気づくと、地下のレノアの部屋にいた。しかも、青みがかった灰色の大女に抱きかかえられていた。のぞき込む女の顔の整った輪郭があらわになってくる。なんと、その女には大理石の彫像のように、目に瞳がなく石みたいになめらかであった。にっこりと微笑むと思いがけなく、柔らかな乳房を押しつけてきた。無我夢中で吸った。なんの味もなかった。ようやく、女の顔に思い当たった。小さい頃、自殺した母であった。わたしはがむしゃらに乳房を吸った。
「痛い」と抱いていた女が言った。
おれをソファに下ろすと、血の滴る右の乳房にハンカチを当てて部屋を出て行った。おれは寝かされたまま、火がついたように泣いた。去っていく女は素っ裸で、腰がくびれて尻が大きく張り出して、それはサピの後ろ姿そっくりであった。出口の奥でちょっと立ち止まると振り向いて、泣いている赤ん坊のおれに口の形で「愛している」と言って姿を消した。
どうしても泣きやむことが出来なかった。まるで自分が泣く機械になったような錯覚にとらわれた。じっさい、心底、悲しくてならなかった。しばらくすると、おれの泣き声はぴたりと止んだ。不思議なほどの心の安らぎがやってきた。すやすやと眠る自分の寝息が聞こえてきた。
やはり、夢を見ていたのだ。目覚めると体に降りかかっている細かい塵を払って立ち上がった。朝立ちのペニスを感じて苦笑した。十分眠ったせいであろう。すでに、日が落ちたらしく辺りは薄暗かった。入り口に人の気配を感じて振り向いた。
そこにレノアが立っていた。驚いて、一歩彼女に近づいた。
「やっぱり戻ってきてくれたのね」
紛れもないレノアの魅力的な眼差しだった。
「痛い」と抱いていた女が言った。
おれをソファに下ろすと、血の滴る右の乳房にハンカチを当てて部屋を出て行った。おれは寝かされたまま、火がついたように泣いた。去っていく女は素っ裸で、腰がくびれて尻が大きく張り出して、それはサピの後ろ姿そっくりであった。出口の奥でちょっと立ち止まると振り向いて、泣いている赤ん坊のおれに口の形で「愛している」と言って姿を消した。
どうしても泣きやむことが出来なかった。まるで自分が泣く機械になったような錯覚にとらわれた。じっさい、心底、悲しくてならなかった。しばらくすると、おれの泣き声はぴたりと止んだ。不思議なほどの心の安らぎがやってきた。すやすやと眠る自分の寝息が聞こえてきた。
やはり、夢を見ていたのだ。目覚めると体に降りかかっている細かい塵を払って立ち上がった。朝立ちのペニスを感じて苦笑した。十分眠ったせいであろう。すでに、日が落ちたらしく辺りは薄暗かった。入り口に人の気配を感じて振り向いた。
そこにレノアが立っていた。驚いて、一歩彼女に近づいた。
「やっぱり戻ってきてくれたのね」
紛れもないレノアの魅力的な眼差しだった。