大魔王が転校して来たー・・!
その衝撃ニュースは、瞬く間に学校中を駆け巡った。
しかしミエにとっては、彼は「単なる噂」のその先に居る存在かもしれない。
<これからはご近所さん>
[翌日の早朝、大魔・・いや転校生の家族が引っ越して来た。]
ミエは母親に連れられ、向かいの家へと出向いた。
「スンジョンちゃんママ!」
そこは去り際にミエに告ったあの少年が住んでいた家だ。
今日から新しく、この家族が住むことになる。
「あら!来てくれたの!」
「おはようございます」
「あらあら、あなたミエちゃんね!久しぶりだわぁ。可愛いわねぇ」
深々と頭を下げるミエに、スンジョンママは目尻を下げる。
「大きくなって!」
「大きくなんて!クラスで一番小さいんですよ」「可愛いわ〜」
モジモジするミエ。
ミエは以前からスンジョンママのことが好きだったそうだ。
しかしそんなスンジョンママにも、悩みがあるようで・・。
<うちの子がやったんじゃないのです>
「あの子は絶対そんなことしないの。なのに、
そう言ってため息を吐くスンジョンママに、ミエママは同意し首を縦に振る。
「そうよね、小さい頃から優しい子だったもの。礼儀も正しくて」
「それでうちのダンナとあちらのご主人が訴訟レベルの取っ組み合いになっ
「ええー?」
「小さい頃から体が大きかったら度々周りと揉めてね・・」
ママ同士の会話に花が咲く中、ミエはふと気がついた。
引越し荷物を運ぶ業者の人たちの中に混じって、一人傷だらけの顔の少年がいるのを。
それに気がついた彼の母親は、その背中に向かって呼びかける。
ペコッ
キャップを目深に被ったまま、少年は軽く頭を下げて行ってしまった。
「やだ、あの子ったら」
顔中傷だらけの、素っ気ない態度の息子。
彼の母親は心配そうな眼差しで息子を見つめていた。
「へ・・?」と思わずミエはそう言った。
脳裏に浮かぶ昔の記憶と、スンジョンママの言葉はあまりにも駆け離れていたからである。
<ミエは努力した>
場面は再び五年前の夏に飛ぶ。
「なにしてんの?!」
夏休みに田舎の村に滞在したファン・ミエ、10才。
大人たちから仲良くしなさいと言われたので、ミエは頑張ったのである。
「おじいちゃんがご飯食べろって!」
「どこ行くの?あたしも一緒に行く!」
そう言って、彼の後を追った時だった。
大きなサンバイザーを目深に被った少年が、初めて声を出したのは。
「なれなれしくすんじゃねぇ」
清々しいほどに拒絶され、ミエは涙目だ。
彼の母親が必死に慰めてくれたのを覚えている。
ひぃん・・ 「あの子恥ずかしがり屋なのよ」
・・ということもあって、
ミエは五年越しの「仲良くしてやってね」に何も返せないのだった。
<それじゃまぁ、ハイ>
何も言わない、いや言えないミエ。
そんな彼女の前で、彼の母親もまた、何も言わない。ただ返答を待っている。
「あ・・ハイ!」 「ミエちゃんありがとう!^^」
心の底では納得してなくても、選択肢が与えられていないこともある。
この場面では、ミエはYesという他なかった。
<注目の的は>
「さようなら」 「それじゃあね〜」
ペコリと頭を下げながらも、ミエはあるものから目が離せなかった。
それが見えなくなるまで、ミエはずっとそれを視線で追っていたのだった。
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第二話②でした。
韓国では、お引っ越しの際お餅を配ることがあるそうです。
その名も「イサトック(引っ越し餅)」。写真ティラミスかと思った人
上の茶色いのは小豆らしいのですが、日本の小豆餅と違って甘くないのだそう。
日本は引っ越しといえば蕎麦ですが、今は日用品とかのが多いのかな・・
こんなとこにも文化の違いが見られて面白いですね
日本語版が出る際は是非とも韓国のまま連載して欲しいものです・・
次回第二話③に続きます!
ティラミスかと思った人…はーい✋