『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動』
2012年2月9日(国内)発売
『GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の宇宙に収斂した選択』
2017年1月19日(国内)発売
前作をプレイしたファン達からは待望の続編ということでゲーマー界隈では今回そこそこの話題となった。俺は前作の反響すら知らずに今回初めてプレイ。ソフトを起動したまま放置を含めて20時間でスタッフロールまで行ったので実際はもっと早くクリアできたと思う。
CAPCOMの『デビルメイクライ』や『ロックマン』といったコテコテの王道アクションゲームをやってきた世代の人間としては戦闘に関してかなり物足りないというのが本音。攻略サイトや達人プレイ動画をまだ見てないのでなんとも言えないが、難しいプレイに対する報酬設定が甘いと感じた。難易度は3段階でハードまで用意されているが、キトゥンの強化が多少充実していれば正直どうとでもなる程度である。時間制限もなく逃げ場に困ることもないうえに回復アイテムが多く存在していて、ボス戦でもヒット&アウェイや投擲物の調達を地道にしていればよっぽど下手でもない限りクリアできる。GAME OVERになったところでペナルティもなく、せいぜい開始前の会話シーンやロード時間といったストレスしかないのでセーブポイントからやり直すRPGと比べたら屁でもない。
つまりは、これはアクションゲームのようでアクションゲームとは違うということだ。製作陣もアクションの楽しさに極振りしたわけではなく、風景画や世界観といった"雰囲気"に注力したように思う。ストーリーやテーマの重要性はゲームとして必須ではなくとも極めて重要だということは否定しないが、近接戦闘が好きな俺としてはもったいないなと素直に感じた。しかし、王道アクションゲームに求めるような技術への報酬設定などを諦めてしまえば、このゲームは"現実逃避"や"浸り"を喜ぶ者にとっては神ゲーとなりうる。
横画面スクロールで地面に足をつけて駆けていくゲームを筆頭に、多くは重力に対して絶対服従である。つまり3Dの映像が当たり前になっても、3次元の自由移動は当たり前ではないということである。水中ではできたかもしれないが、これほど自由な空中浮遊が可能なゲームがあっただろうか。俺は個人的に現実に存在する「素潜り(透き通った海の中の探索)」を溺愛しているのも、人間ができる3次元の移動の中でも比較的身近かつ手頃な方法だからである。重力を支配したこのゲームでは、空中を浮遊して一方的に射撃を繰り返してくるエネミーの頭より遥か上空から理不尽にも岩石や爆弾を投げつけることができる。地面に落ちたらゲームオーバーというリスクから解放されて、身軽なルナチューンでジャンプするだけもよし、重力の力でまっすぐ目的地まで"落ちる"もよし、その自由度たるや今までのゲームでは味わえない快感が得られる。
個人的には神ゲーの殿堂入りである『マリオサンシャイン(任天堂/GC)』の楽しさというのは、攻略スタイルの幅の広さにあると思っている。壁蹴りでスタイリッシュに登るもよし、わざとダメージを受けて発生した無敵時間で毒沼や溶岩を走り抜けるもよしといったような、正攻法から離れるほどに要求される技術は高まるものの、「技術に対する報酬」が独自の形で成立していて素晴らしいと思っている。繰り返すが、そういった意味でも『GRAVITY DAZE 2』はもったいないと感じる。とはいえゲームのフィールド内各所に設置されたミニゲームではオンラインでスコアを競える形になっているので報酬設定が全くされてないわけではない。しかし、昨今のオンラインゲームでは上を見れば果てしないのが常である。トップランカーであるプレイヤーのキチガイじみたプレイを見て奮闘できるプレイヤーはハードゲーマー達のさらに一部であると思うので、気持ちよくなるのが難しい。
不満を感じた点。
ストーリー終盤、キトゥンが王女になって寝室と広間を何度も行き来させられる回はかなり苦痛だった。移動以外のすべてが制限され、なにもない通路をただひたすら行ったり来たりするだけ。パズルの回もいらないと思った。『ゼルダの伝説』でも『デビルメイクライ』でもたびたびこうした謎解きステージがあるが、そういった類は他ジャンルに任せておいて良いと常々思う。そんなことを言ってしまうとだったら『地球防衛軍シリーズ』のような最初から最後までずっと銃撃戦なゲームをやってればいいだろと言われそうな気もするがw サイドミッションで重力操作を一切禁止した内容のものがあるのだが、あれもおかしな話だと思った。ジャンプと移動と格闘だけなら他のゲームでいいはずだ。わざわざこのゲームの最大の面白さである重力操作を制限してはもう何がしたいのかわからない。やり込み要素であるタリスマンの発掘だが、そもそも強力なタリスマンの需要がそんなにないというのは、然るに供給へのモチベーションもないわけで、希少ネヴィとかも全然いないし、ネヴィ狩りも地味に単調で何時間か張り付いてみたが苦行だった。キトゥンの強化アイテムが作業の副産物として蓄積するなら良かったが、ネヴィの出現量と採掘量が反比例するとかいう意味不明なシステムには改善の余地を感じた。リスクや労力に対する報酬設定が甘い。ストーリーに関しても驚くような展開がない(これは前作をやってないからかもしれないけど)。ボスの撃破が必殺技でドーン!ってまんまプリキュアとかセーラームーンやんけ。アクション好き勢の期待を汲む部分があればもっと売れるんじゃないかと感じた。完結編って言ってるから多分続編はないのだろうか。スピンオフか或いはエピソードゼロの予定があるならそういった改善を期待する。改めて考えてみると、ファンがプレイしたのと新規が今作をプレイしたのとでは評価に差が出るのかなと感じた。前作からの追加点や改善点を含めれば良作と感じる点も、新規にとってはこういう作品だと感じるのでそもそも前者と後者では比較する領域が異なってくる。つまりは前作と比べる古参と、他ゲーと比べる新規である。あ、あと瞼の痙攣どうにかならんのかね。
良いと感じた点。
前作ではなかったらしい「ルナチューン」と「ユピトールチューン」がとてつもなく良いと思った。それぞれが三竦みのように長短が均衡を保っていて良いバランスだと思った。そこで提案だが、「チューン変更なしでクリア」に対する報酬を設定し、ストーリーごとにスコアを設けてはどうだろうか。スピードクリアに価値があればプレイヤーは勝手にプレイを上達させるはずだ。そうすれば、チューンの変更タイミングも洗練されて、0.5秒のうちにチューンがめまぐるしく変更されつつ建物の間をすり抜けていくプレイみたいなものが生まれる可能性さえある。「そんな方法があったのか!」と製作陣でさえも度肝を抜くようなプレイの誕生は、良ゲーの証である。先ほども言ったが、現実逃避のツールとしては文句なしの世界観と操作感である。独特な世界観や音楽と、広大なオープンフィールドの実現(デバック作業で死人出なかったかこれw)。そしてなによりも俺を射止めた大きな要因の一つが、クロウとキトゥンの服装である。可愛さだけではないセンスにぶっちゃけかなり惹かれた。全体的に絵という要素が魅力として大きかったと思う。
総合評価。
こうして文面に起こしてみると明らかに不満点のほうが文字数多いのなw つってもソフト価格を支払うだけの価値は十分にあると思った。とにもかくにももったいない点は多いが、いろんな点を踏まえてもあの自由な操作感だけで元が取れるほど楽しい。思えば『グランツーリスモ4』で好きな車を苦労の末に手に入れた時は写真撮影やニュルブルクリンクをそこそこに走ってリプレイを延々と眺めていたりしたので、『GRAVITY DAZE 2』で撮影や散歩を楽しむ人たちを、アクション勢の思考回路で否定する気にはあまりなれない。まとめてみると、やはり自由な操作感と世界観がこのゲームの面白さであり、技術への報酬云々という話はおそらく場違いなのだろうというのが結論である。よってこのゲームは良ゲーである。
メインストーリーを一周しただけのエンジョイ勢の戯言なので、もしこれを読む人が(相変わらずいないと思うが)いれば軽くスルーしていただければと思うw
まだまだ考察の甘い部分もあるし、というかこれを書いたことによって浮き彫りになった疑問点もこれからまた追求していく次第なので、むしろレビューとしてはまだまだなのであります。アナ雪の視聴感想文も記事7つぐらい書いたしなそういえばw
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