立派に飾られた霊前でお辞儀をして引き下がり、頭を垂れている友人と目を合わせ「このたびはどうも……」などと口の中でもごもご言って部屋を出ようとして、香典を置き忘れたのに気づき、引き返した。
どうしたわけか、おれ、霊前で屈もうともせず、突っ立ったまま背広のポケットから引っ張り出した紙袋をうずたかく積まれた香典の上にぽいっと載せた。それがなんと紅白の祝儀袋だった。
一部始終を見守っていた友人・親族の視線にうろたえて、祝儀袋をひっつかむと、背広のポケットへねじ込んだ。慌てていたものだから、その時、上にあった香典のいくつかも一緒だったが、どうしようもない。
「失礼!」
走るようにして玄関へ向かう。黒い靴が無数に散らばって、川のようになって、外へ流れていた。自分のものが、どれなのか分からないまま、引っ掛かった一足を引っかけて外へ出た。むやみに大きな靴でぶかぶかで歩きづらかった。
駅への一本道を急いでいると、向かいからSがやって来た。しっかりとした足取りだった。友人はSにとっても友人なので、彼が来ても、怪しむに足りなかったが、互いに今晩の通夜の話はしなかった。
どうしたわけか、おれ、霊前で屈もうともせず、突っ立ったまま背広のポケットから引っ張り出した紙袋をうずたかく積まれた香典の上にぽいっと載せた。それがなんと紅白の祝儀袋だった。
一部始終を見守っていた友人・親族の視線にうろたえて、祝儀袋をひっつかむと、背広のポケットへねじ込んだ。慌てていたものだから、その時、上にあった香典のいくつかも一緒だったが、どうしようもない。
「失礼!」
走るようにして玄関へ向かう。黒い靴が無数に散らばって、川のようになって、外へ流れていた。自分のものが、どれなのか分からないまま、引っ掛かった一足を引っかけて外へ出た。むやみに大きな靴でぶかぶかで歩きづらかった。
駅への一本道を急いでいると、向かいからSがやって来た。しっかりとした足取りだった。友人はSにとっても友人なので、彼が来ても、怪しむに足りなかったが、互いに今晩の通夜の話はしなかった。
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