日下公人著書「新しい日本人が日本と世界を変える」より、“そして「新しい日本」の時代が始まる”を転載します。
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日本にはさまざまな力がある。
だが、それをいかに束(たば)ねて活用していくかという国家戦略に欠けている。かりに日本は現状維持でよいと考えたとしても、何もしなければ現状維持はできない。
先に中国との軍事的な力関係について述べたが、これも、いまは日本のほうが優勢でも、日本が何もしないまま打ち過ぎたら10年後には中国が上回っているかもしれない。
トランプ大統領は選挙期間中から痛烈な日本批判を展開してきた。日米安保における日本のタダ乗り論は目新しくないが、「同盟の解体」と日韓の核武装容認にも言及した。
これらの発言は選挙を戦うために計算された煽情的(せんじょうてき)なものと見るべきだが、実際に日米同盟が解体され、米軍が日本から撤退すれば、日本が取り得る選択肢は自主防衛ということになる。
「自分の国は自分で守る」という気構えは当然で、トランプ・ショックは、危機ではなく「戦後体制」のぬるま湯に浸かってきた日本人を覚醒させる好機ともいえる。
日米同盟の基本構造は、自衛隊を「盾(守)」、米軍を「矛(攻)」とする役割分担である。自衛隊は「専守防衛」の方針のもと、戦前日本が保有した空母機動部隊のような海軍力、弾道ミサイル、巡航ミサイルといった装備は持たない。
敵国が発射しようとするミサイル基地を攻撃することも独力でできず、北朝鮮の弾道ミサイルを迎撃することもできない。発射の第一報を探知する衛星情報はアメリカに依存している。自衛隊の戦闘機も護衛艦もミサイルシステムも、アメリカの支援がなければ稼働できない。
日本はアメリカの暗号、敵味方識別装置やGPS(全地球測位システム)を使っている。アメリカがGPSのモードを変えただけで自衛隊は活動できない。
アメリカは武器を供与(きょうよ)している国に対し、「いつでも支援を止めるぞ」と圧力をかけることができるわけで、現に日本はずっとその環境下に置かれている。日米安保条約が一方で日本に対する瓶のフタとされている現実である。
日本の防衛は、これでよいのか。
この問いに日本人自身が覚悟をもって答えを出すときが来ている。
---owari---
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