ミエはプリプリと怒りながら、ジョン・ソラを探した。
もう我慢できない!いつ私が駄々こねた?!
自分は物騒なことベラベラ言うくせに・・
そして非常階段を降りようとしたその時、あの三人組がいるのに気がついた。
ミエは気付かれないようにそっと彼らを覗いた。
会話の端々が漏れ聞こえる。
「じゃあ明日・・」「誕生日・・」「プレゼントは・・」
「好きなもの・・」「あーいらねぇって」
「ファン・ミエは・・・」
え?
チョルの口から自分の名前が出たのを聞いて、少し身を乗り出すミエ。
ホンギュは面白くなさそうに会話を遮った。
「あの豆の話はやめろって!つーか今日サッカーすんの?しねーの?」
「するよ」
フン
チラッ・・
「・・・」
ミエはホンギュのことをじっと見ていた。
「誕生日祝い」に対して、気まずそうにするホンギュ。
まさか・・・・
そして次の瞬間、ホンギュがパッと上を向いた!
ドビュンッ!!
ミエは光の速さで逃げながら、
心の中にあった一つの仮定が現実になろうとしていることを知る。
[何だ・・本当に?!]
ミエのことを嫌っているホンギュだから、ミエの誕生祝いにあんな反応だったに違いない。
ミエはそんな根拠を胸に抱きながら、ドキドキと共に教室へと帰った。
<確信でOK?!>
授業が始まってからも、ミエは終始上の空であった。
視線の先はホワイトボードではなく、チョルの背中。
ミエは期待を隠し切れない顔をしながら、チョルの背中から目が離せない。
ので、視線が伝わったのだろうか。
不意にチョルが振り返った。
バッ
気まずそうに前を向くチョル。
その一挙一動が、ミエの仮定を確実にしていく。
ミエは顔がニヤけるのを止められなかった。
心臓が、ドキドキと音を立てる。
実はその顔をホンギュに見られていた。
ミエは気づいていないけれど。
チョルは気まずそうに頭を抱えている。
その仕草も、ミエに対する照れだと思えば全ての辻褄が合う。
ミエが期待するその気持ちが、背中越しに伝わってくるようだった。
チョルは気付かれぬように、ミエの方を窺う。
ミエはもう確信していた。
キム・チョルが、Sクラスのみんなが、自分の誕生日のお祝いをしてくれると。
「先生ー授業終わってまーす」
誰かのその声で、チョルはいつの間にか授業が終わっていたことに気づいた。
「あらもう?それじゃ宿題忘れないでね〜」「さようなら〜」
講師が出ていくと同時に、チョルはガタンと立ち上がった。
ミエは若干まとまらない考えの中で、出していたノートや教科書をカバンにしまう。
マジで?マジで?
どう考えてもそうだよね?てかヨンヒなんで来なかったんだろ
「ファン・ミエ」
背後から呼びかけられたミエは、ゆっくりと振り返る。
そこには何かを決意しているようなキム・チョルがいた。
来るとは思っていたけれど、これはいささか想定外。
みんなが見ているこの場所で、呼び止められるとは思っていなかったのだ。
ま・・まさか今?!
「な・・何?」と聞いたミエに、チョルは口ごもる。
「あ・・あの・・」
「何の用?ずっと無視してたのに」「え?あ・・それは・・」
そう言ってそっぽを向くミエに、チョルはタジタジだった。
そしてようやく覚悟を決めたのか、本題を口に出す。
「ファン・ミエ、お前明日・・」
「!」
ついに来た。
明日、6月15日はファン・ミエの誕生日だ。
ミエは止まらないドキドキで胸を震わせながら、言葉の続きを待つ。
しかし「明日、」の続きをチョルが口に出そうとした瞬間・・・・
「おいチョル!先生が呼んでっぞ!」
その流れを見事にぶった斬ったのは、確信犯のベ・ホンギュだった。
ミエは苛立ちを隠せない表情で、ホンギュのことをじとっと睨む・・・。
第八十五話④でした。
スンキさんは話の持って行き方が本当にうまいですよね・・今更ながら・・
ミエの気持ちもチョルの気持ちもホンギュの気持ちも全部共感しちゃうし。
この誕生日騒動、まだまだ続きますので、お楽しみに〜!
そして今回八十五話の扉絵はこちら。
モジンソプが持ってるの何ーー?!
第八十六話①に続きます