週末に帰ってくるカミさんは、昨日オレが弘前から帰ってきたときにはすでに家にいた。
「温泉入ってきた」というと「いいなぁ」というので「それならば」と、近場で、やはりサウナのある温泉で、ここがポイント、週末でも混んでなさそうな温泉を探す。と、何度か行ったことはあるが、サウナの印象はあまりなかった「狐洞温泉」に行き着く。
ここは昔プールもあったのだが、しばらく前からは温泉と食堂くらいの営業。露天はないが、源泉45℃なので、加水も加温もない掛け流しである。というわけで、二日連続の温泉となった。
かなり広い湯船に腰を落ち着け、風に揺れる木々や、立ち上る湯気などぼんやりと見ていたのだが、洗い場に個性的な髪型のおやじがいる。
「ああ、クリおやじみたいな髪型だなぁ」
クリおやじとは、90年代に上田あたりから肴町までをテリトリーとして出没していたおやじで、何かイベントがあるとカメラを携えやってきて、お気に入りの女子の写真を撮るという、今だと問題になりそうなおやじである。移動手段は自転車で、よく筒状のモノを小脇に抱えてあちこちで目撃されていた。そのおやじは、名前の通り、後ろから見るとクリみたいな髪型をしていた。後頭部は耳のラインあたりから下を剃ってあり、頭頂部にかけて髪を残しているのだ。で、まあ、その洗い場の後頭部がクリおやじみたいだったのである。
そういえばオレも話しかけられたことあったなぁ、とか、クリおやじが本屋で立ち読みしていたのを目撃した千春さんは、何読んでんだろう? とこっそりのぞいてみたら「ヘアカタログ」を読んでいた、とか、そんなことを思い出しながら、ぼんやり洗い場のクリおやじ似の後頭部をぼんやり眺めていた。そのおやじは、後頭部から頭頂部にかけて残した髪もだいぶ薄くなっていて、Wとnを組み合わせたような線状に髪が残っていた。
まあ最近は目撃もしなくなっていて、当時でも60過ぎくらいだろうから今なら80にはなっているだろう。・・・わりと見た目近い年齢だ。
するとそのおやじは、後頭部をT字カミソリで剃り始めた。鏡で見ているわけでもないのでフリーハンドである。
その、えーと、Wとnを組み合わせたような線で髪を残すために後頭部を剃っている? もう目は釘付けである。
後頭部を剃り、顔を剃り、あげくなんか下腹部を剃り始めたような動きをしている。ん? 一体どこまでどんな風に剃ってんだ?
湯船でぎりぎりまで暖まってしまった。とりあえず水風呂に移動しながらも年老いたクリおやじ似を横目でチラチラと眺める。水風呂はなかなか冷たくて足がちょっとしびれるくらいである。
で今度はサウナに移動した。さよなら年老いたクリおやじ似よ。多分他人のそら似だろう。
で、サウナに入っていると
・・・入ってきた! その年老いたクリおやじ似が! オレの斜め前あたりにこっちを向いて座る。何となく彼もオレをチラチラと見ているような気がする、あくまでも気がするだけだが。
だって、当時移動手段が自転車のクリおやじが、滝沢の温泉に来ているはずがない。それに生きているかどうかもわからない。
むう・・・似ているような気がしてきた。
結局、話しかけも話しかけられもしなかったので真相は謎である。しかし別人だとしても、髪型と、行動、雰囲気がクリおやじを彷彿とさせる。久しぶりにネタだな、と思った次第。
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