ファン・ミエはトイレ、モ・ジンソプは電話で場を離れたので、
キム・チョルとハン・ソンイはお店の外に出て二人を待った。
少し沈黙が落ちたが、やがてソンイがチョルに話し掛ける。
「学校はどう?」「え?」「去年より面白い?」
「ん・・」
「まぁ・・ちょっとは・・」
「やっぱり?そんな感じに見えるよ。良かった!」
ソンイはそう言ってにっこり笑った。
去年同じクラスだった時よりもずっと、チョルが楽しそうに見えたから。
「ミエって面白いでしょう?
だってミエといる時、すごく楽しそうだもん」
去年、誰も怖がって声を掛けてこなかった中で、
唯一チョルを気にしていたのはソンイだった。
だからこそチョルの変化は、ソンイにはお見通しなのだ。
他の人から同じことを言われたら突っぱねただろうが、
チョルはソンイには素直な表情を見せた。
自分自身にすら否定したその気持ちが、ふっと口元に現れる・・・。
その時だった。
車が行き交う道路の向こうが、やたら気になった。
パーカーを頭まで被った一人の男が歩いている。
心が、瞬時に凍てつく。
見覚えのあるその横顔が、チョルの視線に引っ張られるようにこちらを向く——・・・。
一方、こちらはinトイレのミエ。
手を洗いながら、ミエはふと鏡で自分の顔を見てみた。
四人でしている街巡りが楽しすぎて、心がふわふわしている。
中でも一番嬉しかったのは、チョルとプリクラを撮ったこと・・。
ワクワクが止まらなくて、つい鏡に向かってウインクしてみる。
Wピースもしちゃったりして・・。
そこで気づいた。
先ほどチョルから手のひらに書いてもらった番号が、滲んで消えかかっていることを。
「あっ!なんだこれっ!」
「しまったぁぁー!」
そう叫んでみるも、時すでに遅し。
滲んだ文字を睨みながら、ミエはトイレを後にした。
<どこかで聞いたことある声だけど・・>
トイレから出たところで、モ・ジンソプが電話しているところに出くわした。
その会話内容が少し聞こえてくる。
「いや、ヨンミン先輩〜俺あんま興味ないんすよ」
その通り、ジンソプの声のみならず、静かなこの場所では通話先の相手の声までもが聞こえてしまうのである。
「だって先輩もそうだし、俺だって学校にバレたらどーすんすか」
「なんだよその反応?クソ溜まりには用は無ぇってか?」
「大魔王のダチがイ・インウクのこと舐めてっから、今回手ぇ貸して欲しいって頼まれたんだよ」
第九十話④でした。
ほのぼのWデートから、少しきな臭くなってまいりました・・
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