真っ青な夏空に、燦々と太陽が照り付けていた。
立ち上るような草の匂いの中、ミンミンと蝉が鳴いていた。
[1993年夏 00県の田舎にある村]
それは今から五年前のことだった。
ミエと、その少年が出会ったのは。
「この子がファン・ミエだよ。さ、挨拶しなさい」
10歳になるミエ。父親から言われた通りに少年に挨拶をする。
「こんにちは!仲良くしようね!」
「・・・・」
・・・・。
しかし少年は一言も喋らない。
周りで鳴く蝉の声が、一段と大きく聞こえるようだった。
挨拶のために上げた手が、所在なさげにしゅんと萎む。
目をパチクリとするミエの前にいる少年が、時を越えて再び彼女の前に現れた。
<知ってる子>
五年前、夏休みに出会ったあの少年。
随分と大きくなっているが、雰囲気はどこか変わらないように思えた。
合ってるよね?
お母さんが言ってたあの子・・
ぼんやりとモヤのかかったその記憶を呼び覚ますには、いささか時間が経ち過ぎていた。
けれど気まずさと恥ずかしさに胸を痛めた感情を忘れ去るには、まだ経過が浅いようで・・。
「あ・・」
ミエは再び、五年前の夏を思い出していた。
<あの子があの子で>
[ファンミエ 10歳]
[海に行くはずの計画が頓挫し、嗚咽していた1993年の夏]
ミエの悲しみは、それはそれは深かった。
なだめる父親を前に、10才のミエは足をバタバタさせながら大声で泣いた。
「海行きたいよー!海行くって言ったじゃん!!」
「渓谷はめちゃめちゃ涼しいぞ〜?なぁミエ?渓谷でも浮き輪使えるぞ!
「いつ好きって言った?!」
しかしそこは所詮10才。
なんだかんだと言いくるめられたミエは、両親と共に田舎の村へと向かったのだった。
「もう泣かないの」「来年は絶対に海行こうな」「ぁかった・・」
[実際は宿泊費を浮かすためだということも全て分かっていた10才]
所詮10才、されど10才。
ミエは全て分かって納得した上で、その田舎の村へと向かったのだ。
そして冒頭のシーンへと戻る。
「あ・・」
[そして海の代わりに来ることになった、”
[同い年の男の子]
その少年は、同い年と思えないくらい大きかった。
少年のお父さんも、ミエの父親より20cm近く大きい。
すごーい かっこいいなぁ・・ 「二人で仲良く遊びなさい」
そう言われたミエは、冒頭のように笑顔で挨拶した。
[だから仲良くなろうとしたけど]
気まずくなったあの気持ちのことを、何となく心は覚えていた。
しかしあの少年が今の姿に繋がるかと言われると、驚きの方が大きかった。
わっかんないなぁ、と思いながらミエは、先ほどの出来事を友人に話そうとした。
すると・・
「ねぇユンヒ、私さっき廊下で・・」
「おいっ!!!大魔王が転校して来たぞ!!」
同じクラスの男子が、ものすごいインパクトと共に教室に入って来た。
騒然とする教室。
しかしミエは、あることに衝撃を受けていた。
大魔王?
「ファン・ミエは衝撃を受けた」
とあるが、それは少年が大魔王呼ばわりされたことに衝撃を受けていたのではなかった。
周りではクラスメイトが、「高句麗中の友達がアイツのことマジで恐ろしいヤツだって言ってた」と噂話を広めているが、
大魔王の衝撃を喰らったミエの耳には入ってこなかった。
担任が入って来て、クラスは徐々に静かになる。
ユンヒはミエに先ほどの話の続きをこっそりと促した。
「てかさっき何の話しようとしてたん?」「ん?なんでもないよ!」「何さ〜」
さわさわとした騒めきは、いまだそこら中に残響をこだまさせる。
[学校は一日中大騒ぎだった]
[大魔王が人を殴って転校して来たという噂が、
変わらない日常に走る突然の衝撃は、その後ミエの運命をも動かすことになるのだがー・・。
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第二話①でした。
高句麗と百済・・遥か昔に日本史でやったな〜〜となんでもないとこで懐かしくなってました
あだ名大魔王・・1999年間近のこの年だと、身近な存在だったんでしょうね、大魔王・・。
そして第二話の表紙?はこちら↓
昔スンキさんのインスタにアップされてましたね^^
カラーで見れて感激です!
第二話②に続きます
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