Kawolleriaへようこそ

日記・物語・エッセイ・感想その他

パチン式ねずみ捕り器を引きずり その③ 最終回

2007-03-23 06:34:58 | 物語

 小声で、鋭く、耳元で「バカ!」。
 飯田橋でドアがもったりと開く。
 ひととき。
 若い駅員がドアの閉まるのを体で防ぎながら、乗客に叫ぶ。
 「すみません。みんな降りてください。お客さんがホームの間に脚を挟まれています」。
 車内、一瞬にして、おれと彼女だけになる。
 席を空けたら座る当てなんてない。
 みんな、掛け声をかけて、ゆさゆさ車体を押している。
 らくちん、らくちん。
 このままひっくり返ったらどうしょ。
 乗客、ぞろぞろ車内へ戻ってくる。隣に同じコートの男座り、前に立っていた男も同じつり革につかまる。
 相棒と上気しながら話している。
 「いざとなると、みんな、偉いものだ」。
 駅員、ドア口で丁寧に帽子取り感謝の仕草。
 彼女「みんな降りることなんかないのよ」、おれ「おまえなんかと二度と外出しないぞ」、彼女「どこをほっつき歩いていたんだ」、再びクローが……。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿