オカンとワンコ

過去と他人は変えられない 自分と未来は変えられる

「此の世の果ての殺人」

2023年01月18日 22時14分34秒 | 読書
江戸川乱歩賞受賞の「此の世の果ての殺人」荒木あかね著を読了。
このところ、江戸物ばかり読んでいたので、
久しぶりのミステリーです。


物語の始まりは2022年12月30日。
6才下の弟と二人暮らしのハルちゃんは自動車学校に通っている。
家族のことを先生に聞かれて
「母は逃げ出し、父は一昨日自殺し遺体はまだ家にあるた」
と、教習車中で話している。
埋めるのを手伝おうかと言われるが断るハルちゃんです。

今日は山道教習でダムに向かっている。
どんどん狭くなる山道。
異臭に気付くと、目の前に枝にぶら下がった物体と遭遇。
道から外れて少し奥には無数の……。
ここは奥地自殺の現場だった。



と、まぁ、仰け反りそうな始まりでしてね。
うへ〜!
臭ってきそう!
しばらく本を閉じましたよ。
それでも長く予約待ちしたのだからと気を取り直して、
再び読み始めたらあとは一気に読了でした。

2023年3月7日に熊本県阿蘇郡に小惑星が降ってくると発表があって、世界は大混乱に陥った。
外国へ、でなければ少しでも遠くへと逃げ出す人々と、自ら命を断つ人々。
ガス電気水道の機能は停止しており、
人が居なくなった町はガランとしている。

町に残ったハルちゃんはその日を迎える場所を決めており、
そこへに行くために運転を習っているのです。
無免許運転したって、もう誰も咎める機能は無くなっておるのに、です。

さて、山道教習の翌日。
高速教習に出かけようとして車の異臭に気付く。
トランクを開けると女性の遺体があった。
これは自殺ではなく他殺体だから調べなくてはいけないと、
元刑事の先生とハルちゃんの捜査が始まるのです。
警察の機能もほぼ停止しているのに、です。

捜査(?)の途中で遭遇するのは、
様々な事情で町に留まった人々と、
彼らのために留まって医療を続ける医師。
残留村と称して助け合いながら暮らす人々。
この町ではひき逃げ事故が多発しており、何故か被害者は連れ去られている。
この事件がトランクの遺体と繋がっているかもしれない、と考える元刑事の先生。
捜査の経過と犯人が解ってからのハラハラ感ったら!

かすかな電波を求めて高い所に上がったり、
スマホの充電の苦労や生活水の確保など、
事件とは別に今の暮らしを振り返って考えてしまった。
自分はどうするのかをね。
それは置いといても、ひたすら面白かったです。