テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

イン・ハー・シューズ

2007-11-24 | ドラマ
(2005/カーティス・ハンソン監督/キャメロン・ディアス、トニ・コレット、シャーリー・マクレーン、マーク・フォイアスタイン/131分)


 娘がレンタルしてきたモノをお先に鑑賞。
 確かキャメロン・ディアスがシリアスな演技に新境地を開いたとして話題になっていた映画で、監督が97年の名作「L.A.コンフィデンシャル」を作ったカーティス・ハンソンでもあり、予定リストには入っておりましたが、思わぬルートで観ることになりました。

*

 フィラデルフィアに住むある姉妹の話。ハッキリとは出てこないが、妹は20代半ば、姉は30歳前後といった所でしょうか。
 法律事務所に勤めている姉のローズ(コレット)は、子供の頃から真面目で成績優秀。マンションで一人暮らしをしているが、ちょっぴり太めの体型を本人も気にしていて、彼氏いない歴ン十年である。
 一方の妹マギーは“落ちこぼれ学級”の常連で、高校卒業後もファーストフード店、ジーンズショップ、スーパーなどで店員として勤めるも長続きせず、未だに実家を離れられない。遊ぶことには目がないのでお金は必要。そんな時には親のモノをくすねるか、ナイスバディを利用して近寄ってくる男からせしめるのである。

 マギーが高校の同窓会でしこたま酔っぱらい、男とトイレでふしだらな行為に及んでいる頃、ローズはかねてからの憧れの上司とついにベッドインする。深夜、隣で寝息をたてている男を眺めながらローズが感慨に耽っていると、酔いつぶれたマギーを引き取りに来いという電話が入る。
 マギーを実家に送り届けると、出てきた母親は、だらしない人間は居て欲しくないからこの家から出て行けと言う。実はこの女性は父親の後妻で、ローズとマギーの母親はマギーが6歳の頃に亡くなっていたのだ。

 マギーは姉のマンションに居候の身となるが、部屋は散らかし放題、ローズが出張の間に駐車違反をして車を使えなくしてしまうので、ついにローズにも出て行けと言われる。
 ローズが残業をしている頃、マギーが部屋の片付けをしているとローズの彼氏が尋ねてくる。腹いせにセクシーな肢体を彼氏に見せつけるマギー。帰宅後、あられもない二人の行為を目にすることになったローズは、『あたしの人生から消えて!』とマギーを追い出し、彼氏とも別れることになるのだった。

 行く宛の無くなったマギーが実家を訪れ、いつものように父親の部屋でお金を探していると、机の中から彼女宛の手紙の束を見つける。それは、亡くなったと思っていた母方の祖母からのものだった。誕生日やクリスマスなどに、お金を添えて届けられた手紙。何故、父親は隠していたのか。
 マギーは手紙の住所、フロリダの老人施設を訪ねるのだった・・・。

*

 女性の原作者(ジェニファー・ウェイナー)で、脚本も女性(スザンナ・グラント=「エリン・ブロコビッチ(2000)」でアカデミー賞にノミネート)。少々長尺ではありますが、余計な回り道、寄り道のエピソードはなく、キッチリと構成された上手い本でした。

 姉妹の祖母、エラに扮するのはシャーリー・マクレーン。「潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ」の時と同じマイアミの住人の役で、今回の方がドラマ的には重要な人物。老人施設では若い方に入り、他の入居者の色々なお世話もしている女性でした。
 マギーの怠惰な生き方も、(ただお金が欲しかっただけという)会いに来た目的も見透かした上で、亡き娘の代わりに孫を正常なレールに乗せようとするお祖母ちゃん。彼女とマギー、そしてやがて訪れるローズとの再会により、姉妹の母親の死の真相、父親と祖母との疎遠の訳などが明らかになっていきます。

 エラの勧めにより渋々介護の仕事を始めたマギーは、目の不自由な男性の世話をする内に、元大学教授だというその老人から“読書障害”を治してもらい人生にも前向きになる。
 法律事務所を辞めたローズにも新しい恋が訪れる。しかし、彼にマギーのことが話せずに婚約解消の危機も訪れる。ふつつかだがローズにとっては大事な妹。ケンカはしても“人生から消す”訳にはいかないのだ。

 ローズの知らないところでマギーは変わっていってるわけで、その後のハッピーエンドは予定通りですが、フロリダでのマギーやエラを取り巻く老人達のあれこれ、ローズと彼氏との葛藤、ローズと継母のトラブル、そして父親とエラとの関係など様々な人生の機微が軽いタッチで、しかし真摯に描かれた佳品でした。

*

 まだまだ元気なシャーリー・マクレーンは、コレで何回目かのゴールデン・グローブ助演女優賞ノミネート。キャメロン・ディアスは、ちょっと棘のある軽薄娘が確かに新境地といいたい演技。トニ・コレットさんは、あまり馴染みがないですが、見た目通りの演技派のようです。

 尚、製作にはリドリー・スコットトニー・スコット兄弟も名を連ねており、カメラは「アメリカン・スプレンダー(2003)」のテリー・ステイシー、編集は「サイダーハウス・ルール(1999)」のリサ・ゼノ・チャージンでした。





[追記:11.27]
 原題の【IN HER SHOES】とは『彼女の身になって』という慣用句だそうで、ローズの靴を勝手に履いたマギーに対しての洒落になっています。
 6歳の妹の身になって、親の問題を隠してきた姉の思いやりが明らかになる終盤のエピソードには「レインマン」を思い出しましたね。

・お薦め度【★★★★=ちょっと長いけど、友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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6 コメント

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トニ・コレットさんは、あまり馴染みがないですが・・・ (viva jiji)
2007-11-25 17:21:15
っと、おっしゃますが、十瑠さん。^^
トニの出演作品、この際、ぜひ、観て観て!
彼女の出てるのあんまりヘンチクリンなの無いよ。

特に
「シックス・センス」でしょ、
「コニー&カーラ」でしょ、
「めぐりあう時間たち」でしょ、
・・・
え~と、え~と、
十瑠さん向きなの、あるっ!

 「リトル・ミス・サンシャイン」!!

絶対っ!これっ!気に入るってば!♪
・・・・
さっき、回転寿司、食べてきたし~(笑)
(あっ、なんも脈絡に無関係でしゅ。)(--)^^

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「めぐりあう時間たち」は・・・ (十瑠)
2007-11-25 20:32:29
観てるんですが、トニさんは忘れてますね。
「シックス・センス」はオカピーさんの“禁じ手”情報であんまり観る気はないし。だって「サイン」も馬鹿みたいだったし。

「リトル・ミス・サンシャイン」は、アラン・アーキンが“シェクスピア”のジュディ・デンチばりに、美味しい役どころでオスカーを獲った映画ですね。
ロード・ムービーだし、ハートフル・コメディ云々・・・。

>十瑠さん向きなの

 そして
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●米ならぬトラコメ有難うござます。 (オカピー)
2007-11-26 02:26:54
>トニ・コレット
安定した演技力と、芸達者ぶりでなかなか結構な女優さんですね。
名前を覚えたのは母国豪州で出演した「ミュリエルの結婚」でした。役の為に太ったと聞きましたよ。

>シックス・センス
あははは。御免なさい。
禁じ手は使っているけど、それなりに上手くは作っていますよ。当時はまだ素直に観られましたし。
でも、やっぱり禁じ手は禁じ手。
この一作はともかく、影響を受けた作品が出ているのが一番困ります。

>リトル・ミス・サンシャイン
WOWOWにまだ出まへんので、当方も未見。楽しみにしてますねん。
返信する
シックス・センス (viva jiji)
2007-11-26 06:00:54
観てみて、十瑠さん。

>だって「サイン」も馬鹿みたいだったし

いや~~ん、それと一緒にできないってば~(--)^^
あれが、ヒドマズ過ぎたのよ。

プロフェッサーの禁じてダメご託宣はこの際ちょっと桐の箱かなんかにしまってね、
“昼寝”などしていただいてね、ちょっくら観てみて~。
話としてもよくできているしトニはじめウィリスもいいし、
特にオスメント君無しでは到底あの雰囲気は出せないのよ~。
十瑠さんの娘さんだってきっともうご鑑賞のはずかも。

ほら~手前味噌ッコですけど(笑)私の「ロッキー」・・・
な~~~んちゅうこともあるだに~
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役の為に太った (十瑠)
2007-11-26 09:33:04
すると、このローズ役もデ・ニーロ・アプローチの賜なんですかね。(笑)

そういえば「シックス・センス」は、地上波のTVを少しだけ観たことがありましたね。
心霊関係の好きな子供も最後まで見なかった。他に見るモノがあったのでしょうか。

>それなりに上手くは作っていますよ。

覚えておきま~す。
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うちの娘 (十瑠)
2007-11-26 09:46:03
小さい頃は他の子供さんと同じで、心霊写真やらの番組があると、手で顔を隠しながら見ておりましたが、最近はそういえば見なくなりました。そんな年でもないしネ。
「シックス・センス」も見てないと思うなぁ。

彼女が一昨日借りてきたのは「マリー・アントワネット」と「ラブ・アクチュアリー」。
さてさて、観たくはあるのですが、BS録画分が置いてきぼりになっちゃう~
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