魅惑の日本映画

日本がこれまでに生み出した数々の名作、傑作、(珍作?)の映画を紹介していきます。

穴(大映)★★★★★

2008年03月30日 | Weblog

【概要】
ルポライターの北長子は、自ら1ヵ月の失踪騒動を起こしそのルポを書き、彼女を探す懸賞を募集するという企画を週刊誌に売り込む。ところが、彼女は預金横領事件に巻き込まれ事態は意外な展開に。
「DVD NAVIGATOR」データベースより抜粋

【感想】

最初に映画会社について個人的で勝手な意見で語るんで、興味ない人は流してください。
後半に「穴」のレビューがあります。

50年代から60年代の主な映画会社「東宝」「大映」「日活」「東映」「新東宝」「松竹」には、それぞれ作品のジャンルは違えど、会社ごとに作品のカラー(雰囲気?)があります。

東宝は特撮、時代劇、現代劇と割合幅広い路線で活躍し、都会的な空気がどの作品にも流れているような感じがします。

新東宝は50年代末期からエログロへと路線変更し、猟奇的なタイトルが印象的な陰湿な雰囲気を出していました。

日活はポルノへ移行するまでは、石原裕次郎、赤木圭一郎、小林旭などの今で言うアイドル(ちょっと語弊がありますね、この表現には)的な、スターという名にふさわしいまず俳優ありき的な、そんな感じの作品が目立ちます。吉永小百合の「あゝひめゆりの塔」や「キューポラのある街」は社会派の傑作でしたけどね。

松竹は「東京物語」や「二十四の瞳」など、日本人の心に訴えかけるような作品を多く製作しているイメージがあります。「男はつらいよ」などもそういった流れに含まれるのかな。また、私が日本映画の最高傑作と信じて疑わない「砂の器」も松竹の作品です。

東映は中村錦之助や東千代之介、大川橋蔵などが活躍する時代劇が有名ですね。初期には「一心太助」などのコメディがよく作られましたが、後年東宝の黒澤明や小林正樹などの影響でリアリズムへと移行していきました。私が東映の時代劇で好きなのは、前半コメディ、後半胸に迫る感動作の「美男の顔役」(大川橋蔵)やアニメーションを駆使し、後半は舞台の要素を取り入れた一種のファンタジーとも言うべき「恋や恋なすな恋」(大川橋蔵)などですかね。ちなみにこの両作品ともVHSにしかなっていないのです。早くDVDになってほしいものです。

さて、本題。
大映は市川雷蔵の時代劇、ガメラなどの特撮、そしてこのブログでもかつて紹介したことのある「大江山酒天童子」や「大魔神」「妖怪シリーズ」の特撮と時代劇の融合など、意欲的なことをやっています。現代劇も量産しており、東宝のように都会的な雰囲気を出そうとしているのですが、どうも東宝と比べると一歩劣るようです。個人的な見解ですよこれは。

そんな印象を一気にぶっとばしてくれたのがこの「穴」です。
前置きがかなり長くなりましたね。失礼しました。
この映画を見て京マチ子の印象が変りました。彼女は「羅生門」や「地獄門」などでシリアスな役柄が印象的だったので、そういう役しかやらない人なのかと勘違いしていました。
兎に角100分全てが彼女の魅力炸裂といった感じに、コミカルな役をのりに乗って演じているのが気持ちいいです。
うまいなあと思ったのが夫に逃げられた田舎娘に変装したときで、
一番好きなのは「一番安心して眠れるところがあるの」と言った後、薬中毒の患者になって牢屋に入れられているシーンです。
そこまでやるか!といいたくなるくらいの名演でした。

船越英二が裏切り者だということは案外早くに私は分かってしまいましたが、もともと六井、千木、そして白州は共謀者なわけで、北長子に不審な行動をとってもおかしくないのです。徐々に千木が怪しいと思わせる演出は見事です。

船越英二はもう悪役と聞いても驚きませんが、山村聡が銀行の金を横領する計画を話しているシーンを見てちょっとびっくりしました。彼は東宝で「日本のいちばん長い日」や「世界大戦争」コアなところで「ノストラダムスの大予言」などの印象が強いですからね。
それと、「となりのトトロ」や「大誘拐」で知られる北林谷栄も、彼女らしい役柄で登場します。

1957年、黒白映画と聞いてちょっと見るのをためらってる人に是非見て欲しい映画です。
公開から50年以上たった今見ても面白さや演出のセンスは、量産されているサスペンスドラマや事件ものの映画よりこっちのほうが断然上回っています。テンポも速い。
もうびっくりです。

監督 市川崑 
脚本 九里子亭 
音楽 芥川也寸志 

北長子 京マチ子 
千木恋介 船越英二 
白州桂吉 山村聡 
猿丸警部 菅原謙二 
鳥飼秋太 石井竜一 
赤羽スガ 北林谷栄 
六井ふき子 川上康子 
甘粕左平 潮万太郎 
大屋編集長 見明凡太郎 
六井外次 春本富士夫 
中村武子 日高澄子 
青年作家 石原慎太郎 
運転手  浜村純 

1957年度大映作品(モノクロ・スタンダード)




履歴です↓

血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆

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「赤ひげ」の舞台「小石川植物園」

2008年03月28日 | Weblog

正式には「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」という、とんでもなく長い名前なのですが、「赤ひげ」の舞台になった小石川植物園のあったところです。
桜も八部咲きといった感じで、保育園の子供達や家族連れでにぎわっていました。
桜は勿論きれいでしたよ。
でも7割の目的は「赤ひげ」で登場する井戸を見ることだったのでした。

桜です。

あの井戸です。
小説や映画を見た人なら分かるかな・・・

矢印の説明書きはこちらです
「旧養生所の井戸
小石川養生所は貧困者のための施設所で、町医者小川笙船の意見により、享保7(1722)年にこの場所につくられ、明治維新の時に廃止されるまで続きました。この養生所の井戸は水質が良く、水量も豊富で、大正12(1923)年の関東大震災の時には避難者の飲料水としておおいに役立ちました。」



温室のわきにある噴水です。時代を感じさせますね。





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血と砂
ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆

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血と砂★★★★

2008年03月28日 | Weblog

【概要】
昭和20年夏の北支戦線で、歴戦の勇者・小杉曹長(三船敏郎)は佐久間大尉(仲代達矢)の命により、八路軍の猛攻によって全滅したヤキバ砦の奪還に向かった。従えるは、何と軍楽隊の少年兵たち。今まで楽器しか持ったことのない彼らを叱咤激励しながら、小杉は砦の奪取に成功するが…。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
舞台や慰安婦の描写など、ほぼ「独立愚連隊」と共通しているのですが、こちらは「独立愚連隊」と比べるとさほど知られていなく、映画の題名から誤解されがちだと思うので今回取り上げました。

結末は全員玉砕になってしまう戦争の虚しさを訴えた映画ですが、本作はその面より、楽器しか持ったことのない学生たちと曹長(三船)との交流を描いた青春映画ととらえたほうがいいかもしれません。

三船敏郎はやはり貫禄があり、この主人公にぴったりでしたが、今回この映画で一番気になったのが葬儀屋の伊藤雄之助 。
どうしようもないへたれ役を見事に演じきっていました。彼は本当に凄いと思います。憎たらしい役まで色々な役をやりますが、ここでも彼の良さが発揮されていたと思います。戦争をやったことの無い一般人らしさがよく出ていました。おかしい!

この映画は前半コミカルに、そして後半は怒涛の展開なわけですが、そう言うのって弱いんですよね。また、楽器隊の演奏が流れるラストは涙を禁じえませんでした。楽器を通して徐々に心を開いてきた捕虜の中国人の陳が日本兵にうれしそうに終戦を知らせる紙を持ってきたものの、日本兵に撃ち殺されてしまう皮肉な結末。

「その日、8月15日」

この映画は「独立愚連隊」や「日本のいちばん長い日」や「沖縄決戦」にも通ずる要素をもった戦争映画の傑作だと思います。

監督 岡本喜八
脚本 佐治乾、岡本喜八
原作 伊藤桂一
音楽 佐藤勝    

小杉曹長 三船敏郎
葬儀 伊藤雄之助
出刃 佐藤允
営倉 天本英世
お春(金春芳) 団令子
佐久間大尉 仲代達矢
コンダクター 大沢健三郎
大太鼓 根津克己
小太鼓 木下陽夫
トランペット 樋浦勉
クラリネット 仲村紘一
アルトサックス 阿知波信介
テナーサックス 宮尾博
トロンボーン 伊東昭夫
フルート 西川明
チューバ 関富士夫
スーザホーン 木村豊幸
ホルン 金井和博
ピッコロ 日吉としやす
陳 木浪茂

1965年東宝作品(モノクロ・シネスコ)

五日ぶりの更新ですね。仕事が忙しくてなかなか。
本日、いや、もう日をまたいでしまったので昨日になりますが、桜満開の小石川植物園に行ってきました。そう、黒澤明監督(山本周五郎原作)の「赤ひげ」の舞台となった小石川養生所がかつて存在した場所です。桜も楽しみましたが、しっかりとあの井戸も見てきました。写真など、明日アップします。



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ハウス(HOUSE)
相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)

悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆

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ハウス(HOUSE)★★★★

2008年03月21日 | Weblog

【概要】
数々のコマーシャルを手がけた大林宣彦が、初めて劇場用映画を監督したデビュー作。オシャレ(池上季美子)、ファンタ(大場久美子)、ガリ(松原愛)、クンフー(神保美喜)、マック(佐藤美恵子)、スウィート(宮子昌代)、メロディー(田中エリ子)の7人の美少女が、夏休みに田舎に住むオシャレのおばちゃま(南田洋子)の屋敷を訪れるが、ひとり、またひとりと少女たちが失踪して行く…。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
大林宣彦監督の作品を見るきっかけになった映画。なんだ、このシュールな映像は。ホラーなの?コメディーなの?と不思議な気分ではじめは見ていました。その後、何だか知らないけどこの映画に引き付けられ、何度も見てしまう私ってでしょうか!?

内容は女子高生達を家が食べてしまうというとんでもなく荒唐無稽で内容と呼べるものが全く無いのですが、登場人物達の妙なテンションや、以外に良く出来た小林亜星の音楽、時折見せる少女達の青春映画っぽい場面など、見ていて楽しいのは事実。

大うそつきの東京駅や、「泥だらけの純情」「男はつらいよ」など、パロディも満載。「金田一耕助の冒険」ではそれが失敗してしまいましだが、ここではさり気なく挿入しているのでいやな気分になりません。

ピアノ、掛け時計などがムシャムシャと人を食べるというのはかなり斬新で、グロテスクな描写を合成でポップに表現しているのも今までに無い演出です。

シュールな演出の連続・・・
この映画のノリについて行けるか、そこでこの映画の好き嫌いが分かれるのかな。うちの家族に見せたら、意外と好評だったです。
うちの家族と私がなのか、でも、これ好きな人って結構いるんじゃないかな?
同じくシュールな「金田一耕助の冒険」は私には耐えられませんでしたが、これは大丈夫でした。と言うか大好きです。

この話を見た後に同じ監督の尾道三部作をみるとびっくりしますよね。
それと、当時CM撮影や自主制作でしか監督を務めたことがない大林監督が、本作品の監督をするにあたって、東宝のスタッフで反対する人が多くいたそうです。その反対の中、大林監督を支持したのが岡本喜八だったっていうんだから凄い。
尾道三部作やその他の大林宣彦作品も徐々に載せていく予定です。


監督 大林宣彦
原案 大林千茱萸(監督の実娘)
脚本 桂千穂
音楽 小林亜星、ミッキー吉野、ゴダイゴ

オシャレ 池上季実子
ファンタ 大場久美子
ガリ   松原愛
クンフー 神保美喜
マック  佐藤美恵子
スウィート宮子昌代
メロディー田中エリ子
江馬涼子 鰐淵晴子
おばあちゃん 南田洋子

1977年度東宝作品(カラー・スタンダードサイズ)



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相棒(最終回SP『黙示禄』…番外編)
悪い奴ほどよく眠る
無法松の一生
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛

戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号

電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎

用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日

☆はじめに☆

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相棒(最終回SP『黙示録』)★★★★★・・・番外編

2008年03月19日 | Weblog

【概要】
あらすじは公式サイトへ。
以下の感想は一部ネタバレなんで、犯人が誰だか知りたくない人はは読まないほうがいいですよ。

【感想】
劇場公開へ向けて例外的に一度限り、テレビドラマ「相棒」の感想を書きたいと思います。これを見始めたのはSeason2からで、その時はこんなに世間から取り沙汰されるような番組ではなかったように記憶しているのですが。今は雲泥の差ですね。やはり、本当に面白い作品はいつかは日の目を見る日が来るんですね。

今回の『黙示録』ですが、大変満足しています。面白かった。タイムリーな裁判制度の矛盾、冤罪の問題を相棒ならではの鋭い切り口で描ききった、最終回に相応しいエピソードでした。真犯人が実は被害者遺族だったと言う点も、皮肉な結果でしたね。
普通のサスペンスなら、宮川一朗太とかを犯人にするんでしょうが(途中まで疑ってましたよ)そこは相棒。一番残酷な結末を用意します。でも、そういう現実もあるかもしれないから怖いですよね。

物語の根底は日本の死刑制度への問題点ですが、それに沿ってこの話で重要な点が三雲判事と杉下右京のくだりです。第一話「複眼の法廷」で、試験的に行われた裁判員の一人を死なせてしまう結果を作った三雲判事の責任をとらせた右京さんですが、彼もまた違法な捜査をしている。結果として三雲判事は裁判官を辞職させられてしまう。それは三雲判事の望んだ結果で、亀山さんの言うように、三雲判事を救ったんですが…
最後に小野田官房室長が亀山薫に言った台詞

「杉下の正義は時に暴走するよ。」

正義を追求する杉下右京もまた、どこかで正義をないがしろにしてしまうかもしれない恐ろしさを予知しています。これが相棒の、脚本家櫻井武晴さんの凄いところ。

最後、薫が右京にいつものように「ラーメン食いませんか。」と言うシーンでこの物語は終わります。まだまだいろいろな問題点を含みながらの最終回。
普通は一件落着、ハッピーエンドで終わるドラマが多い中、こんなに余韻の残るラストは今までに無かったなあ。
軍事衛星が物語のキーでSF仕立ての相棒Season5の最終回「サザンカの咲く頃」も、裁判制度を真正面から描いた「黙示録」も、外国ドラマのクリフハンガーとも違うラストを見せてくれました。

私も相棒関連の個人ブログはよく見るんですが、伊丹刑事やその他の小ネタ大好きです。今回はさすがに控えめでしたね。でもそれがかえって良かったと思います。

映画楽しみですね。絶対見に行きますよ!
それと、次回からは邦画専門に戻ります。

それから一つだけ。
最近、相棒の視聴者って、相棒のハードルをどんどん上げてきているような気がしますね。,
私なんかは、回を増すごとに成熟されてどんどん面白くなっている気がするんですが。音楽も相当クオリティ高いです。最終回のラストの選曲ですが、気に入らない人もいるみたいですね。私は張り詰めた緊張感が伝わってきていい選曲だと思いました。
みなさん、それぞれに相棒の世界観を作り出している証拠なのかな?これだけ長く続いて、話数もあるドラマってそうないですからね。映画が終わった後は、いつものように10月からではなく、もっとゆっくりいい作品を作って欲しいと思います。

今回のSeason6も、これほど内容の濃いドラマって他にありませんよ。

テレビ朝日・東映制作

監督 和泉聖治
脚本 櫻井武晴
音楽 池 頼広

杉下右京 水谷豊
亀山薫  寺脇康文
亀山美和子 鈴木砂羽
宮部たまき 高樹沙耶
伊丹憲一 川原和久
三浦信輔 大谷亮介
芹沢慶二 山中崇史
米沢守  六角精児
角田六郎 山西惇
小野田公顕 岸辺一徳
三雲判事 石橋凌
錦文忠  林隆三
茂手木  ベンガル
ゆり江  かとうかず子


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無法松の一生
悪い奴ほどよく眠る
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
☆はじめに☆

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無法松の一生(東宝)★★★★☆

2008年03月18日 | Weblog

【概要】
小倉の人力車夫・松五郎(三船敏郎)は喧嘩っぱやいが人情に厚い名物男。そんな彼が陸軍大尉の家族と知り合いになり、大尉の戦死後、未亡人よし子(高峰秀子)とその子どもに愛情を持って奉仕し続けていくが…。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
東宝時代劇の巨匠稲垣浩監督の1943年度作品をカラー・シネスコサイズ・ノーカット版でリメイクした作品。
題名は聞いていたものの、なかなか見る機会がありませんでした。
そもそも稲垣監督の作品はどうも私好みではないようで、避けていたのかもしれません。「大坂城物語」や「大龍巻」や「風林火山」など、壮大なテーマの作品を見る限り、どうも消化不良の感じがして、つまらなくは無いんだけど、面白くも無い残念な作品という印象だったんでしょう。
ところがこの「無法松の一生」は凄く良かったです。

この映画の質を高めている要素のひとつとして團伊玖磨の音楽があります。
なんとも言えない物悲しい旋律。特撮では「白夫人の妖恋」や「世界大戦争」や「キスカ」などを作曲していて、いずれも作品にぴったりな完成度の高い曲でした。

三船敏郎は松五郎役で、一見するとそれまでの役柄と大差ない豪快な役どころのように思えますが、死んだ吉岡小太郎大尉(芥川比呂志)に対する敬意と良子(高峰秀子)への愛情とで苦悩する繊細な一面を見せ、今までに無い姿を演じていました。上手いんだよなやっぱり。

この映画では重要なことが一つあります。それは、松五郎が吉岡専属(?)の車引きになるきっかけを作った吉岡小太郎大尉の人を見抜く力です。
結局残酷な結果になったことは事実ですが、それは松五郎の人間性を理解したからでしょう。
さすがに良子夫人に愛情を持つことは予想できなかったのですが・・・
当人は全く悪意が無かったにせよ、表面的に見れば良子夫人が松五郎を利用したという結果になってしまうと言う、美しさとは裏腹の残酷さがこの映画にはあります。(ラストシーンは皮肉的でもありますね。)

★好きな場面★

駄菓子屋の駄菓子やメンコがちらばった映像に現れるタイトルクレジット。懐かしい画と共に美しい音楽が流れて、明らかにその他の稲垣作品とは趣を異にしています。

時が徐々に移り変わるシーン。いくつかあるのですが、敏雄(吉岡のボンボン)の勉強机がだんだん変容していく過程、色とりどりの照明に照らされた人力車の車が回る場面などが印象的でした。

松五郎が力一杯太鼓を叩く場面。迫力のある画面ですが、それがかえってなんだか哀しくなってきますね。

雪の中、松五郎が今までの楽しくて幸せだった良子夫人とボンボンとの時間を回想しながら絶命する場面。これまた團伊玖磨の音楽が切なすぎるんだ。


監督 稲垣浩
脚色 伊丹万作、稲垣浩
原作 「富島松五郎伝」 岩下俊作
音楽 團伊玖磨 富島松五郎 

富島松五郎 三船敏郎
吉岡小太郎 芥川比呂志
吉岡良子  高峰秀子
吉岡敏雄  笠原健司
少年敏雄  松本薫
結城重蔵  笠智衆
おとら    飯田蝶子
俥夫熊吉  田中春男
ぼんさん   大村千吉
高校の先生 土屋嘉男
居酒屋の亭主  左卜全
薬屋     有島一郎

1958年度東宝作品ベネチア映画祭グランプリ(カラー・シネスコ)


テレビ朝日・東映系の刑事ドラマ「相棒season6」も遂に明日は最終回。
題名は「黙示録」。社会派サスペンスの傑作乱れうちの櫻井武晴さんの脚本です。彼の詳細は未だよくわからないのですが、兎に角凄い脚本家です。


「相棒-劇場版-」

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悪い奴ほどよく眠る
蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
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悪い奴ほどよく眠る★★★★☆

2008年03月14日 | Weblog
【概要】
土地開発公団副総裁・岩淵(森雅之)の娘・佳子(香川京子)と秘書の西(三船敏郎)との結婚披露宴の席で、公団課長補佐が警察に連行され、そこから公団と建設会社との不正が明るみになろうとするが、その証人たちは次々と命を断たれてしまう。そんな折り、西はあるひとつの計画を実行に移そうとしていた…。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
黒澤明が本格的に描いた現代劇社会派サスペンスの傑作。
現代でこそ、この手の物語は刑事ドラマでも語りつくされた感があって、ざっとストーリーを見ただけではさほど珍しくないと思ってしまう人もいると思います。
思いますが、この映画は150分という長尺でありながら見る者をどんどん引き込む要素を持っています。
冒頭の正体不明の差出人からのケーキのただならない雰囲気から、主人公が次々と復讐を実行していく件も、その主人公の正体がばれてしまう件もテンポよく描いていると思います。
収賄事件の関係人物が、最初は悪人面で画面に登場していたのが、脅されてだんだん弱っていくさまも、おかしさと恐怖が奇妙に同居していて面白いです。
決して後味がいい映画ではありませんが、黒澤明作品やその他の東宝映画の作品の俳優人を見慣れているせいか、そんなに重たい気分にはならなかったな。
田中邦衛や児玉清もチョイ役で出ています。
三船敏郎は今回復讐に燃える若き(?)秘書役ですが、体格がいいので眼鏡で誤魔化そうとしている感があります。ちょっと違和感がありますが、そこは演技でカバー。
でも香川京子と夫婦役なんて、政略結婚を真っ先に疑ってしまします。
三橋達也はけっこう複雑で難しい役所です。
森雅之の悪役ぶりも素晴らしいですが、志村喬の悪~い、少しエッチな台詞に笑ってしまったりなんかして。
副総裁の最後の台詞も皮肉たっぷりで、映画の最後に再び「悪い奴ほどよく眠る」のタイトルが登場するのもいい演出です。
画面には登場しない悪がまだまだいるのです。

監督 黒澤明
脚本 小国英雄、久坂栄二郎、菊島隆三、橋本忍、黒澤明
音楽 佐藤勝

西幸一 三船敏郎
板倉  加藤武
岩淵  森雅之
岩淵辰夫 三橋達也
岩淵佳子 香川京子
守山  志村喬
白井  西村晃
和田  藤原釜足
野中検事 笠智衆
刑事  藤田進
事務官 土屋嘉男
殺し屋 田中邦衛

1960年度東宝作品・黒澤プロ第一回作品(モノクロ・シネスコ)


本日「バンテージポイント」見てきました!面白かった~!
大統領暗殺事件の、8人の目撃者をそれぞれ違う視点で追ったスリリングなアクション映画でした。90分という短尺に抑えたのが成功のもとだと思います。余計な場面が一切無く、楽しめました。
これって、基本コンセプトは「羅生門」ですね。ひとつの事柄に対して、人それぞれ違った見方をするという構成は何か引き付けられるものがあるんでしょうね。

さて、話題を大分そらして、テレビ朝日・東映系の刑事ドラマ「相棒season6」も遂に来週は最終回。
相棒は世界観が幅広くて奥深い。量産されている刑事ドラマとは明らかに違う質の良さが魅力です。映画も絶対見に行きますよ~。

「相棒-劇場版-」

履歴です↓

蜘蛛巣城
江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
☆はじめに☆

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蜘蛛巣城★★★★☆

2008年03月09日 | Weblog

【概要】
時は戦国時代、武将・鷲津武時(三船敏郎)は、妻・浅茅(山田五十鈴)にそそのかされて主君を殺害し、その城主となるが、朝茅は次は親友の三木義明(千秋実)を殺害するよう強要する…。
黒澤明監督が敬愛するシェークスピアの『マクベス』を戦国時代に翻案して描いた、幻想と恐怖に彩られた人間の業を露にする戦国絵巻。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
とにかく、この映画は映像的表現に圧倒されます。冒頭、男達の歌(何の歌なのか、何て言ってるかは、予備知識がまったくなかったのでわかりませんでした。すぐに調べて、わかり次第打ち直します!)が入るのですがもうその時点で異様な雰囲気を出していて超怖い。
その後没落した蜘蛛巣城跡が映し出され、丘の上を霧が包み込む。画面が引いて霧がふわっと上がったかと思うと、そこには立派な蜘蛛巣城が登場する。
特撮でない、単純な技法でしょうが、その工夫で見る者を驚かせ、つかみはOKという感じですね。
三船敏郎と千秋実が森の中でさまよい、妖婆(怨霊でしょうかね、これは)と出会うシーンは、作り物感が出ているのですが、この映画は舞台形式で物語が進んでいくので違和感がない。そしてこの婆さん怖い…

三船敏郎は「酔いどれ天使」を最後に、悪人をやることはあまり無くなって来ましたが、ここではあえて山田五十鈴に翻弄される、どうしようもなく駄目で、見得は人一倍にある武将を見事に演じています。だんだん狂気と化すあたりは凄みがあります。
山田五十鈴、あんた怖すぎるよ。「どん底」でも毒婦を演じて怖かったけど、余計な動きが一切無く、何も言わないで能面づらだともっと怖い。或いは、怨霊達よりも怖い存在ですよね。人間のほうが幽霊より恐ろしいって言いますもんね。

特撮をあまり使わない黒澤明監督ですが、森が一斉に動き出すシーンはミニチュアです。セットに木々の模型を作って、動かしたそうです。でも黒白画面と、細かな作業の結果、全くミニチュアだと思いませんでした。よく出来てるなあ。

三船敏郎の最期はこの映画の一番の見所。
古典的映画の名シーンって、言われるわりには実際見たら以外にあっさりしていて、「ああ、これがその名シーンなのか。」と思う程度が多かったんですが(わかります?この表現)この「蜘蛛巣城」の、矢が三船めがけて一斉に飛んでくるシーンは驚いた。
展開などはわかっているんですが、本物と言うだけあって演技も緊迫している為に迫力のある場面でした。
味方だと思っていた兵士達が全員敵で、しかも誰も何も言わず、し~んとしてる。これも怖い。

これで映画の最後にまた謎の男達の歌声が入る。
黒澤明の力を改めて感じさせる名作でした。
これ、ホラーですね。

監督 黒澤明
脚本 小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明
音楽 佐藤勝

鷲津武時  三船敏郎
鷲津浅茅  山田五十鈴
三木義明  千秋実
三木義照  久保明
小田倉則保 志村喬
妖婆     浪花千栄子
都築国春  佐々木孝丸

1957年度東宝作品(モノクロ・スタンダード)

「相棒-劇場版-」のサイト

履歴です↓

江分利満氏の優雅な生活
大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
☆はじめに☆

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江分利満氏の優雅な生活★★★★

2008年03月05日 | Weblog

【概要】
昭和30年代後半、大手洋酒メーカーに勤めるサラリーマン江分利満(小林桂樹)、36歳。何をやってもおもしろくない無気力な日々が続く中、ふとしたことで彼は小説を書くことになり、戦争のこと、父のこと、妻子のことなど、平凡だが一生懸命な自分たちの人生を綴っていく。やがて小説は直木賞を受賞するのだが…。
Amazon.co.jpより抜粋

【感想】
エッセイストに専念するまでは、サントリーの社員だった山口瞳の自伝的な小説を映画化した作品。岡本喜八自身と同様、戦中派の不満、悲しみ、鬱憤などを織り交ぜつつ、全編に渡ってコミカルに仕上げた快作でした。
映像表現ももはや成熟期に達している感があり、のりに乗っています。サントリーのアンクルトリスの風体の様なキャラクターで江分利満のこれまでの人生を説明する件は今見ても斬新です。
見た事ありませんが「残菊物語」のパロディと思われる、男女の下駄のみが動く合成シーンや、ストップモーション、アニメーション、その他にも細かいところで映像的に面白いシーンがふんだんに見られます。
そういう岡本喜八の先駆的な映像表現が見られるのも本作の見所ですが、やはり戦争映画を独特の視点で手がける岡本喜八ならではの戦争への思いも見えて興味深いです。

そして魅力溢れるキャスティング。ふとしたことで直木賞を取ってしまうしがないサラリーマン役を小林桂樹が好演しています。彼以外の人物は考えられないくらいはまり役です。
東野英治郎の、憎みきれない駄目な親父もいい。
新珠三千代のしっかりしているんだけどどこか間の抜けた妻もいい。
そのほか、東宝の常連、岡本喜八監督の常連の俳優さんがたくさん登場します。

特撮映画や時代劇では見ることの出来ない昭和30年代の一般人の生活を垣間見ることが出来ます。
公開当時は興行的にいまいちだったらしいですが、紛れもない岡本喜八の代表作。今にして評価されるなんて、一歩先を歩いていたんでしょうね彼は。

監督 岡本喜八
脚本 井手俊郎
音楽 佐藤 勝

江分利満 小林桂樹
夏子 新珠三千代
明治 東野英治郎
みよ 英百合子
辺根 江原達怡
ミチ子 田村奈己
柳原 天本英世
佐久間正一 中丸忠雄
矢口純子 横山道代
ピート ジェリー伊藤
江分利の兄 平田昭彦

1963年度東宝作品(モノクロ・シネスコ)

「相棒-劇場版-」のサイトも載せておきますね。本日放送日ですから。


履歴です↓

大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
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更新できてなくて済みません(汗)

2008年03月05日 | Weblog

ここんとこ忙しくてDVD見れてないんで、感想も書けずじまいです。
まだまだ黒澤明の初期の作品とか、東宝特撮映画とかいろいろストックはあるんですが、やはり見たときに書くほうが書きやすいですからね。明日は書けると思います。

それからっ!今年の5月に「相棒-劇場版-」の公開もあるんでそっちも見ないといけませんね。これは見逃すわけにはいかない。それに向けてテレビ朝日のドラマ「相棒」の最終回の感想も超例外的に書こうと思います。興味のない方済みませんね。昔の邦画のレビューは続行していきます。




大江山酒天童子
日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
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大江山酒天童子★★★★

2008年03月01日 | Weblog


【概要】
平安末期、源頼光(市川雷蔵)は関白寵愛の渚の前(山本富士子)を護られたが、彼女には物の怪が憑いていた。そこで頼光は忠誠な部下四天王とともに、首領である大江山酒天童子(長谷川一夫)を討つ決心をした。
DVDパッケージより抜粋

【感想】
私はAmazon.co.jpをよく利用していて、そこにもコメントを書かせてもらっているんですが、このDVDのページを見たときに、たった一人しかコメントを寄せていないのにびっくりしました。思わずこれはいかんと思って書き込みをしてしまった次第です。

市川雷蔵、長谷川一夫ら大映の二大スターに加え、勝新太郎、本郷功次郎、山本富士子という豪華な顔ぶれの本作品。大映時代劇を代表する作品と思っていたら、意外に知られていないようですね。
アマゾンの方にも書きましたが、鬼を退治する物語の周辺に、妖怪変化が主人公達を襲うというプロットは、話の筋こそ違えども、どこか「陰陽師」を彷彿とさせます。今はCGが発達して、特殊技術を生かしたファンタジー時代劇ともいうべき作品が出てきましたが、この「大江山酒天童子」はそれらの時代劇の先駆的な位置づけにあると思います。

しかし現代のファンタジー時代劇と決定的に一線を引かせる要因は、歌舞伎などの様式をふんだんに取り入れた格調の高さでしょう。
私はこの話の元になる大江山の鬼退治の伝説に関しては詳しくないですが、いくつか種類があるようです。

興味深かったのは、東映の時代劇で中村錦之助と東千代介が出演している「羅生門の妖気」とこの「大江山」に全く同じ台詞が登場することです。

四天王渡辺綱が美女に変身した鬼に遭遇するシーンで綱は「はて、あでやかな。」と言います。全く同じ台詞と言うことは、どこかに根拠となる文献が存在するのでしょう。
蛇足ですが、「羅生門の妖気」と「大江山酒天童子」を比べると、スケールの大きさ、テンポなどでは「大江山」の方に軍配があがります。

特撮と時代劇という組み合わせは京都に撮影所を持っていた大映がやはり良い物を残しています。この経験がのちに、「大魔神」、「妖怪シリーズ」へと引き継がれていくのでしょう。

監督 田中徳三
脚本 八尋不二
原作 川口松太郎 「大江山酒店童子記」
音楽 斎藤一郎

酒天童子 長谷川一夫
源頼光 市川雷蔵
渡辺綱 勝新太郎
坂田金時 本郷功次郎
大和守一正 中村鴈治郎
菊王丸 中村豊
袴垂保輔 田崎潤
土蜘蛛甚内 沢村宗之助
藤原道長 小沢栄太郎
こつま 中村玉緒
茨木童子 左幸子
渚の前 山本富士子

1960年度大映作品(カラー・シネスコ)

更新なかなか出来なくて遂に三月に入ってしまいましたね。ま、ゆっくりとやっていきたいと思います。

日本沈没

妖星ゴラス
斬る
待ち伏せ
殺人狂時代
太平洋奇跡の作戦キスカ
赤毛
戦国野郎

ブルークリスマス
大盗賊(東宝)
座頭市と用心棒
ガス人間第一号
電送人間
美女と液体人間
赤ひげ
世界大戦争
椿三十郎
用心棒
モスラ(1961年度版)
新幹線大爆破
隠し砦の三悪人
日本のいちばん長い日
☆はじめに☆

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