネスセクター)
においても何か考えるべきではないか」、また、「(先進国企業よりも)国
内企業が行動を起こす方が、より内発的な発展に繋がっていくのではないか」
と考えたからなのです。

◇かつての日本に見られた志高き起業家魂がそこに

今回のバングラデシュ訪問では、現地の縫製会社、職業訓練会社、革製品製
造会社、投資会社などの代表者と面談する機会に恵まれましたが、皆、非常
に高い志を持っていることに驚かされました。

それぞれがビジネスで成功を収めているバングラデシュ人でしたが、共通し
ている点がいくつか見受けられました。それは、

(1)政府に期待していない(もちろん、アテにもしていない)
 ・汚職等の問題があり、期待も当てにもしていないが、連携できる部分は、
  是々非々で対応する

(2)ビジネスの力が国を変える原動力になると信じている
 ・自らのビジネスの成功が、国にも大きな利益をもたらすと考えている

(3)自分の子息を欧米の有名大学に進学させている(日本の大学ではない)
 ・後継者として、世界的視野を持てるよう、教育している

(4)鉱物資源こそないが、「人的資源」が自国の資源と考えており、人材
  育成、教育活動に尽力している
 ・世界に通用する私立大学を設立するため、ビジネスで得た資金での財団
  創設や、日本の高専にあたる専門学校を設立するなど、自らの成功で得
  た資金を次世代に投資する活動を行っている

(5)日本人に対して、親近感を持っている
 ・アジアの先進国として、尊敬している

ということでした。インタビューをしながら、明治維新の志士達のような雰
囲気や、戦後の日本の成長を支えてきた松下幸之助、盛田昭夫、本田宗一郎
などの起業家魂を感じました。


◇「支援」ではなく「協働」。日本企業のこだわりを生かす

こうしたバングラデシュのビジネス界の人々と話をするなかで、私はバング
ラデシュを単に「援助の対象国」として見るべきではないと思ったのです。
むしろ逆に、閉塞感漂う日本こそ、こうした成長しつつある国から学ぶべき
ではないかと強く感じました。

今回面談したバングラデシュの企業家たちは、日本企業との合弁を含めた
「協働」を強く希望していました。日本人は、バングラデシュの企業は資金
的な支援を求めていると考えがちですが、決してそうではありません。既に
成長段階にあるバングラデシュの企業は、資金的には銀行の支援を含めて問
題はなく、むしろ技術やノウハウ、人の輪(ネットワーク)を求めていたの
です。

面談した企業のなかには、既に日本企業と合弁事業を始めた企業がありまし
たが、彼らに日本企業と実際付き合ってみて感じたことを尋ねたところ、欧
米の企業と比べて品質管理の徹底ぶりが予想以上で驚いたことや、実践より
も準備に多くの時間をかけることなどをあげていました。しかし、こうした
ことさえも、欧米企業との違い、日本企業のこだわりとして、好意的に受け
止めていたことがとても印象的でした。

また、現地に進出している日本企業2社の代表者とも面談する機会がありま
した。両社とも世界中に工場を展開している国際的企業でしたが、途上国進
出に不可欠な要素として、ともに「現地化」と「社員教育」をあげていたの
が印象に残りました。

「現地化」とは即ち、進出当初こそ日本人がマネジメントする体制を取るも
のの、いずれ現地の人に任せられるようにすることや、現地の企業として、
農村部でのフリーメディカルサービスやトイレをつくる活動、学校をつくる
活動など、利益を現地に還元する取り組みを行なうことをあげていました。

また、「社員教育」については、中国と比べるとまだまだ技術的に劣ってい
る点を指摘しつつも、バングラデシュ人の手先の器用さを評価し、訓練さえ
積めば必ずキャッチアップできるとして重点項目にあげていました。

◇「ビジネス」がもたらす 途上国開発の可能性

米国のNGO、リザルツ教育基金は、貧困削減のためにグラミン銀行など非営
利セクターが行なうマイクロクレジットの効用として、以下の4点をあげて
います。

(1)貧困の克服
(2)尊厳の確立
(3)持続性
(4)支援者の鼓舞

しかし、このことは先に紹介したバングラデシュの企業やバングラデシュに
進出する日本企業のインタビューからも明らかなように、グラミン銀行のよ
うな非営利セクターのみならず、ビジネスセクターでも対応可能なものなの
です。つまり、

(1)貧困の克服
 ・ビジネスによる新たな雇用の創出や、経済的発展により、貧困を克服し
  ていく

(2)尊厳の確立
 ・教育機関の充実や、職能訓練により自信を与え、希望を見出してもらう

(3)持続性
 ・持続性は、そもそもビジネスの前提要件である

(4)支援者の鼓舞
 ・社内教育や、経験によるキャリアアップ等、モチベーションを向上させる

 ということです。

グラミン銀行のような非営利セクターが、ビジネスのノウハウを頼りにする
一方、バングラデシュのビジネスセクターの成功者たちも、自国の未来のた
めに大学や職能訓練学校の設立などを通じて、自らの成功で得た資金を次世
代に投資する活動を行なっています。

このように、貧困削減という、ひとつの目的に対してさまざまなアプローチ
があってもいいはずです。もちろん、政府がODAなどを通じて途上国支援を
行なうことは、確かにまだまだ必要なことかもしれません。しかし、開発途
上国には、資金的な「援助」ではなく、技術、ノウハウ、人の輪(ネットワー
ク)という点で、日本企業との「協働」を望む企業が存在しています。

ビジネスが持続性を前提とするものである以上、私はビジネスベースで開発
途上国と「協働」することのほうが、「援助」よりもより確実で大きな成果
を上げることができると思うのです。

次回は、【後編】として、「開発途上国でビジネスを始めるための仕組みづ
くり」についてお話ししたいと思います。

【参考文献等】
・「バングラデシュ“投資環境と市場動向”」、
 JETRO・ダッカ事務所作成、2010年6月
・「ヴィレッジフォン」、
 佐藤彰男・I.U.チョドリ・坂本真司・鳩貝耕一【著】、
 御茶の水書房、2010年6月
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