昼休み、老父からの電話
『今日、耕運機売ったわ、2万円で・・・』
父の所有物を売ったというだけのこと、
次に会った時に、話せばいいような内容なのですが・・・
父が売った耕運機は、20年前に買い替えたもので
怪我と加齢で体が不自由になってからは、ずーっと倉庫
で眠りっぱなしだったもの
6馬力(ピンとこない)で、深く耕うんできるから、
そこらの畑用と違って、水田でも活躍したんだと
以前、自慢げに懐かしそうに話していました
私が家を継がないと諦めてから、耕運機をもらってくれる人を
探したり、中古として売れないか、あれこれ模索していたのですが、
最近は水田はトラクター、畑は小さく取り回しやすいのが
主流。そして20年経つと故障時の取り換え部品も無くなるそうで
廃品として引き取ってもらうしかない様子
それでも、自慢の耕運機、くず鉄扱いでも、少しでも高く
買って欲しいと、あちこち聞いて回ったようです
2万円・・・それが、老父自慢の耕うん機の今の価値
先祖代々受け継いできた田んぼや畑を耕し
家族を養ってきた自分の人生を象徴する道具
体の自由もだんだん利かなくなって、孤独な自分
この世での役割は終わったのか?
耕運機に自分を重ねているのかも・・・・
老父からの電話の最後は、ちょっと涙声だったような・・・
わずか数分の電話でしたが、聞いているこちらも
ちょっと複雑な気持ちになるのでした