対極論

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大極論61号 ヒトラーは何故英雄じゃない?

2017-02-01 21:44:46 | 時事・思考実験
どうしてヒトラーは悪党でナポレオンは英雄なの?(2ちゃん・ニュース実況+)

【お題】
何故ヒトラーが悪党でナポレオンが英雄か? 更にスターリンや毛択東が英雄視されているが何が違うのだろう?

A:
そりゃあヒトラーはユダヤ人をガス室で燻製にしちまったしなぁ…

ナポレオンは欧州統一という当時のヨーロッパの夢を具現化した訳で、むしろ最後まで抵抗したイギリスの方が欧州統一を数世紀遅らせた悪漢だろ?

スターリンや毛の否定は現代のリベラルの正当性の否定になるから、リベラル・ポリコレが強い限りは否定の声は弱いよ。

B:
ナポレオンはフランス革命から生まれた皇帝という逆説的な存在であり、まだ帝政が当たり前の時代の話。
つまりナポレオンの欧州戦争は所詮は、在来的な帝政国家の覇権行動に過ぎなく、ナポレオンの否定はそれ以前の欧州史の全否定になるから。つまりナポレオンは戦争の戦略家ではあったが、歴史的意義では良くも悪くも従来の英雄の末席に過ぎない。

一方でヒトラーはそうした覇権・権勢欲で欧州に戦火をの種を蒔いた訳ではなく、ナチズム・ファシズムという当時の欧米に広がりはじめた「正論」を具現化させる為のイデオロギー的なアクションだった訳さ。
このファシズム・ナチズムというのは、国民が自らの政治的意思で国民国家の理念を否定し国家に委ねるという思想で、
ナチズムとはその受託者を超人思想というまるで一般国民を惰弱な存在と貶め超人を崇める思想を以ってヒトラーという依代にした訳さ。
しかもナチズムは国民のレイシズムとルサンチマンを極大化させる手法でファシズムにその意思を集約させるという、起こるべくして起こった民主主義のバグなんだよね。

ルサンチマンで社会不満の耳目を集め・レイシズムで国民の分断を計り国民の中に敵を創り・そのレイシズムを正当化する「正論」で理論武装をし、民主主義国家をその国民の手により破壊させた。

有権者から理解と賛同を集め・選挙で得票を得て…その結果民主主義的に民主主義を否定する政治を選ぶ事になる。
有権者が自らの政治的意思で政党・政策を選ぶ…その当たり前の行為自体が民主主義の「セキュリティホール」な訳さ。しかもこのセキュリティホールを埋める為のパッチ自体が民主主義的に意思を民主主義システムが制限するというセキュリティホールそのものな矛盾。

だがそうした欠陥の誹りを受けようが、民主主義を守る為にはナチズムの否定という思想信条の制限をしなければ民主主義は守られないのが現実。


C:
つまり、ヒトラーというのはその行為の是々非々に関わらずに否定しなければならない存在って事?
でも、有権者に訴えて得票を得て間違った方向に政治を進める…別にナチス的な政策方向じゃなくてもありうるよね?

B:
ヒトラーが否定されねばならない動機はそうしたポピュリズムによる政権奪取と支配ともう一つ、属性による憎悪の分断の正当化にある。

名誉革命やフランス革命・更には諸国民の春によって、支配者と被支配者の関係=封建制・帝政が終わり、国家とは国民のものという近代国家に欧州諸国が変貌した時、
国民とは?というアイデンティティーの問題に直面し各国は共有する言語・文化を有する国民国家=民族国家に国家の統合アイデンティティーを求めだが、
それは同時に既に多民族国家となっていた諸国内に民族主義の分裂・葛藤の種を蒔いた訳でな。
それでも欧州諸国は国民統合の為の民族国家=国民国家と内部の民族葛藤をの折り合いを付けていたが、ナチス・ヒトラーはそうした折り合いのバランスを壊しレイシズムを扇動する事により権勢を伸ばした一方で少数弱者の属性をレイシズムの的にして抹殺しようとした訳さ。

帝政封建制時代とは、国土とは支配者の軍事的政治的支配の限界線であり、国民とは支配者の私物という意識下では、国家に於いて民族部族等は等しく価値の無いある意味の平等性が保たれていたが、近代国家・国民国家になり民族間の差別・葛藤が生まれたという皮肉だがな。

さて近代国家の矛盾・セキュリティホールである民主主義を否定する自由と、国民国家による民族抑圧・葛藤を具現化し顕在化させ証明したナチスドイツ…
そうした戦前国民国家体制の欠陥を補う術が人権と自由を否定する自由の封じ込め、そして国民国家のアイデンティティー・の解釈変更と欧州域内のボーダーレス化による帰属意識の希釈化を行いナチスを否定する事に正解を導こうとしている訳さ。

近代国家は国民国家の民族アイデンティティーで成立させざる得ない側面の一方で、国家内のマイノリティのアイデンティティー否定と国内マジョリティの強要で成り立たざる得なかった出発点をヒトラーは突いてきた訳さ。
つまり、現代でナチスの肯定は近代国家の構造そのものの矛盾を露呈してしまう事になる。


D:
じゃあ、民族国家・国民国家という政体から、アメリカみたく理念をアイデンティティー・帰属意識の国家にしてしまえば、人種差別なんかも解消する?
トランプ政権を見てたらそれもダメかな?

B:
理念=イデオロギーを国家のアイデンティティーにした人口国家ソ連はそのイデオロギーに依ってヒトラー以上の大量殺戮をしましたが?
毛率いる中華人民共和国は、漢民族の国民国家=中華民国の後継として、毛式共産イデオロギーを国家アイデンティティーとし諸民族を中華民族として糾合したが、結局は代わりに階級闘争・イデオロギー闘争という属性対立をプロパガンダとレッテル貼りで作り上げルサンチマンの標的にする事で体制を固めたという意味ではナチスとやり口は変わらない。

アメリカだって自由平等などは、欧州白人内の属性葛藤の解消を想定していただけで、異民族・異宗教の葛藤解消を想定してなかった訳で。南北戦争から公民権運動と続く中で進んできた属性対立の葛藤ですら、アメリカ白人層にとっては単なる綺麗事の建前に過ぎなかった事がトランプ政権で暴露された訳でな。

結局、理念イデオロギーによる糾合という人口国家を作っても属性葛藤は解消されないってか?
でもその事実の肯定は近代国家の否定になるからダメなんだがな。



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