バッハ小フーガを聞にながら
木枯らしが舞う乾いた街道の
人っ子一人いない町外れ
仔犬が一匹
自分のしっぽを追って
くるくる廻る
くるくる くるくる
空には 光り輝く雲が
ゆっくりと動いて
日の微笑みを閉ざしては
また開く その影は
雲にも 日にも 美しく
遙か地上の
仔犬の戯れを 被い包む
それは決して遊びではなく
仔犬の苦悩
仔犬の自我の空回り
冷たい風の痛みを巻き込んで
からからから 空回り
憐れみ深き天の御父
仔犬の必死を見つめておられた
追っても 追っても
つかめない自分というもの
祝福されているとは思いもよらぬ
哀しい自分というもの
仔犬はむきになり
ますますむきになり
ぐるるぐるるぐるる
歯をむき出して焦れてみる
目をとがらして力んでみる
ああ 憐れみ深き天の御父
無情の北風に 花びら散らし
雪と舞う いたわりのささやき
仔犬はふっと立ちどまり
見上げる天に雲の微笑み
真青な空に
映っているよ 愛の輝き
バッハの小フーガ=フーガ、ト短調BWV578の通称。ここではトン・コープマンのオルガン演奏を聞いています。