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カウンター・ミラーニューロン

 ミラーニューロンは、連合学習(associative learning)により形成された*01とオックスフォード大学の心理学者セシリア・ヘイズさんは説明します。連合学習は心理学の根本原理のひとつで、生体によってある二つの事象が経験されるとき、それらの時間的接近性や確率的な随伴性によって、その二つの事象を結び付けるような学習が行われる、というものです。ミラーニューロンが形成される過程では、たとえば何かを握るという行為を「見る」ときに反応する感覚ニューロンと、何かを握るという行為を「実行する」ときに活動する運動ニューロンがある場合、通常はそれぞれのニューロン同士の結合は弱いのですが、自分が何かを握ったとき、同時に、その行為を誰かが行う場面を見たような場合、この二種類のニューロンは同時に活動し、連合学習の原理によって、それらの間の結合が強まっていく、というのです。そして、やがて実際に握る行為を「実行」しなくとも、誰かが握る行為を「見る」だけで、運動ニューロンが活動するようになる、これがミラーニューロンだ*02というのです。
 
心理学者の大平英樹さんは、連合学習は、サルやヒトだけでなく,ほとんどの動物に共通する一般原理で、連合学習をする動物の種には、ミラーニューロンも存在する可能性がある*02といいます。特に群れで生活をする種など、たとえばインパラの大群が見せる協調された運動は、その一部がミラーニューロンによって制御されている可能性がある、というのです。
 
さらにこの説は、カウンター・ミラーニューロン(counter mirrorneuron)の存在を予測する*02と大平さんは指摘します。ある行為を見たときに、それとは異なる連動を表象する運動ニューロンが活動するような細胞の存在です。たとえば他者の「握る」行為を見たときに、手を「開く」行為を表象する運動ニューロンが対応して活動するとき、これをカウンター・ミラーニューロンと呼ぶことができるのではないか、というのです。実際にヒトの生活では,物を受け渡すときにこのような事象が生じています。一人が重い物を引っ張り、もう一人がタイミングをあわせて後ろから押すという場面も同様で、こうしたことが繰り返されれば、連合学習によりカウンター・ミラーニューロンが形成される可能性がある、というのです。


Neuroscience and Biobehavioral Reviews

*01:Where do mirror neurons come from?/Cecilia.HeyesNeuroscience and Biobehavioral Reviews 34 (2010) 575-583
*02:脳の中の2枚の鏡-「運動-感覚」と「内受容感覚-感情」のミラー機能/大平英樹/ミラーニューロンと〈心の理論〉/子安増生・大平英樹編/新曜社 2011.07.15

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