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CODE 46

2004-10-08 | 映画
監督:マイケル・ウィンターボトム イギリス 2003

この監督の劇場用長篇デビュー作『バタフライ・キス』1995は、やくざ映画みて肩いからして劇場を出るおっさんよろしく、爽快な気分で銀座シネ・ラ・セットの階段を降りたものです。内容はレズ・パンク・ロードムービーなんだけど。その後『ウェルカム・トゥ・サラエボ』1997、『ひかりのまち』1999あたりが印象深く、そして今回の初SFものの中心舞台は上海。徹底した管理社会のなかで、中国語、英語、スペイン語……いくつもの魅力的な言語を入り交えて会話するひとたち。性別国籍に続けて自然分娩か体外受精かをきかれる「内」社会。「内」と「外」の社会を越境する描きかたはあまりにベタ、でも、目覚ましや携帯電話、アルバムなど想像しうる無理のない近未来の描きかたがいい。

二人が法をやぶってまで追求する愛、あるいは遺伝子操作という「知」だかなんだかでこれまた追求する愛の賛美か。見どころはそれよりもまずサマンサ・モートンとティム・ロビンスの肌理具合が似てるなーということであります。二人はいっしょにいた時間の記憶を消されるが、それぞれ当人の頭のなかの記憶が消されるだけ。ところがここ「内」では、散在してある共通の記憶が集まって再生されることがないので、本人が知らないと言うのなら、それはなかったことになるのです。「記憶にない」がまかりとおる。ティム・ロビンスの妻もみごとに知らんぷりして、自分が思い描く旦那の腕のなかで恍惚の表情。これほどの管理社会なら、サマンサ・モートンのアルバムに残された映像だってとたんに消えてしかるべきだろとも思うけど。いったん「外」に出たひとの記憶は放っておかれて渦巻いて、荒涼とした台地にしみつく。
音楽がいい。担当したジ・フリー・アソシエイションは、デヴィッド・ホルムズとスティーブン・ヒルトンによるユニット。「ステイ・オア・ゴー」(クラッシュ)、「ウォーニング・サイン」(コールドプレイ)、「ノー・ウーマン・ノー・クライ」(ボブ・マーリィ)といった選曲も。

街頭遺伝子検査所みたいな場面が出てきてこのときの二重螺旋照合図には笑うが、二重螺旋構造解明のワトソンさんとクリックさんといっしょに1962年ノーベル医学生理学賞を受賞したモーリス・ウィルキンスさんは今月5日、87歳で亡くなったそうです。

『CODE 46』公式サイト
・梶浦秀麿さんによるウィンターボトム監督

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