風に祈る
風に音があるわけではない
風に色があるわけではない
風は無色透明 無味無臭
風はただ 運ぶだけ
春を 春ごと運ぶだけ
そこには においも光も乗せて
遠い 遠い道のりを
ゆったりと運ぶだけ
ぼくらがまだかまだかと
しびれを切らしていても
風は風のペースでやってくる
風にタイプがあるように
春の嵐 春のそよ風
おだやかに顔を撫でていく風
そのやさしさに 心も眠る
夏の風 燃え立つような風
海からのシーブリーズ
秋の風 去って行く人の
思い出と一緒に過ぎていく風
さびしさつのり ふるさと思う風
野分の激しさは
時に苦しく 時に爽快
心静かに瞑想していると
それら自然の風 季節の風に
そっとまじっている恩寵の風
聖霊が吹かせる風に
はたと気づくことがあるだろう
無念無想の心に静まりかえって
空(くう)の祈りを心に覚えたとき
空(くう)にはやがてひたひたと
潮のようにあげくるものがあると
粛々と満ちてくるものがあると
気づくだろう
天空を舞っていた風が そのとき
主の命に素直に従って
ぼくの顔をいつくしみ包むだろう
ぼくの目を主の愛に開くだろう
そう そのとき この耳に
風の歌が聞こえる
主に愛された風の
幸福の歌が聞こえるのだ
風は 風は 与えられた使命を
心地よく果たそうと
いっそうのやさしさを込めて
ぼくを宥恕する 心から宥恕する