みどりの思想
Ⅶ 悲しみの思想
悲しみが満ちてくる
きみの心に満ちてくる
きみはぼくを見つめているが
その心のすがたは
その目の中に いっぱいに
こらえきれないほどいっぱいに
あふれていて 涙している
愛は 愛は
どうして 遂げられなかった?
訊ねることもせずに
見つめている目のなかに
輝いているのは 無心の悲しみ
生きていることは それだけで
悲しみのまっただ中
喜びの笑みの奥にも
きみの悲しみがきらりと光る
こんなに愛しているのに
こんなにあなたが好きなのに
どうして わたしは悲しい?
どうして あなたは気づかない?
愛すれば愛するほど
人は悲しくなると言うことに
思えば思うほど
人はますます遠ざかっていくことに
すれ違ったのね 今日も
思いが少しずつ ずれたのね
きみは事態を理解しようとするけど
適切な答えはどこにもない
ただ きみは感じている
恋すれば恋するほど
見えなくなるものがあること
近づけば近づくほど
遠ざかるものがあること
ああ。だからもう向き合わない
もう 手に入れたいと思わない
愛の成就という喜び
だから だから わたしは
あなたのすぐ近くいることにした
あなたのそば 近すぎないそば
あなたとは肩を触れ合うだけの
一緒に歩く人になったのよ
あなたの散歩の飾り
あなたの人生の景物
そこにある喜びも悲しみも
あなたを包む わたしのラッピング
わたしの心のすべてをかけて
やさしく やさしく くるむのよ
あなたの孤独を薔薇色にして