思い出の不条理
思い出の中の思い出に
心が包まれるとき
思い出は優しさに崩れて
どろどろの鼻水を顔一杯に
ぶちまけるかもしれぬ
記憶が堆く積まれた そこには
木炭のような
ざらざらした暗さ
チャコールグレイの 渋さ
その明から暗へのグラデーション
暗がりの明滅が心を
傷ませる か弱いバランス
ほの明るい幸福が掠める
思い出のひらめき だが
真に思い出らしい思い出は
そこにはかけらもない
だから過去というものを
誰も信じはしない
思い出が過去と束ねられるとき
思い出の情感は形を失い
色彩をとどめない