平成27年11月、三菱重工業の子会社である三菱航空機が開発を進めてきた国産初の小型ジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が誕生した。国産旅客機としてはYS11以来だが、YSはプロペラ機なのでMRJは初の国産ジェット旅客機になる。
当初すでに40数機の受注があるというが、「民間出動」のMRJはどんな可能性を示しているか。民間旅客機である以上、MRJの開発に日本の国家戦略が直接反映されているとはいえない(2018年8月時点で受注数は387機。ただし、度重なる納期延期で新規受注は停滞。2020年半ばに初号機納入予定)。
YS以降の日本の航空機産業の基盤はないも同然で、製造する基盤もなければ、世界への販路もなかった。世界の航空機産業を牛耳っているのはエアバスとボーイングで、現状、日本企業が参入できるのはその隙間しかない。
MRJは、国内の地方都市や日本と東南アジアを結ぶ短中距離路線での利用を見込んだ70~90席の双発小型ジェット機である。エアバスやボーイングが占める市場の隙間で、欧州や北米大陸にも進出可能だと考えた。
カナダのボンバルディア・エアロスペースやブラジルのエンブラエルなどがライバルだが、MRJは燃費性能が従来機に比べて2割ほど向上し、温室効果ガスの排出も著しく低減させた強みがある。
こうした燃費性能の高い小型旅客機は、今後20年で5000機以上の新規需要が世界で見込まれ、MRJはボンバルディアやエンブラエルを抜いてこの市場でトップに立てる可能性がある。この「民間出動」は日本の力を示す一つである。
これは軍用機においても可能である。日本はこれまで中型輸送機のC1を国産開発し、その後継機のC2も防衛省技術研究本部(防衛研)と川崎重工業(川重)によって開発され、間もなく運用開始となる。P3Cに代わる哨戒機のP1も防衛研と川重によって開発・製造され、3年前から配備が進んでいる。アメリカも日本が軍用機を自国生産するのを一部容認しているのである。
航空戦力の軍事的な見地からすると、問題はF2の後継機をどうするかという問題がある。昭和50年代に運用開始されたのがF1で、平成になり第4世代の戦闘機としてF2が製造され、当時はエンジンのライセンス生産を前提とした国産開発だったのが、結果的にF16をベースとした日米共同開発になった。
国産開発や共同開発は、ライセンス生産と違って自由に改良できるメリットがある。F2も逐次グレードアップし、高性能の戦闘機に仕上がった。この後継をどうするのか、平成30年度までの中期防衛力整備計画(第26中期防)で結論を出すことになっている。
この問題は政治が決断しなければならないが、自主防衛のためにいかに、「民間出動」を図るかという視点、発想が必要である。F2開発当時、三菱重工の社長、会長を務めた飯田庸太郎氏(故人)は、「防衛産業で日本のお役に立てなければ、三菱が存在する意味はない。儲かるからやる、儲からないからやらないではなく、持って生まれた宿命と思っている」と語ったという。
まさに戦後は、国ではなく、三菱やIHI、川崎重工、戦前の中島飛行機を引き継ぐ富士重工など民間企業が防衛産業を守ってきた。その裾野には町工場のような零細企業もある。
---owari---
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