灯りを消して 部屋の中でともす
季節はずれの線香花火
たよりない灯火の中に
精一杯の微笑をたたえた君がいた
白い息と
温かいミルクティーと
使い古した電気ポット
ただそれだけの部屋だった
ここで君と花火をしなくなるまで
この6畳のワンルームが
こんな殺風景な部屋だと気付くことはなく
思い出したように
紅茶のティーパックに手を伸ばせば
ささくれのある中指の先には
小さく「保温」と明かりがついている
暗闇に護られていた静けさの中で
ひとくちコンロに煽られた
ステンレス製の無機質なやかんが
鼓膜に針を刺すような悲鳴を上げている
やかんのような恋はできても
電気ポットのような愛は知らない
趣味の悪いポットのくせに
いつまでたってもお湯が冷めない
君が封を切った最後の線香花火に
今夜 灯をともす