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自主防衛の「コスト」は「新たな需要創出」でもある

2019年06月07日 | 政治・経済
防衛大学校の武田康裕、武藤功両教授らの著書「コストを試算! 日米同盟解体」(平成24年刊、毎日新聞社)によれば、日本が自主防衛を決断した場合のコストは、22兆2661億~23兆7661億円が見込まれるという(平成28年5月24日付「産経新聞」)。

<内訳は、米軍撤退で駐留経費負担4374億円が不要となるが、新たに空母や戦闘機、情報収集衛星など、米軍に依存してきた装備を4兆2069億円で取得する必要がある。維持コストなどを除外した試算だが、消費税でいえば2%の負担増になる。

コストはハード面にとどまらない。「日米同盟が解体されるということは、日米の政治・経済の協力も損(そこ)なわれることを意味する」(武田氏)からである。

経済面では、貿易途絶 ▷株価下落 ▷国債の金利上昇 ▷エネルギーの調達コスト上昇――などの影響で、最大21兆3250億円のコスト増。一方、米軍基地撤退で取り戻せる経済効果などの「逸失利益」は1兆3284億円にとどまる。武田氏はこう強調する。

「問題は金額の多寡(たか)ではない。いくらコストを費やして自主防衛に踏み切っても、結局は日米同盟と同じ水準の安全を享受(きょうじゅ)することはできないということだ」>(同紙)

金額を見れば、自主防衛のコストは約24兆円ということになる。かりに日本国民が自主防衛を決断した場合、「コスト」ではなく「新たな需要創出」と考えることもできる。たとえば、アメリカから購入している戦闘機を国産化するとどのような可能性が日本に開けてくるか。主要な装備品は国産にしなければ軍事的な自立はあり得ない。

戦後、航空自衛隊はアメリカから戦闘機の図面を購入し、三菱重工を中心とした企業群が製造してきた。これを「ライセンス国産」と呼ぶが、すべて自前というわけではない。

ブラックボックス化された完成部品を三割程度購入しなければならず、すべての技術が開示されることもない。建前としては秘密保持だが、要はアメリカに毟(むし)られているのである。

しかもライセンス国産は完成機の購入と比較すると、価格が倍ぐらい高い。国内に戦闘機の製造施設をつくることが必要になり、その費用が上乗せされるからで、こんな歪(いびつ)な状態は解消したほうがいいのではないか、と考えるのがまともである。

日本には技術はある。米空軍のF22ステルス戦闘機のカーボン素材は宇部興産がつくっている。また、太陽光が直射しても視認可能なディスプレイの技術は横河電機が持っている。

アメリカの航空機産業は、日本の技術による最先端部品なくしては成り立たない。高度な軍用機や旅客機のコックピット内はほとんど日本製だと言っていい。航行計器を包むダッシュボードのセラミックや中に入っている液晶体は日本製であるにもかかわらず、数多ある軍民共用の高い技術力を活かして日本の国防と民生の向上を図ることを政治家も役人も考えようとしない。

こうした発想は危険か。無駄なことか。私は、そうは思わない。

---owari---
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