ファン・ミエはキム・チョルを追いかけて、
普段あまり来ない棟の中をひた走っていた。
キョロキョロ
チョルの気配を感じ続けながら、その足取りを追う。
やがてチョルは、いつも昼休みに訪れている”科学室”に到着した。
しかし・・。
ミエが追いかけて来ているのは、チョルも気がついていたのだった。
科学室には入らずに、チョルはすごい速さで違う道を行く。
バババババ!
バババッ!
タッ
そうして曲がり角を曲がったちょうどその時、ミエがフロアに到着する。
バッ!
確かに気配を感じていたのに、そこにはもう誰もいなかった。
「あれっ?どこ行った〜?」
ミエが狐につままれたようになっていた頃、
チョルは階段の下で息も絶え絶えであった。
ゼーハーゼーハー
あまりに急いで階段を駆け下りたので、
転ぶところだった らしい。
[大魔王は、しばし人生の走馬灯を味わった]
何やってんだ俺・・
ズーンと落ち込みながら、チョルはしばらくその場に座っていたのだった・・。
<言葉のように簡単でなくて>
ミエは家に帰ってから、塾に向かう準備をしていた。
チョルを追いかけていたはずなのに見失った、昼間の不思議体験を思い出しながら。
「一体何なんだろ?!塾でもう一回聞いてみよ!」
「塾で・・」
思わず「ふふ・・」と笑みが漏れてしまうのは、
塾では”知り合いヅラ”してもいいとチョルが許可してくれたからだ。
ミエは少しワクワクしながら、塾のバスに乗った。
「そして、玉ねぎの根を薄めた塩酸に浸して細胞の活動を停止させ・・」
「成長点を顕微鏡で観察すると、核の形状がそれぞれ・・」
まるで呪文のような文章をスラスラと読んでいくクラスメイト。
ミエは目をぐるぐると回しながら、一人パニックに陥っていた。
はっ
集中集中!うわあああ
いつの間にかレンタル漫画のことを考えてしまっていた・・。
脳の容量は限界値を迎え、ミエはいっぱいいっぱいのまま塾の時間を終えた。
「さようならー」
ブーン
「ただいまー」
ワンワンとムンクに迎えられ、
目まぐるしくご飯、お風呂、とこなして行ったら・・。
「あれっ??」
気がつけば・・
[1日が終わっていた]
[これが中三受験生の醍醐味なのか]
ふと我に返る時間すらなかった。
気がつけばミエはベッドに入っていたのだった。
昼休みのことを、キム・チョルに訊こうと思っていたのに・・。
そしてミエは速攻で眠りに落ちた。
中学三年生の一年は、こうして目まぐるしく流れていく・・。
第二十三話③でした。
チョルくん、昼休みの秘密基地を死守しましたね〜
涼しい顔して逃げるかと思いきや、結構必死だったww
塾から帰ってソッコー寝てしまうミエちゃんも可愛かったです
第二十三話④に続きます
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