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絆回廊(新宿鮫 X ):大沢 在昌

2010-03-20 06:08:51 | 書評
絆回廊(新宿鮫 X )は、糸井重里の『ほぼ日』で連載が始まっている。毎週金曜日更新で、今週で第五回目だが、何回まで続くのだろう。

連載開始前の大沢、糸井対談は、面白いのだが、大沢在昌はひょっとして限界を感じているか、新宿鮫をぼちぼち終わりにしようと思っている印象を受けた。

ここまでの新宿鮫9作は、多分全部読んでいると思う。単行本だったり、ノベルスだったり、新刊だったり、人に貸したりで、全部揃えて持っていない。(特に確認はしていない)1作目は、売れる理由は分かった様な気がしたが、登場人物が上手く書けているのに、密造拳銃の描写が拙な過ぎたイメージがある。(これはアメリカにいて銃に対する体感温度(?)が違うからだと思っている)

初めて読んだ時は既に大ブレークしていたが、新宿鮫を読むキッカケは、シカゴで大沢在昌の講演会(90年代後半?)で話を聞いた事だ。この講演会、今考えると豪華であった。大沢在昌と伊集院静の講演会であった。どちらかと言うと伊集院静目当てで行った覚えがある。なにせ、松田聖子やユーミンのコンサート演出をし、故夏目雅子の夫であったし、篠ひろ子の旦那である。(実は、未だに著作を読んだ事がない。全く関係無いが大学の先輩でもある。)

だが、講演は、大沢在昌の話の方が面白くて、これが読むキッカケになった。完全にネタになっている永久初版作家の話もその時聞いた。うだつの上がらない時代が続いて、乾坤一擲の思いで書いた『氷の森』もやっぱり売れず、ほうけた状態で新宿鮫を書いたら、当たったとの事であった。律儀な私は、本人が永久初版作家の汚名を雪ぐため全力を投入して書き上げた『氷の森』もキチンと読んだ。(日本出張の時にわざわざ探して購入)力作ではあるが、これはこれで売れないという事が良く分かる作品であった。(新装版で復活したりしている。勝てば官軍、新装版?)

作家の事務所の事も、このとき聞いたと思う。所属の宮部みゆきや京極夏彦も、その後結構読んだのも因縁(怨念ではない)を感じる。

新宿鮫シリーズであるが、登場人物も分かっているし、レベルは高いし、日本の知らない情報というか雰囲気も入手出来るし、いろんな意味で安心して読める。だからといって、特に思い入れの有る作品がある訳ではないし、読み返す気も余り無い。

で、今回のウェブ連載であるが、ファン層を増やす意図もあるそうだ。『ほぼ日』の中心読者の30代女性を狙っているとの事だ。(私の印象と違って、新宿鮫フランチャイズはまだまだ続くのか?)今後の30代女性を引き付ける展開になるのかわからないが、出だしとしてはハードボイルドの香りプンプンなので、順調な(?)滑り出しと言えるだろう。

連載されているので読み続けると思うのだが、ウェブ連載の意義が見つけられない。やっぱり本の方が良い。1-2時間、自由に幸せな読書をさせてくれる新宿鮫の方が、何倍も良い。まあ、最終結論は連載終了まで保留しておこう。


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